米国現地時間7月18日にエンゼルスタジアムで行われたMLBエンゼルス・アストロズ戦の来場者にエンゼルス・大谷翔平選手のバブルヘッド(首振り人形)が配布された。MLB2年目の今季は昨年に受けたトミー・ジョン手術の影響で、打者に専念している大谷。当日、配られたバブルヘッドもまた、バットをスイングする打者バージョンだった。
MLB観戦の楽しみのひとつがSGA(Stadium Give Away)と呼ばれる球場配布グッズである。キャップ、ジャージー(ユニホーム)、Tシャツなどにくわえ、とくに、バブルヘッドは人気が高い。バネが仕掛けられた首が揺れる可愛らしい姿とその表情、ポーズ、そして、ユニークなテーマで、ファンやコレクターにとっては、トレーディングカードと並ぶ収集アイテムとなっている。ネットオークションやネットのフリーマーケットでは高値で売買されるものもある。
大谷のバブルヘッドといえば、ルーキーイヤーだった昨季は投手と打者の2体が一つの台座に乗った二刀流バージョンだった。大谷の衝撃のデビューもあり、配布日はバブルヘッド目当てで、多くの観客がエンゼルスタジアムに来場。大谷の場合、市販のバブルヘッドの種類も多いが、SGAのバブルヘッドは現在でも1万8000円前後で取引されている。今年の打者バージョンは2年目ということもあり、1万2000円前後と昨年のものに比べ、やや価格を落としたが、他球団他選手の相場と比較しても高額だ。
かつて、MLBの「二刀流」は、以前はMLBとNFLでプレーする野球とアメフットの二刀流選手をさした。1986年にMLBロイヤルズでデビューしたボー・ジャクソン外野手は翌年、NFLレイダースでもプレー。SGAではないが、昨年、イベント限定でバブルヘッドが登場し、話題になった。高い身体能力で外野フェンスを無重力状態のように駆け上がるシーンは今でも映像が流れることがあるが、凡退するとバットを膝や頭で折るシーンも有名。昨年の2種類のバブルヘッドはともにバットを折っている。
ディオン・サンダースはMLBのべ5球団、NFLのべ5球団に所属し、野球のワールドシリーズとアメフットのスーパーボウルの両方に出場した唯一のプレーヤー。ヤンキースでMLBデビューしたが、当時はヤ軍傘下だった3Aバッツで、バットとアメフットのボールを抱えたSGAが配布された。
NFLからMLBへの転向もある。2016年にはブロンコスなどで活躍したティム・ティーボウが野球への転向を発表し、メッツと契約。スラッガー候補はマイナーで実績を積んでいるが、元NFLのスタープレーヤーということもあり、すでにマイナー3球団でバブルヘッドが配布される人気ぶりだ。
あえて、ほかのスポーツとの二刀流バブルヘッドを挙げるなら、レッドソックス傘下の3Aシードックスは、ムーキー・ベッツ外野手が趣味のボウリングをする姿をフィギュア化。上半身には野球のユニホームを着て、ボウリングシューズをはき、ボウリングのボールを構えている。
野球以外の職種とのコラボもある。前マリナーズのトム・ウィルヘルムセン投手はメジャー通算344試合で14勝したセットアッパー。ブルワーズにドラフト指名され入団も05年に一時、ユニホームを脱いだ際にバーテンダーとして生計を立てていた。10年にマリナーズとマイナー契約を結び、傘下の1Aアクアソックスでプレーした際には、その経歴が注目され、野球のユニホームに前掛けをしたバーテンダー姿のバブルヘッドが配布された。
「野球だけ」なら、ブレンダン・マッケイは大谷と同様の投打の二刀流。ドラフト1巡目で入団し3年目の今季、デビュー。昨年、1AストーンクラブスのSGAで大谷のバブルヘッドとそっくりの投打のバブルヘッドが登場した。打撃では目立った成績はまだ残していないが、投手では初登板初勝利をマークするなど将来有望なサウスポーとして期待は高く、レ軍でも二刀流バブルヘッドが作られるのは時間の問題だろう。
投打の二刀流ではないが、昨季、ドジャースで15試合に登板し、今季はジャイアンツに所属するパット・ベンディット投手は珍しい左右両投げ。16年にヤンキースの1Aで配布されたバブルヘッドは、首だけではなく、両腕が動く。
MLBジャイアンツの人気者、パブロ・サンドバル内野手は昨年4月、大差のついたレッズ戦で登板し、1イニングを無失点に抑えた。この試合で本塁打と盗塁を記録していたサンドバルは114年ぶり史上2人目の同一試合での「本塁打&盗塁&無失点投球」という快挙を達成。ジ軍ではそれを記念して今年5月に、サンドバルが投球するバブルヘッドを配布。偶然にも同じ月に2年連続の登板を果たした。
大谷もMLBでも外野手としてスタメン出場し本塁打を放ち盗塁も決め、リリーフで無失点に抑える「リアル二刀流」のバブルヘッドを実現して欲しいものだ。今年の日本開幕戦で現役引退したイチロー外野手もマリーンズ時代の2015年に1試合だけ、投手としてマウンドに上がったが、その時のバブルヘッドは作られなかった。バブルヘッド作成には積極的な球団とそうでない球団がある。マリーンズが積極的なチームだったら、と思うとくれぐれも残念である。
cove【ライター】
国内外のベースボールカードやコレクションアイテムを収集し続けて30年。元スポーツ紙ライター。