日本に比べ、アメリカの野球選手は見た目でも個性派が多い。ロン毛、ドレッド、モヒカンのヒアスタイル、そして、ヒゲ。もちろん、迫力あるプレーにも目を奪われるが、そのファッションで魅了するアメリカンな彼らなのである。
ボクのアメリカンのイメージの一つにアフロヘアがある。巨人にレジー・スミスというスーパースターが入団したことがある。まだ、インターネットも普及していない時代。雑誌で見るレジーはヘルメットからアフロヘアをはみ出させて豪快な本塁打をかっとばしていた。だが、「球界の紳士」球団の一員として後楽園球場に登場したレジーはサラリーマンのように整髪していてがっかりしたものだ。というわけで、アフロヘアのバブルヘッドは1978年に球場で配布されたロッド・カルー。前年のア・リーグMVPを記念したもので、クラウチングスタイルの打撃フォームもカッコいい。塗りが甘くてズラのように見えるのは残念だが…。
ステュー・カリバーン投手とスタン・カリバーン捕手は双子。名前もまぎらわしいふたりを1体のバブルヘッドにしてしまったのは、ツインズ傘下の2Aニューブリテン・ロックキャッツ(現在はロッキーズ傘下のハートフォード・ヤードゴーツ)。MLBでは素晴らしい成績は残せなかったがマイナーで指導者として長く若い選手を指導したふたり。双子だから顔も似ているが、「ハマの番長」三浦大輔ばりのリーゼントも同じだった。
ドレッドヘアは2012年にレッズで、2017年にジャイアンツで制作されたジョニー・クエト投手。昨季は1勝に終わったが、かつては20勝投手にもなるなど通算126勝。野茂英雄投手を彷彿させるトルネード投法も独特だが、何と言っても野球選手としては珍しかったドレッドで力投していた。ビフォアー&アフターみたいで別人のように見える2体だが、ドレッドだけは見事に再現している。
カルロス・マルチネス投手はドレッドもモヒカンもアフロもヘアカラーの種類もすべて、バブルヘッドになってしまった。2018年にカージナルスがミステリーボックスで来場者に1箱ずつ配布したバブルヘッドは4種類のうち、何が出るかはわからない。家族4人で球場に行ってもフルコンプできなかっただろう。ダブってしまって、頭を抱える姿も思い浮かぶ。席について、周囲のお客さんと交換したのか。罪つくりなボブルヘッドだが、カージナルスはマーセル・オズナ外野手のユニホーム4種類のミステリーバブルでも「やらかしている」。
究極の「ヘア」バブルヘッドは「リアルヘア」だろう。まるでリカちゃん人形(米国の場合はバービーちゃんか)のように、毎日、ブラシで髪の毛をとかしたくなる。2007年にエンゼルスがジャレッド・ウィーバー投手のリアルヘアを配布してから、製造に手間がかかるのか、夜みたら髪の毛が伸びていて怖かったのか、2018年にメッツがシーズンシートの顧客だけに配布したノア・シンダーガーデン投手まで登場しなかった。シンダーガーデンといえば、メッツではジェイコ・デグロム投手とロン毛ダブルエースとして活躍。デグロムは17年オフに本人いわく「球速を上げるため」短髪に。バブルヘッドは短髪のものしかない。
「リアルヘア」では、ブラディミール・ゲレーロ外野手の殿堂入りを記念してエンゼルスとレンジャースがそれぞれ、球場配布。縮れたリアルヘアがヘルメットから出ているまさにリアルなバブルヘッドになった。通算2590安打のゲレーロは息子のジュニアが昨季、ブルージェイズでデビュー。プロスペクトとして期待されるジュニアはその容姿でも人気があり、今季、バブルヘッドの配布が決定。どんなバブルになるのか、楽しみだ。
ブルージェイズには今季、若いイケメン選手が多くそろっているが、ゲレーロジュニアより先にバブルデビューしたのが、ルルデス・グリエル・ジュニア外野手。兄のユリエスとともに横浜DeNAに所属した過去もあるが、アストロズでレギュラーになった兄とともそのヘアスタイルはファンの注目の的。手にもつパイナップルにそっくりなヘアスタイルをリアルヘアで再現した。
昨年のシーズン中に配布されたバブルヘッドではロン毛の投手が多かった気がする。インディアンスのマイク・クリベンジャー、ブルワーズのジョシュ・ヘイダー、そして、ジャイアンツのフランク・ロドリゲス。ヘイダーはマイナーで作られたバブルもロン毛だった。いずれも、特徴的なのが、ロン毛だけでなく、おしゃれなタトゥーも再現されていること。クリベンジャーはグラブとともにひまわり、ロドリゲスはキャットウーマンがキレイに書き込まれている(デカールで貼られている)。ちなみに、ロドリゲスは個人的に過去最重量のロン毛だと思う。
このはかに、思わぬ形で髪の毛がクローズアップされることもある。ナショナルズのブライス・ハーパー外野手(現フィリーズ)、インディアンスのホセ・ラミレス内野手、ブレーブスのダンスビー・スワンソン内野手は走塁中にヘルメットが脱げてしまったシーンがバブルヘッドに。ボクはこれらを「激走バブル」と勝手に命名して集めている。
最後が、ドジャースの名物ファン、ブルー・ホークさんのバブルヘッド。ありえないモヒカンはドジャーブルーに染められ、LAの文字が。ドジャースタジアムに毎試合、現れるホークさん。どうして、ホークさんのバブルヘッドが存在するのか、詳細は不明で、ドジャースが配布したものではないことだけは分かっている。eBayに出品されているだけでなく、Amazonでも販売されているのがさらに謎を呼ぶ。ただし、野球選手ではこのモヒカンは無理なので、まあ、いいか、と納得している自分が怖い。次回はヒゲの「おしゃれ番長たち」を紹介する。
cove【ライター】
国内外のベースボールカードやコレクションアイテムを収集し続けて30年。元スポーツ紙ライター。