【Bリーグカードの歴史】
2016年に設立された男子バスケットボールのプロリーグ『Bリーグ』。旗揚げ開幕戦は試合の戦況に応じて床の模様が変わるLEDコートが世間の大きな話題になり、そこからしばらくは「Bリーグブーム」とでも呼ばれるような国内のバスケットボールシーンにとって活気にあふれた時期が続いた。
そのブームのまっただ中に発売されたBリーグ初のトレーディングカード『FAST BREAK 1st Half』(2017年1月発売)は世間の話題性もあり売れに売れた。カードショップでは予約分だけで完売。発売日から数日でどこを探しても商品が置いていない状況となり、未開封ボックスはプレミアがつくまでに至った。Bリーグブームのお陰、と言えばそれはそうなのだが、そのことを除いても初年度のBリーグカードには売れる要素が沢山詰まっていたのだ。
まず特筆すべきは「1ボックスにつき直筆サインが5~6枚」も入ったこと。1ボックス20パック入りと考えると相当な大盤振る舞いだが、これも設立初年度のリーグだからこそ出来た芸当だろう。
次に「入っているレギュラーカードの多くがルーキーカードになる」ことも大きかった。Bリーグ設立以前はNBLとbjリーグという2つのリーグが存在していたが、公的にカードを発行していたのはNBLだけ。bjリーグは各チームで独自にカードを作ってはいたが全国流通するようなリーグの公式カードは発売されなかったので、このBリーグカードで初めてカード化されるチーム、選手も多かった。
記念すべき初年度の発行を圧倒的な売れ行きで飾ったBリーグカード。しかし、サインカードはよく出るもののインサートカードが1種類しかなく開封が単調になってしまう問題点もあった。そこで2年目のBリーグカードはインサートカードとサインカードに少量枚数限定のパラレル版を設け、開封の楽しさをより追求できる仕様となった、
【2018-19シーズン FAST Break 1st Half 】
初年度の成功体験に満足せず、2年目以降も更に進化していく道を選んだBリーグカード。そして3年目となる今季もその攻めの姿勢は健在のようだ。
レギュラーカードは例年通りシンプルな作り。カード裏面もリーグ創設から3年目だけあってBリーグにおけるスタッツが複数年分載るようになっており、カードとしての完成度も年々上がってきている。
収録選手はB1各チームから4人、B2は各チームから1人ずつ選出。『1st Half』は前半という意味なので、今回ラインナップされなかった選手はこの後に発売されるシーズン後期版の『2nd Half』に入ることになるのだろう。
注目選手はNBAのレイカーズ等に所属していたライアン・ケリー(SR渋谷)。Bリーグカードには初めての収録となるので、Bリーグにおいてはこれが彼のルーキーカードとなる。
インサートは「The Contenders」「Black Label」「Franchise」の3種類。これらは3種類とも全18枚からなるカードセットとなっており、B1の各チーム(全18チーム)から代表となる選手をそれぞれ1人ずつ選出している。
「The Contenders」はまるでアルミの板に模様を描いたような鮮やかな出来栄え。一番よく出るインサートになるが、チームカラーによって背面の箔の色を変えているなど手が込んでいる。
次に「Black Label」は黒枠のカードの内側に王家の紋様のような細工をほどこした高級感あふれるインサート。各100枚限定でカードの裏面に限定数を証明する刻印が入っている。
最後の「Franchise」はカード全面がキラキラと光る美しいカード。各50枚限定とBリーグカードのインサート史上最高のレア度を誇る。
直筆サインカードは今季も2種類存在。ノーマル版は昨年好評を博した縦型のサインカードを踏襲したデザインになっており、カード表面はしっとりとしたマット加工が施されている。パラレル版となる横型カードは各25枚限定。
ここで注目したいのは、長年日本プレイし数々の個人賞や優勝を経験しつつもサインカードだけはずっと発行されることがなかったジェフ・ギブス(栃木)。あとは発行枚数が他の選手と比べて極端に少ない並里成(琉球)あたりだろうか。
さて、ここまで今季のBリーグカードの概要を紹介してきたが、文章ばかりではどんな商品なのかイマイチ実感が湧かないのではないだろうか。というわけで、今回は実際に『2018-19シーズン FAST Break 1st Half 』のボックス(20パック入り)を開封してみたいと思う。
【開封報告】
・レギュラーカード:91枚
・The Contenders:4枚(#TC07 田渡凌、#TC08 ニック・ファジーカス、#TC10 大塚裕土、#TC12 金丸晃輔)
・Black Label:1枚(#BL05 田中大貴)
・直筆サインカード:4枚(田臥勇太、紺野ニズベット翔、柏木真介、俊野佳彦)
ネット上の開封動画やSNS等で流れてくる開封報告を見ていると、「直筆サイン4枚、シリアルナンバー入りインサート1枚」というのはこのボックスを開封した場合の平均的な結果のようだ。ボックスによってサインカードが3枚だったり、シリアルナンバー入りインサートが出てこなかったりもするようだが、それでも僅か20パックでこれだけのカードが出てくるのは驚きというほかない。
この結果だとどうしても直筆サインの田臥選手に目が行くが、元日本代表の柏木選手やニュージーランド出身でBリーグ特別指定選手の紺野選手など全体的に良い選手が出たのは嬉しいところ。特に紺野選手は今回が初カード化。このサインもいわゆる「ルーキーサイン」となるので、今後の活躍にも期待したい。
次にインサートに目を向けてみよう。ボックスによっては出ないこともあるシリアルナンバー入りインサート「Black Label」が、日本代表でも活躍している田中大貴(A東京)だったというのは大きい。そしてカードを手に取ってよく見ると、カード回りの装飾と「Black Label」という文字に使用されている金の箔押し部分が立体的に盛り上がっていて、本物の金で装飾された高級な肖像画を手に入れた気分になる。各選手100枚限定なので選手別で集めている人は入手に苦労しそうだが、その価値は十二分にある美しいカードだ。
「The Contenders」は最もよく出るインサートでその価値も見逃されがちだが、前述したように背景の箔素材はチームカラーになっている。そしてこのセットは全18枚だから9ポケットシートに入れて収集するとちょうど2枚分。全部揃えると9ポケットアルバムの見開きでこのカラフルなセットが一望出来るようになるので、ちょっと頑張って揃えてみるのもいいかも知れない。
その一方で今回出なかったカードもあった。直筆サインの横型カード、そしてインサートの「Franchise」の2種類だ。これらはボックスで開けても必ず手に入るとは限らない、「入っていたらラッキー」レベルのカード。特に「Franchise」はネット上の開封報告を見ると3、4ボックスに1枚入っているかどうかというレア度らしい。50枚という現定数の少なさから考えると、発売直後の今を逃すと今後目にすることも出来ない伝説のカードになる可能性もある。もし運よくこのカードを引き当てた人がいるなら、たとえそれが自分の収集選手でなくても大事にして欲しい。
さて長々と文章を書き連ねてきたが、それでもまだまだ書き切れないほどの魅力がこのBリーグカードには詰まっている。そして2月下旬には後期版である『FAST Break 2nd Half』もリリースされる。前期版に入らなかった選手や大学からBリーグ入りしたルーキーのカードが入ると予想されるこのブランド。発売したあかつきには、またボックスを開封してその魅力を皆様にお伝えしたい。
soma【ライター/イラストレーター】
長年カード関連の企画・出版物に記事を寄稿しているライターであると共に自身も90年代初頭から四半世紀に渡りカード収集を続けているカードコレクター