日本時間の2019年10月23日、NBAの2019-20年シーズンが遂に開幕した。既に全米各地で手に汗握る激戦が繰り広げられているが、日本のNBAファン的にはなんと言っても日本人初のドラフト上位指名選手となった八村塁(ウィザーズ)の活躍が気になるところだろう。しかし、今季の見どころはそれだけに留まらない。今回は2019-20年シーズンの注目選手を挙げていくと共にそれらにまつわるNBAカードの話題にも触れていこうと思う。
【八村塁の鮮烈デビュー】
「今季の見どころは八村だけではない」とは言ったものの、やはり彼をおいて(少なくとも日本のNBAファンにとっては)今季のNBAは語れない。ドラフト9位という高順位で指名されたことから大きな期待をかけられていた八村選手だが、デビュー戦でダブルダブル(14得点10リバウンド)を記録し、ホーム開幕戦では優勝候補のロケッツを相手に23得点を挙げる活躍を見せている。
まだシーズンが始まったばかりで現時点の結果だけで全てを判断することは出来ないが、この活躍を続けていけるならばオールルーキーチームへの選出は間違いないだろうし、今後NBAの中でも重要な選手として生き残っていけるに違いない。
しかしNBAファン目線では嬉しく思える一方で、カードコレクター目線では厳しい現実が待ち受けている。これだけの活躍をしているルーキーのカードの市場価値は非常に高く、シングルカードで手に入れようとするとそれなりの出費を覚悟しなければいけないだろう。なぜなら日本のNBAカードコレクターだけではなく、世界中のNBAカードコレクターが彼のカードを欲しがるからだ。
そういう意味では八村塁のルーキーカードを手に入れるには今のところ「自分で引き当てる」のが一番手っ取り早い方法かも知れない。ところが今季は八村フィーバーの影響でNBAカードのボックスでさえも(予約殺到のため)入手が難しくなっている。カードを引き当てるよりも、その前にパック・ボックス争奪戦に勝たなければならない。NBAカードコレクターにはなんとも頭の痛いシーズンになりそうだ。
【超大物ルーキー ザイオン・ウィリアムソン】
今季のNBAドラフト1位指名にしてレブロン・ジェームズ(現レイカーズ)以来の超大物ルーキーとして話題のザイオン・ウィリアムソン(ペリカンズ)。身長196cm、体重130kgと大相撲の力士のような体格を持ちながら驚異的なパワーとジャンプ力で豪快なダンクを叩き込むプレイスタイルで学生時代からその存在感は際立っていた。
プレシーズンゲームでも平均23.3得点、6.5リバウンドとエース級の数字を残しておりレギュラーシーズンでの大暴れが期待されていたが、開幕直前に右ひざ半月板を損傷。これは手術が必要な怪我で復帰までは6~8週間かかる模様。少しでも早くプレイを見たい気持ちはあるが、NBAの将来を担う逸材だけにゆっくりと治して帰ってきてほしいところだ。
彼のNBAデビューはお預けとなったが、しかしNBAカードでは既に予想以上の猛威を振るっている。今年の9月初旬、彼の初めてのサインカードが海外オークションサイトのeBayに出てきた時、一気に1000万円を越える額まで入札額が上昇した(99,900ドル)。後にイタズラ入札と判明しその額は取り消されたが、それでも最終的には40万円越えの落札価格で終了している(3,900ドル)。
このようにまだNBA(のレギュラーシーズン)で1試合もプレイしていないにも関わらず、彼のカードは多くのコレクターが是が非でも手に入れたい1枚となっている。上では「八村フィーバーの影響で」NBAカードのボックスやパックの入手が難しくなっていると書いたが、その上にこの世界的なザイオンフィーバーも影響していることもつけ加えておきたい。
余談ではあるが、ザイオン不在の新人王レースで現在先頭を走っているのがドラフト2位指名のジャ・モラント(グリズリーズ)。平均18.9得点、5.5アシストと主要2部門でルーキートップの成績を残している(11月10日現在)。それに続くのがドラフト3位指名でありデューク大学でザイオンとチームメイトだったR.J.バレット(ニックス)で、16.2得点、6.3リバウンド、3.9アシストとこちらも非凡な数字を挙げており、今季のルーキーは八村、ザイオンだけじゃないということをまざまざと見せつけている。もしかしたら数年後、「NBA屈指の当たり年」と呼ばれる世代になるのかも知れない。
【スーパースターの移籍の影響】
昨季までペリカンズに所属していたアンソニー・デービスがレイカーズへ。また昨年度の優勝チーム、ラプターズからはチームの中心選手でありNBAファイナルズMVPを獲得したカワイ・レナードがクリッパーズへと移籍。その他にも11年間サンダーのエースとして活躍したラッセル・ウエストブルックがロケッツへ、そしてウォリアーズの過去3年で2度の優勝に大きく貢献したケビン・デュラントがネッツに移籍するなど、例年になくスーパースター級の選手の異動が多いシーズンとなった。
この中でもデービスとレナードに関しては、NBAの中でも比較的マイナーなフランチャイズから大都市のロサンジェルスに移ったため人気面でかなりプラスになるのではと考えられる。今まで実力に見合った人気が得られなかった両選手だけに、注目度が上がった今季は名実共に更なる飛躍が期待出来るだろう。
この2人のドラフト年度は違うが(レナード2011年、デービス2012年)、レナードのデビュー年である2011-12年シーズンはロックアウトのためNBAカードがほとんど発行されなかったので、彼らの主だったルーキーカードは共に2012-13年シーズンのセットに封入されている。
既に彼らのルーキーカードは高い評価を受けているが、今季の活躍具合によっては更に上昇することも考えられる。「1枚くらい良いカードを持っておきたい」と思うのならば今季序盤のうちに押さえていた方が無難だろう。
【飛躍する若手選手たち】
NBAカード側から見たシーズン展望だと、どうしてもルーキーやスーパースターの話が中心になってしまうが、今季はそこに世代交代を狙う若手選手が加わる。昨季の新人王を争ったルカ・ドンチッチ(マブス)とトレイ・ヤング(ホークス)は2年目のジンクスもなんのその。十分に素晴らしい成績だった昨季を更に越える数字を叩き出している。
特にドンチッチはシーズン平均トリプルダブルを狙えるくらいの活躍を見せており(平均27.7得点、10.8リバウンド、9.1アシスト)、これはオールスターどころかシーズンMVPを獲得してもおかしくないくらいの驚異的な数字だ。この活躍を受けて彼のカードの人気は更に上昇し続けている。
現在カードショップには2019-20年シーズンのNBAカードのパックやボックスが並んでいるが、その傍らに置いてある(ある意味では売れ残りだと思われるような)昨年度のパック・ボックスも新製品と同様に売れているらしい。その理由は言わずもがな。ヤングやドンチッチのルーキーカードを引き当てるチャンスがまだそこにあるからだ。
【2人のモンスターに注目】
最後に怪物級の活躍を続ける2人の選手を紹介したい。
まずは昨季のMVP、ヤニス・アデトクンボ(バックス)。今季平均29.7得点、14.3リバウンド、6.8アシストとMVPを獲った昨年の数字を更に上回ってきており、一体この選手はどこまで成長するのかと驚かされる。
そして2人目は「王様」レブロン・ジェームズ(レイカーズ)。今季は順調に行けばコービー・ブライアント(元レイカーズ)の総得点記録33643点を塗り替える予定で、また新しいチームメイトにアンソニー・デービスを加えたお陰で自身5度目の優勝も狙える状況だ。
今季はエースの座をデービスに譲り、レブロン自身はゲームメイクを中心としたアシスト役に回っている。そのかいもあってか現在アシストカテゴリーでリーグ1位(11.0アシスト)を走っており、このままの調子を維持出来るならばアシスト王という新たな勲章が彼の経歴に加わることになりそうだ。
レブロンのカードは現在全ての年代において急激に需要が高まっており、それはかつてのマイケル・ジョーダン(元ブルズ)の水準にまで達しようとしている。彼に関してはルーキーカードやサインカード、実使用系カードといった特別なカードだけではなく、普通のレギュラーカードを含めた全てのカードを大事に保管しておいた方がいいだろう。
このように今季のNBA、そしてNBAカードの見どころは非常に多い。日本人選手を応援するのもよし、新たなスター選手の誕生に期待するもよし。また新たに発行されるNBAカードのデザインをワクワクして待つのもいいだろう。自分に合ったやり方で今季のNBAを楽しみ尽くして欲しい。
soma【ライター/イラストレーター】
長年カード関連の企画・出版物に記事を寄稿しているライターであると共に自身も90年代初頭から四半世紀に渡りカード収集を続けているカードコレクター