DC ComicsのトレーディングカードはMarvel Comicsに比べるとアイテム数が少ないものの歴史は古いと言えます。始まりは1940年の「Gum Inc. Superman」と80年も前となります。全72種類のうち49番からの24枚はショートプリントになっていると言われています。カードのサイズが現代よりも縦の長さが少し短い形状となっていました。
1966年には大手カードメーカーのTopps社が「Batman」を筆頭にDC Comicsトレーディングカード界に登場し、長きに渡り作品をリリースしました。この年のTopps社は活発で5タイトルの「Batman」シリーズを発売し、内2タイトルはドラマを元にした実写作品もカード化し、さらに過去にドラマとなった「Superman」も白黒ながらリリースされました。
1978年から「Superman Movie」で映画作品もカード化され、1989年の「Batman Movie」も人気となりました。この辺りまでは昔のカードならではの段ボール紙素材のカードにガム1枚付きのパックが主流でした。
1990年代も実写映画シリーズのカードリリースは続き、1992年に「Batman Returns」、1995年はFleer社から「Batman Forever」、1997年もSkybox社から「Batman & Robin」がジョージ・クルーニー(バットマン役)やアーノルド・シュワルツェネッガー(Mr.フリーズ役)の直筆サインもラインナップし、リリースされました。
2005年にはTopps社に戻り「Batman Begins」が直筆サインにゲイリー・オールドマン(ジム・ゴードン役)、ケイティー・ホームズ(レイチェル・ドーズ役)、リーアム・ニーソン(ラーズ・アル・グール役)、マイケル・ケイン(アルフレッド・ペニーワース役)の豪華キャストを揃えて発売。残念ながら主演のクリスチャン・ベイル(バットマン役)の直筆サインは収録されなかったもののバットマンのケープやコスチュームがカード化され現在も特別なカードとなっています。
1983年「Superman 3」まで映画シリーズのカード化も続いた「Superman」ですが、その後も「Batman Begins」同様にTopps社から2006年に「Superman Returns」がリリースとなり、主役のブランドン・ラウス(スーパーマン役)やケイト・ボスワース(ロイス・レイン役)、さらにケビン・スペイシー(レックス・ルーサー役)などこちらも豪華キャストの直筆サインカードが実現されました。
しかし、DCの映画作品のトレーディングカードは長きに渡り公に登場することはありませんでした。
その間も続いていたのがドラマシリーズのヤングスーパーマン「Smallville」です。2001年からシーズン10まで続いたドラマシリーズですが、映画カードの代表的メーカーのInkworks社が2007年のシーズン6までリリース。2012年には新規参入メーカーCryptozoic社が引き継ぎ、シーズン7-10をまとめたシリーズがカード化されました。DC UniverseにとってこのCryptozoic社の誕生が新たな転換期となりました。
「Smallville」は約10年続きましたが、短命となるドラマも増えました。そんな中、2012年「Arrow」のヒットが、DCを新たな舞台へと導くこととなります。Marvelのような映画シリーズとのリンクはないもののドラマ間でクロスオーバーさせることでその世界が拡張される楽しみを生み出しました。「アロー バース」という世界で「Arrow」「The Flash」「Supergirl」「Legends of Tomorrow」と複数のドラマの舞台が行き来、さらには合作するストーリーもヒットする要因となりました。それではこの4つのドラマ作品のCryptozoic社のカードについてご紹介いたします。
先陣を切るのはドラマ放送から2年後の2015年リリース「Arrow Season 1」です。シーズン4までカード化されたシリーズの中でもシーズン1には特別な要素が多く、メインキャストの直筆サインがそのひとつです。中でもヒロインのひとりであるウィラ・ホランド(テア・クイーン役)や主人公の相棒でもあるデヴィッド・ラムゼイ(ジョン・ディグル役)の直筆サインはこのシーズン1のみの収録となっており、最大のヒロインであるエミリー・ベット・リッカーズ(フェリシティ・スモーク役)の収録もシーズン1の大きなポイントとなりました。
2016年「Arrow Season 2」では上記3名の収録がなく、その後の「Arrow Season 3」は発売が大幅に延期となるも当初は直筆サインにリストアップされていなかったエミリー・ベット・リッカーズの復活は歓喜の話題に・・・そして、現時点で最後のリリースとなっている2017年の「Arrow Season 4」にして待望のスティーヴン・アメル(オリバー・クイーン役)の直筆サインも初封入となり更なる話題となりました。彼の直筆サインは市場に出回ることが稀で、10万円を超える市場価格と見られています。
「The Flash」は過去にもドラマが作成された経緯や映画では「Justice League」のひとりでもありその期待値は高いものでした。「Arrow」と同じ世界を舞台に展開していくストーリーも強みとなり、2017年にリリースされた「The Flash Season 2」では、数話の登場ながらフェリシティ・スモークとしてのエミリー・ベット・リッカーズの直筆サインもラインナップされ商品の幅を大きく広げました。
主人公のグラント・ガスティン(バリー・アレン役)も映画版を演じるエズラ・ミラーに引けを取らない人気を秘めており、「The Flash Season 2」での実現した彼の直筆サインは「Arrow」でのスティーブン・アメルよりも先だった為、その後の可能性を感じるものとなりました。しかし、グラント・ガスティンも直筆サインの枚数が少なく3種類各4枚限定というもので、1枚20万円を超える市場価格を秘めていると見られる極めて貴重なカードです。
逆に「The Flash Season 1」のみの収録となってしまったメインキャストもおり、ヒロインのダニエル・パナベイカー(ケイトリン・スノー役)や最大のヴィランであるトム・キャヴァナー(ハリソン・ウェルズ役)などがそれに当たります。どちらも人気となったシリーズになりました。
ヒロインが主役となる「Supergirl」は「Arrow」「The Flash」よりも知名度は低く、当初の直筆サインリストに主役のメリッサ・ブノワ(スーパーガール役)が含まれていなかったこともあり期待値はあまり高くありませんでした。発売延期が続いたことで発売中止もよぎりましたが、当初の発売予定日より約1年後の2018年に「Supergirl Season 1」はリリースとなりました。
延期も吹き飛ぶ大きな衝撃として、まさかまさかのメリッサ・ブノワの直筆サイン封入が実現しました。カーラ・ダンバース、スーパーガール、レッドクリプトナイトスーパーガールの3パターンのメリッサ・ブノワの直筆サインを用意したことも良いバリエーションとなり、スティーヴン・アメルやグラント・ガスティンに比べると発行枚数も多い印象で日本でも手にした方を耳にしました。
「Supergirl」は1984年にも映画化されており、Topps社からカード化もされています。面白い要素としては1984年にスーパーガールを演じたヘレン・スレイターが現ドラマで主人公カーラ・ダンバースの地球での母「エリザ・ダンバース」を演じているところです。当時は直筆サインカードというものがない時代であった為、30年以上のときを経て母親役ながらこの作品で直筆サインカードが生まれたことはとても感慨深いものです。
最後の「Legends of Tomorrow」はアローバースの中でも一番遅く2016年にスタートしたシリーズですが、「Supergirl」よりも先にカード化されました。「Arrow」や「The Flash」で登場したキャラクターを中心にチームを組み様々な時代をタイムトラベルし問題を解決していくストーリーの為、アローバースを見続けていたファンにとってはプチオールスターのような感覚になると思います。
レイ・パーマーを演じるブランドン・ラウスは先にもご紹介しました「Superman Returns」でスーパーマンを演じた名優であり、「Arrow」から登場するキャラクターですが、「Arrow」での直筆サイン封入はなく、「Legends of Tomorrow」での直筆サイン封入は驚きでした。作品から派生する彼の直筆サインは「Superman Returns」と合わせこの2タイトルのみとなり、より貴重さが増してきます。
クロスオーバーで面白い状況となったキャラクターもいました。「Arrow Season 4」の最大のヴィランであるダミアン・ダークは、「The Flash Season 2」にも登場し、さらには「Legends of Tomorrow」でも長期にわたり登場します。演じるニーク・マクドノーはこの3タイトル全てて直筆サインが封入されました。
なによりこのシリーズは2シーズンをまとめた「Legends of Tomorrow Season 1 and 2」としてリリースとなった為、アーサー・ダーヴィル(リップ・ハンター役)、ケイティ・ロッツ(サラ・ランス役)、ブランドン・ラウス(レイ・パーマー役)、ヴィクター・ガーバー(マーティン・シュタイン役)、フランツ・ドラメー(ジェファーソン・ジャクソン役)、ニック・ザーノ(ネイサン・ヘイウッド役)、メイソン・リチャードソン=セラーズ(アマヤ・ジウイ役)など全員ではないもののレジェンド(ヒーロー)の主要キャラクターの直筆サインもほぼ実現できているのが大きなポイントです。アローバースの中では一番知名度は低いと思われる作品の為、日本でもまだ未開封BOXを購入できるタイトルであると思うので是非チャレンジしてみていただきたい名作です。
アローバース以外にも長期ヒットしたドラマがDCにはまだあります。「Batman」の舞台であるゴッサムシティーでの若き日のジム・ゴードンを中心に展開される「Gotham」です。シーズン5まで続いたストーリーですがシーズン2までがカード化されています。「Gotham Season 1」ではとても珍しい試みが行われた面白いアイテムとなりました。
2シーズン通して中心となるベン・マッケンジー(ジム・ゴードン役)、ドナル・ドーグ(ハービー・デント役)の直筆サインが収録されず、人気キャストであるキャムレン・ビコンドバ(セリーナ・カイル役)がキーパーソンとなりました。残念ながら「Gotham Season 1」は彼女の直筆サインが封入されないままのリリースに・・・リリースに間に合わなかったもののその後返還された彼女の直筆サインはお蔵入りとはならず、いくつかの抽選式で入手する機会が設けられました。中には商品購入に関わらないものもあり、FacebookやTwitterを活用した抽選もあったようです。インスクリプション入りの直筆サインも多種あり、一風変わった入手方法であったことで色々な付加価値の付くカードとなりました。「Gotham Season 2」では通常通り収録されました。
「Gotham」のキャストはドラマ終了後も日本でのイベントにも参加されることがありますので、より身近に感じることができる作品であると思います。昨年末にもダヴィード・マズーズ(ブルース・ウェイン役)、ロビン・ロード・テイラー(ペンギン役)、コーリー・マイケル・スミス(リドラー役)がサイン会や撮影会などのイベントで来日していました。
DC作品以外にもCryptozoic社はたくさんの作品をカード化しています。「The Walking Dead」や「Supernatural」、「The Big Bang Theory」、「Outlander」、「The Hobbit」などもリリースしており、エンターテインメントカード部門をリードするブランドへと一歩、また一歩と成長をみせています。その歩みは着実に形となっており、ファンが待ち望むカードがまたひとつ2019年に実現します。Topps社の「Superman Returns」から13年のときを経て、再びDCの映画作品がカードとなりました。
「CZX Super Heroes & Super-Villains」
先に「Outlander」がリリースとなりましたが、Cryptozoic社初の高級版仕様アイテムとして発売の1年以上前より数多くのプロモーションをスタートさせ、2019年11月にリリースとなりました。
大きな目玉としてはジャスティスリーグのメンバー6人のうち5人のオンカードの直書きサインを実現させ大きな話題を呼びました。ヘンリー・カヴィル(スーパーマン役)、ベン・アフレック(バットマン役)、ガル・ガドット(ワンダーウーマン役)、エズラ・ミラー(フラッシュ役)、ジェイソン・モモア(アクアマン役)他、豪華なメンバーの1度に実現させた歴史に残るトレーディングカードタイトルであることは間違いないでしょう。
ガル・ガドットの直筆サインはプライスガイド誌では20万円を超える市場価値として評価されており、今後も実現可能かどうかが不安でもあり、シングルカード市場での動向が非常に楽しみでもあります。
トレーディングカードゲームのブランドとして2010年に誕生したCryptozoics社の数多くのチャレンジと共にワーナーブラザーズとのつながりを育てていき、DCの映画カード復活まで辿り着いた功績はエンタメカードコレクターの心にずっと残ってほしいと願うストーリーです。
足立卓朗【MINT新宿店 店長】
NBAをこよなく愛し、このトレカ業界に足を踏み入れ店長にもなったが、ある時マーベルの血清を注入されたかのように
マーベル映画に目覚め、今では様々な映画、ドラマを含むエンタメカードの伝道師にもなっている。