Marvel Comicsのトレーディングカードの始まりは1966年の「Marvel Super Heroes」。パックには5枚のカードと1枚のガムが付属された今では想像つかないスタイルです。当時のカードはメンコのような段ボール紙に近い素材で、1980年代に差し掛かるまではこのスタイルが主流でした。
転換期は1990年代。Spider-Man、X-Menを中心にハイグレードなカードも生まれタイトル数も激増します。アーティスト(イラストレーター)がカードに直に描くスケッチカードもこの頃に誕生したと推測されます。全てが1点モノゆえエンターテイメントカードの花形的存在となっており、Marvelの生みの親「スタンリー」のスケッチカードも実在しています。
2000年に入ると実写の作品も増えていきます。(ドラマ作品を中心に1970年代からもありましたが、)代表作としては、Marvel Cinematic Universの先駆けX-Men MovieがTopps社から発売となり、実写版の作品とあってヒュー・ジャックマン(ウルバリン役)やパトリック・スチュワート(プロフェッサーX役)などキャストの直筆サイン入りカードや衣装のピースが含まれたコスチュームカードが登場します。
その後X-Menは2003年にX2、2006年にはメーカーをRittenhouse社に移しThe Last Stand、2009年にOrigins Wolverineが発売されます。
同じくサム・ライミ版でヒットしたSpider-Manも2002年にTopps社より発売。2004年にはUpper Deck社よりSpider-Man2、2007年にはRittenhouse社よりSpider-Man3とメーカーが変わりながらも発売が続きました。中でもSpider-Man3は直筆サインカードが多数封入されたこともあり、プレミア化し入手困難な人気作となりました。トビー・マグワイア(ピーター・パーカー役)やウィレム・デフォー(ノーマン・オズボーン役)も直筆サインカードとして収録されたこともそのさらなる理由となりました。
さらにSpider-Manシリーズは2012年にAmazing Spider-Manもアンドリュー・ガーフィールド(ピーター・パーカー役)の直筆サインカードを含めたカードセット(コンプリート版)を発売しました。
さて、2008年のIron-Man公開でスタートした今回の本題となるMarvel Cinematic Universe(MCU)。それに該当する全ての作品がUpper Deck社を中心にトレーディングカード化されています。
まずクローズアップしたいのが、2008年のIron Man。Spider-Man3に引き続きRittenhouse社が製作。Incredible Hulkと共にRittenhouse社が手掛けた数少ないMCU作品であり、この最初のIron Manは今も尚、唯一実現させている超貴重なモノを2つ残しています。
1つ目が「ロバート・ダウニーJr.(トニー・スターク役)の直筆サインカード」です。Iron Manシリーズ、Avengersシリーズと数多く彼はカードに登場するものの直筆サインはここが最初で最後となっています。人気とその希少価値から年々高騰化しており今では30万円を超える程の価値があるとみられています。
そして2つ目は「アーマーのパーツ(かけら)のプロップカード」です。マーク1とマーク3、アイアンモンガーの3種が劇中で使用されたアーマーの一部をはめ込んだカードが作られており、こちらも今はバラ売りでも見かけることがないクラスです。
そんな伝説的なカードを残したRittenhouse Iron Manですが、Iron Man2以降のMCU作品はカードメーカーの大手Upper Deck社からのリリースとなります。ロバート・ダウニーJr.に続き、気になるのはクリス・エヴァンス(キャプテンアメリカ役)やクリス・ヘムズワース(ソー役)でしょう。
まずクリス・エヴァンスは、Captain America First Avenger、Avengers Assemble、Captain America The Winter Soldier、Avengers Age of Ultronと4作に登場するも直筆サインカードは実現しませんでした。The Winter Soldier発売前にサンプル画像でサインカードが公開になるも封入されず、Age of Ultronでは初めからリストアップされなかったことから、当時は実現不可のイメージが強く付いてしまいました。しかしながら5回目の登場となるCaptain America Civil Warでついに彼の直筆サインカードが実現し、その価値は10万円を超えるものとなっていました。その後は今日までの全ての登場作品で直筆サインカードが封入されています。
そしてクリス・ヘムズワースはジェレミー・レナー(ホークアイ役)と共にメインで登場する全ての作品で直筆サインカードが封入されており、コレクターたちに安心感を与えております。
こうなると気になるのはオリジナル6であるマーク・ラファロ(ブルース・バナー役)スカーレット・ヨハンソン(ブラックウィドウ役)ですが、残念ながら直筆サインカードの実現には至っていません。Marvel作品に限らずこの2人は直筆サインカード(Cut Signature除く)がなくMarvel以外の作品を含めてもオリジナル6を揃えることが現在では不可となります。ちなみにクリス・ヘムズワースはStar Trek、クリス・エヴァンスはNFLのDonruss、ジェレミー・レナーはPop Century(ハリウッドスターを集めたブランド)などにも直筆サインカードが収録されています。
その他の主なMCUメンバーでは、クラーク・グレッグ(フィル・コールソン役)、ドン・チードル(ローディー役)、トム・ヒドルストン(ロキ役)、コビー・スマルダース(マリア・ヒル役)、セバスチャン・スタン(バッキー・バーンズ役)、クリス・プラット(スターロード役)、ベネディクト・カンバーバッチ(ドクターストレンジ役)、エリザベス・オルセン(スカーレットウィッチ役)、トム・ホランド(ピーター・パーカー役)、ジョシュ・ブローリン(サノス役)などが直筆サインカードになっています。
スポーツ選手に比べハリウッドスターの方々のオフィシャルなサイン入りアイテムはとても入手困難です。トレーディングカードだからこそ手にするチャンスが生まれていると思われる部分も大きいでしょう。同じ意味合いとしてはコスチュームカードは更にトレーディングカードだからこそ幅広く実現できているアイテムです。東京コミコンなどのイベントで衣装が丸々展示されていたりしますが、カードでは多くの衣装のピース(一部)を手にすることができてしまいます。
コスチュームカードはMCU以前の2000年のX-Men Movieから収録されておりサインカード同様に歴史が重ねられています。MCUでは先に紹介しました2008年のIron Manのアーマーパーツが最もインパクトあるカードでしたが、それに匹敵するかもしれないカードが2018年のBlack Pantherで登場しました。それは規格外と言わんばかりに実物の代わりに交換券を商品に封入するというものでした。交換されるカードは手のひらには収まらない大判サイズで、ブラックパンサーのネックレスの歯や指の爪を丸々一本収めたものでした。当方も実物をまだこの目にしたことのない興奮せずにはいられないカードです。
コスチュームカードの魅力としては直筆サインよりも多くのメインキャストがカード化できている点です。スカーレット・ヨハンソン(ブラックウィドウ役)やマーク・ラファロ(ブルース・バナー役)、グウィネス・パルドロー(ペッパー・ボッツ役)、ナタリー・ポートマン(ジェーン・フォスター役)、サミュエル・L・ジャクソン(ニック・フューリー役)などが代表的なところでしょう。中でもブラックウィドウは衣装カードも特別要素が強く高額化することが多く、発行枚数も少なめであるように感じます。
直筆サインよりも入手は難しくないであろうコスチュームカードですが、2018年のAvengers Infinity War以降収録されない商品が続いており、代わりに宝石をはめ込んだカードが目立つようになってきています。衣装カードが珍しいと呼ばれ希少価値がさらに高まる日がくるかもしれません。
最新のMCUトレーディングカードは2020年4月発売のUpper Deck Avengers Endgame & Captain Marvelです。2タイトルの合作ですが、メインはEndgameとなり、日本人には嬉しい真田広之氏(アキヒコ役)の直筆サインカードもラインナップされ日本人初のMCU作品の直筆サイン入りとなりました。尚、ドラマ部門も含めると2018年のThe Deffendersnにてユタカ・タケウチ氏(ムラカミ役)も日本人として直筆サインが収録されております。早くも人気商品となっているAvengers Endgameですが、デザインやハイクオリティーな仕様でMCUファンのみならず幅広いカードコレクターからも支持を集めているように感じています。2019年にはMarvel Studiosの10周年を記念しトレーディングカードでも「Upper Deck Marvel Studios The First Ten Years」が発売となりましたが、映画タイトルの単作としてカード化されるケースが基本となります。Avengers Endgameより先にSpider-Man Far From Homeもすでに発売されており、今後の新たなMCUトレーディングカードがどう続いていくものか気になりつつも楽しみであります。
足立卓朗【MINT新宿店 店長】
NBAをこよなく愛し、このトレカ業界に足を踏み入れ店長にもなったが、ある時マーベルの血清を注入されたかのように
マーベル映画に目覚め、今では様々な映画、ドラマを含むエンタメカードの伝道師にもなっている。