東京五輪では陸上、水泳、体操など33競技が実施されます。その内、前回大会のリオ五輪から追加種目として採用されたのは、野球・ソフトボール、空手、スケートボード、サーフィン、そしてスポーツクライミングの計5競技。今回ご紹介をさせて頂くのは、スポーツクライミングのメダル候補について。
選手の紹介をする前に、スポーツクライミングについて簡単に説明をさせて頂きます。東京五輪で実施されるスポーツクライミングは3種目の複合競技となります。いずれにも共通しているのは、垂直に反り立つ壁に取り付けられたホールドと呼ばれる持ち手を掴んで登って行くという点。高さ15メートルの壁をいかに早く登り切れるかを競う「スピード」。決められた時間内にどれだけの高さまで登り切れるかを競う「リード」。そして、制限時間内に少ないミスで設定されたコースをいくつ登り切れるかを競う「ボルダリング」。この3競技それぞれの順位を掛け算し、最終的な順位を決めるというのが東京五輪のスポーツクライミングです。
このスポーツクライミングという競技の日本に於ける第一人者とも言うべき選手こそが、野口啓代選手。
2005年の第1回ボルダリング・ジャパンカップから無敵の9連覇を果たし、2008年7月のボルダリング・ワールドカップで日本人女子選手としては初となる優勝。スピード、リード、ボルダリングの総合成績で順位を決めるクライミング・ワールドカップ・オーバーオール部門に於いて初代女王の座を掴み取りました。その後も2009年、2010年、2014年、2015年と4度ワールドカップの総合優勝に輝き、2019年に日本で開催された世界選手権では2位になるなど、まさしく日本が世界に誇るトップクライマーなのです。
初回のコラムでもお伝えをしたバドミントンの福島由紀選手のように、野口選手もカード収録から数年後にプライスが上昇カーブを描いてきた選手の1人とも言えます。スポーツクライミングが東京五輪の新競技として採用が決まったのが2016年8月。野口選手が人気女子アスリートだけを特集したシリーズ『リアルヴィーナス』に初めて収録されたのが2015年12月。現在でも続くボルダリングブームがあった事や、野口選手の実績を考えても収録するには十分であったとは思いますが、五輪競技として採用されるか否かがハッキリとしていなかった段階での起用でしたので、野口選手が収録された事に対してあまり大きな反響があったとは言えませんでした。当時勤務をしていたMINT新宿店のブログを遡って確認をしてみたところ、直筆サインカードは2,000円で販売されていたようです。
それが今や東京五輪でのメダル最有力候補としてメディアからの注目度は高まる一方となり、価格も急上昇。現在では10,000円前後が相場としてみられています。世間的な知名度がまだ決して高いとは言えなかった野口選手を『リアルヴィーナス』に収録すると決めたメーカー担当者の素晴らしい慧眼に敬服するしかありませんね。
野口選手がこれまでにカード化されたのは『2015 BBM リアルヴィーナス』『2018 BBM シャイニングヴィーナス』の2回のみ。初めてのカード化となった『2015 BBM リアルヴィーナス』では真剣な表情で壁を登る姿だけでなく、素敵な笑顔での写真、そしてヴィーナスシリーズでは唯一(?) となる、牛との2ショットも披露してくれています。
この写真が採用された理由としては、野口選手の実家が牧場を営んでいる事と、中学時代にその牧場にあった古い牛舎を改築し建てられたボルダリング専用のトレーニングルームで練習していた事が挙げられます。トレーニングルームは野口選手のお父様お手製のものであり、野口選手の成長と共に段階的に傾斜角度をつけるなどの増築が施され、最終的には約60畳の広さと約4メートルの高さを伴った日本有数の本格的な施設になったとの事です。そういった環境があったからこそ、女王・野口啓代が生まれたのかも知れませんね。
東京五輪では世界のライバル達だけでなく、もう1人の日本代表として出場が有力視されている野中生萌選手との争いにも注目です。
野中選手も野口選手同様に、ボルダリングを得意とする選手に変わりはありませんが、日本人選手の弱点と言われているスピードに於いても強みを見せています。数々の大会で入賞を果たし、2019年11月のチャイナオープンで記録をした8.404秒は2020年5月時点での日本記録。上位争い、メダル争いをする為にはスピードの順位が鍵となってくるはずですので、これからの約1年間でタイムをどれだけ縮められるか期待したいですね。
これまでカード化された回数は野中選手も2回のみ。『2017 BBM シャイニングヴィーナス』『2018 BBM シャイニングヴィーナス』での収録となります。『2018 BBM シャイニングヴィーナス』には野口選手も収録されており、ファン待望のコンボ直筆サインカードも実現しています。
このコンボ直筆サインカードは30枚限定ということもあり、シャイニングヴィーナス発売当初はオークションサイトを中心に5,000円~7,000円程度で販売されているのを見掛けていました。ただ、ここ1年近くは殆ど出品されなくなり、唯一といっていい取引履歴として残っていたのがMINT浦和店で販売をした際の20,000円というプライス。もし仮に野口、野中の両選手がスポーツクライミングの表彰台に立つ事となった場合には、どれだけのプライスに上昇するのか想像も尽きません。
五輪という大舞台で反り立つ壁をどう攻略して行くのかを楽しむと共に、女子アスリートカードの頂上に向けて登っていく過程も大いに楽しみましょう。
高橋高弥【MINT立川店 店長】
ミントチェーンの店長の中でもジャンルの幅広さとカードへの情熱は突出している。新潟出身、アイドリング!!!ファン。