【史上最多4選手が参加】
少し前(7月上旬)の話になるが、NBAが主催している若手の登竜門的なリーグ『NBAサマーリーグ2019』が今年もカリフォルニア、ソルトレイクシティ、そしてラスベガスの3会場で開催された。このリーグはその年のNBAドラフトで指名されたルーキーやNBAに所属して2年目、3年目の若手選手、また海外リーグでプレイする有望選手やGリーグで頭角を現した選手らが主に参加し、NBAでプレイ出来る準備が整っているかどうかをアピールする場所となっている。
今年このNBAサマーリーグに史上最多となる4人もの日本人選手が参加した。今年のNBAドラフトでワシントン・ウィザーズに全体9位で指名された八村塁選手は勿論のこと、昨年メンフィス・グリズリーズと2Way契約を交わした渡邊雄太選手、事前のNBAチームのキャンプに参加しチャンスを掴んだ比江島慎選手(宇都宮ブレックス)に馬場雄大選手(アルバルク東京)らが加わったサマーリーグは日本でも大きく報道され、例年に比べその注目度の高さが際立っていた。
今回はこの4選手のサマーリーグでの活躍を振り返りつつ、彼らのNBAカード(国内バスケカード)が今後どうなっていくのか考察してみたい。
【八村塁】
もはや彼の活躍はここで紹介するまでもないことだが、改めて数字を見てみるとサマーリーグ3試合に出場して平均19.3得点、7リバウンドと文句なしの結果を残している。また8月12日に行われた日本代表の強化試合では、2006年の世界選手権(現在のW杯)で日本が惜敗したニュージーランド相手に1人で35得点を奪いチームを勝利に導いている。
日本人でありながらNBAドラフト1巡目9位という高順位で指名されたことは紛れもない偉業だが、現時点で彼はその期待以上の結果を残し続けていて地元ワシントンでの評価も高い。
そんな八村選手のカードは現在のところパニーニ・インスタント(ネット注文のみのオンデマンドカード)で作られたものしか存在していない。しかし、1巡目指名かつ注目度抜群の選手なので2019-20年シーズンが開幕すれば相当数のNBAカードが発行されるだろう。
今まで日本人選手のカードは日本人しか欲しがらなかったが、彼の活躍によっては世界中のコレクターとの争奪戦になるかも知れない。NBAファン・バスケファン目線で見ると嬉しいことだが、コレクター目線で見るとちょっと困った話になる。まさしく嬉しい悲鳴といったところだろうか。
【渡邊雄太】
昨年メンフィス・グリズリーズと2Way契約を交わし日本人としては2人目のNBA選手となったが、シーズン通しての成績は15試合に出場して平均2.6得点2.1リバウンド。FG%は29.4%、3P%は12.5%と実際は我々が思うよりも低い数字に留まっている。
2Way契約は最長で2年。2年目で正念場を迎えた彼にとってサマーリーグは自分の実力を示す場所で、今までよりも目に見える結果が求められた。
その結果、サマーリーグ4試合出場で平均14.8得点、7.3リバウンド、1.5アシスト。既にこのレベルは通過していることを自らのプレイで証明した。
後はNBAのレギュラーシーズンで1試合でも多く出場し活躍して、NBAの本契約勝ち取ることが重要となる。もし本契約が成立すれば昨年度(2018-19年シーズン)に発行されたルーキーカードに一斉に注目が集まるだろう。
幸い渡邊選手にはNBAカードにも日本代表カードセット『BBM AKATSUKI FIVE TRADING CARD SET 2018 RISING SUN』(以下、日本代表カードセット)にも両方カードが存在するので、ファンは好きな方を選んで手に入れることが出来る。サインカードに関しては発行数が多い分、NBAカードの方が手に入り易いかも知れない。
【比江島慎】
ここ数年、日本代表の切り札として活躍してきた比江島選手はニューオリンズ・ペリカンズのキャンプに参加したことをきっかけにNBAサマーリーグのロスター入りを果たした。2019年7月時点で28歳と年齢的には本来若手中心のサマーリーグに出るような選手ではなかったが、日本のバスケファンも「もしかしたら」の期待を込めて彼の挑戦を見守っていた。
結論から言えばサマーリーグ3試合出場で無得点、3試合で残したスタッツはスティール1本だけとNBAへの挑戦に対して厳しい現実を突きつけられた。
比江島選手はこのサマーリーグ参加以前にも2018年の夏にオーストラリアのプロリーグ・NBLのブリスベン・ブレッツに移籍したものの、そこでもあまり活躍出来ずに日本に戻ってきている。これは彼の実力がどうという話ではなく、性格的に海外のリーグで相手を押し退けてプレイすることが苦手なのではないだろうか。
彼自身、そして彼を長年応援してきたファンにとっても悔いの残るサマーリーグだったが、NBAだけがプロリーグではない。本番はこの夏のW杯、そして翌年の東京オリンピック。そこで本来の力を出し切れば「日本の比江島ここにあり」をアピール出来るだろう。
比江島選手のカードは各年代のBリーグカードと日本代表カードセットに収録されている。また彼のルーキーカードはBリーグ以前の『NBL 2014-15 オフィシャルトレーディングカード』に封入されたものになるので、気になる人は探してみて欲しい。
【馬場雄大】
かねてよりNBA挑戦の意志がありそれを公言していた馬場選手。6月にダラス・マーベリックスのミニキャンプへの参加が決まるとそこで存在感を発揮し、見事NBAサマーリーグのマーベリックスのロスター枠を勝ち取った。
出場時間は限られたがそれでも4試合出場で平均4得点、2.3リバウンドの数字を残した。ディフェンスでのハッスルプレイからすぐ速攻に参加してのスリーポイント、ドライブインからのダブルクラッチ、決まりはしなかったが積極的にダンクを狙う姿勢は日本のファンならずNBA関係者にも大きなインパクトを残した。
現在はアルバルク東京の所属だが、来シーズンはアメリカに渡りNBA入りに向けて色々な挑戦をしていくことも選択肢のうちのひとつとして考えられる。まだそういう話は表に出てきてはいないが、この夏に行われるW杯で目に見える結果を残せば海外からのオファーも複数来るのではないだろうか。おそらく馬場選手自身もそれは意識しているだろう。
馬場選手のカードは各年代のBリーグカードと日本代表カードセットに収録されている。ルーキーカードは『BBM×B.LEAGUE TRADING CARDS 2017-18 SEASON FAST BREAK 2nd Half』のレギュラーカードになるので、まだ市場に出回っているうちに手に入れておきたいところだ。
【今後の展望】
まず八村選手のカードは来シーズンのほぼ全てのNBAカードブランドにラインナップされると予想される。ルーキーカードは勿論のこと、ドラフト上位指名選手なのでサインカードやインサートカードにも入る可能性は高い。国内外から注目されている選手だけに人気のカードは高値かつ入手困難になることが予想されるが、慌てず長い目でコツコツ集めていくのが一番良いのかも知れない。
NBA2年目となる渡邊選手は引き続き来季のNBAカードにラインナップされることが期待されるが、先の文中でも書いたように彼はまだNBAの本契約を勝ち取っていない。今季いくつかのブランドにラインナップされたのは「ルーキー(カード)」扱いだったことも大きいと思うので、その枠が取り払われる来季は完全に実力で勝負していかなければいけない。W杯や起用されるNBAの試合で結果を出し本契約を勝ち取ることが出来たならば、また来季も彼のNBAカードを楽しむことが出来るだろう。
比江島選手、馬場選手に関してはBリーグカード、そして再び販売されることがあるならば日本代表カードセットへの収録がメインになると思われる。しかしW杯や来年の東京オリンピックでの活躍によっては再びNBAへの道が開ける可能性もあるので、国内カードといえども大事に持っておくことをお勧めしたい。
この記事を書いている最中の2019年8月中旬に、日本代表はアルゼンチン、ドイツ、チュニジアとの強化親善試合をこなし、いずれも接戦の好ゲームを演じた。特に国際ランキングで日本(48位)よりも格上のドイツ(22位)から勝利を奪った試合では、八村選手が31得点、渡邊選手20得点、比江島、馬場選手がそれぞれ10得点とサマーリーグ組の4人が目に見える結果を残した。
サマーリーグで活躍してもしなくても、彼らの実力は既に本物。この夏、中国で開催されるバスケW杯ではこの4人が世界を驚かせるかも知れない。
soma【ライター/イラストレーター】
長年カード関連の企画・出版物に記事を寄稿しているライターであると共に自身も90年代初頭から四半世紀に渡りカード収集を続けているカードコレクター