新型コロナの影響で開幕が延期されているNPB。交流戦の中止が決まり、今後の日程については遅くとも5月上旬までに発表される、という。野球ファンはもちろん、ガッカリだが、プレーする選手たちの胸の内も複雑だろう。その中で話題のひとつになっているのが、今季中にフリーエージェント(FA)権を取得する予定だった選手の動向だ。
一軍登録日数が145日を満たせば1シーズンとカウントされ、国内FA権は8シーズン、海外FA権は9年がFA権を取得する条件になる。レギュラーシーズンの試合数が減ることは確実だが、今年の特殊な状況が、一軍登録日数にどう反映されるのか。通常なら、145日=約5か月間のシーズンがなければ、予定だったFA権取得が来年に先送りになってしまう。トリプル3を3度、達成している山田哲人内野手(東京ヤクルト)がその代表で、残留か、国内他球団へのFA移籍もウワサされている。
山田のカードの話題は別の機会に触れるとして、今回は順調に今季と来季に145日ずつ、一軍で登録されれば、海外FA権を取得する鈴木誠也外野手(広島)のカードの話をしたい。メジャー志向の強い鈴木は来年オフにMLB挑戦を表明するのでは、と一部では報じられている。さらに、海外FAの場合、カープには移籍金などの恩恵がないこと、鈴木に球団への恩返しの意志が強いこと、などから両者の思惑が一致して、今年オフにポスティングの手続きを取るのでは、と言われてきた。
もちろん、カープの先輩でもある菊池涼介内野手のようにポスティングを申し込んでも獲得を希望する球団がなければ、残留になる可能性もある。だが、昨年11月のプレミア12で侍ジャパンの4番を務めた鈴木へのMLB各球団の評価は高く、ポスティングになれば交渉権の獲得に手を上げるチームがある、とされる。
鈴木は2013年にドラフト2位で二松学舎大付高から広島に入団。ルーキーイヤーから一軍昇格を果たし、着実に成長してきた。トレカもその成長に合わせ、人気と評価価格を上げ、4年目に流行語にもなった「神ってる」活躍で2016年にブレーク。直筆サインカードはBBM、エポックともに2013年のルーキーイヤーのものが9万円前後で取引され、19年のBBM広島チームパックの9枚限定のジャージナンバー(1/9)が大手ネットオークション「ヤフオク」では18万円で落札された。多くのサインカードが発行されているが、4万円から10万円で取引されており、その底値が高いのが特徴だ。
今年は、発売されたばかりのBBM「ファーストバージョン」の「CROSS FOIL SIGNING」が「ヤフオク」で、箔サインながら2万9000円で落札され、人気の高さを証明した。もし、ポスティングでMLB移籍が実現したら、カープではラストシーズンになるかも、という思いも加味されているのかもしれない。日本人プレーヤーがメジャー球団に移籍した場合、そのタイミングにもよるが、それまで日本国内で発行されたカードで人気が高まるのはRCとラストシーズンのものだ。話は早すぎるが、ドジャース、ヤンキースの7年間のMLB生活で79勝をあげ、広島に復帰した黒田博樹投手は米国のサインカードも日米のファン、コレクターからの人気が高かったが、復帰後の2015、16年の国内カードがさらに高騰したケースもある。
そこで、国内のファン、コレクターが疑問に考えていることがある。今年3月に発売されたBBM「広島東洋カープヒストリー1950-2020」には多くのOBと現役選手のサインカードが封入された好企画で、鈴木の直筆サインカードも5枚限定で封入された。その貴重なサインカードが発売されてから現在までネットオークションをはじめ、どこにも姿を見せない。
チームセットということもあり、熱心なカープファンが引き当てて自分のコレクションにしたため、オークションに出品しないのか。ラストシーズンになるかもしれないため、オークションに出品する機会を待っているのか。まだ、在庫のボックスの中に残っているのか。この5枚限定のジャージナンバー(1/5)なら10万円超えは間違いない、と予想されている。このカードを引いた、といううれしい知らせも聞きたい。鈴木本人の今後とともに、このカードの行方は気になるところだ。
cove【ライター】
国内外のベースボールカードやコレクションアイテムを収集し続けて30年。元スポーツ紙ライター。