MLBカブスのダルビッシュ有投手が今季最終登板となった9月25日の対ホワイトソックス戦で7回を無失点に抑え8勝目をあげた。その後、7勝で並んでいたライバル達の勝ち星が伸びず、最多勝が確定した。ダルビッシュにとってはレンジャーズ時代の13年に獲得した最多奪三振に続くタイトルで、日本人投手として最多勝は初、投手タイトルは野茂英雄が2度、輝いた最多奪三振も含め、4度目になる。
新型コロナの影響でわずか60試合の開催となったMLBレギュラーシーズン。日本人投手として初めて開幕7戦7勝を記録するなど圧倒的な投球で完全復活したダルビッシュだが、シーズン終盤は打線の援護や味方の守備にも足を引っ張られ、さらに自身も調子を落としたのか、一気に突っ走ることはできなかった。それでも、チームの地区優勝に大きく貢献し、勝利数だけでなく、防御率2.01はナ・リーグ2位、93奪三振は同4位タイと抜群の成績を残した。
7連勝を飾ったあたりから、話題に上がっていたのが、ダルビッシュの「サイ・ヤング賞」受賞である。いくつものMLB記録を保持する名投手、サイ・ヤングを讃え1956年に制定されたこの賞は投手のMVPにあたり、毎年、アメリカン、ナショナルの両リーグからひとりずつがBBWAA(全米野球記者協会)に属する30人の記者による投票で決まる。勝利数、防御率、奪三振数にくわえ、さまざまなスタッツなどから判断して、1位(7点)から5位(1点)までを選出。合計点で受賞者が決まる。過去にはダルビッシュが13年に2位に入り、同年に岩隈久志(マリナーズ)が3位、野茂英雄が4位に2回、入ったが、日本人の受賞者はいなかった。
今季はアメリカン・リーグがシェーン・ビーバー(インディアンス)で決定的、ナ・リーグはダルビッシュ、防御率と奪三振でタイトルに輝いたトレバー・バウアー(レッズ)、3年連続を狙うジィコブ・デグロム(メッツ)の三つ巴と言われている。バウアーが一歩抜きんでているとされるが、30人の記者にはそれぞれ、判断基準も違うし、1位から5位までのポイント制の投票という点も一概に下馬評通りといかないであろう理由だ。
さて、コレクターにとって気になるのは、サイ・ヤング賞に選ばれた場合のダルビッシュの「箔」である。それはトレカ市場にも大きな影響を及ぼす。当然、「サイ・ヤング賞を受賞した~」という形容詞がカードにも記載されるだけでなく、歴代サイ・ヤング賞投手のインサートでも作られればそこにダルビッシュのカードも入る。
今季の7連勝中には「BOMAN」をはじめ、2012年のルーキーカードが高騰する動きを見せていた。個人的にはダルビッシュは昨季の不振から完全に覚醒し、来季以降、すごい投手になっていく予感もする。たとえ、サイ・ヤング賞を獲得できなくても、今季はダルビッシュにとってエポックメーキングなシーズンとなり、今季、発売されたカードが2012年のルーキーカードに続く「第2のルーキーカード」として扱われる気がする。
サイ・ヤング賞の投票は9月29日に締め切られた。その結果は、11月中旬に発表される。
※トレカとは関係ないが、来季、観客を球場に入れることが許可された場合、バブルヘッドの配布も再開される。ダルビッシュはレンジャーズ時代にバブルヘッドが作られたが、まだ、カブスでは傘下マイナーの1A「サウスベンド・カブス」でしかカブスユニのダルビッシュのバブルヘッドは配布されていない。こちらもダルビッシュの活躍同様、来季の楽しみのひとつになりそうだ。
cove【ライター】
国内外のベースボールカードやコレクションアイテムを収集し続けて30年。元スポーツ紙ライター。