今季のワールドシリーズはドジャースがレイズを4勝2敗で下し、32年ぶりの世界一に輝いた。ロサンゼルスに球場配布のバブルヘッドをもらいに行き20年以上、立つが、今年はコロナの影響が出る前に8月の航空券を早々と購入しながら、無念にも飛行機が飛ばずに断念。来年は再び、ロスからアナハイムへのバブルヘッド行脚をしたいものだ。ワールドシリーズは豪快な本塁打も印象に残ったが、さらに劇的だったのが、コディ・ベリンジャーとムーキー・ベッツの外野手コンビのホームランキャッチ。というわけで、今回は守備のバブルヘッド、しかも、外野手の守備バブルを紹介したい。
ウィリー・メイズ(ジャイアンツ)はまさに攻守走の三拍子がそろった「史上最高のオールラウンダー」。1954年のインディアンスとのワールドシリーズ第1戦での伝説の捕球は「ザ・キャッチ」として語り継がれている。同点の8回にビック・ワーツが放った大飛球を背走して好捕し、イ軍の勝ち越しを阻止。試合は延長戦にもつれ込み、ジ軍がサヨナラ勝ち。ジ軍は4連勝で世界一に輝いた。ジ軍がその「ザ・キャッチ」をバブルヘッドにしたのは2010年。ニューヨークからサンフランシスコ、球場もポロ・グラウンドからAT&Tパーク(現在の名称はオラクルパーク)に変わったが、本拠地のファンに無料配布された。ボクもまだ、生まれていない時代の話。写真や動画でしか、観たことが無かったがすべて後ろ姿だけ。正面から見たらこうだったのか、とわかる貴重な資料でもある。
ジャイアンツにはもうひとり、伝説の守備を語られる外野手がいる。1995年にNPBの福岡ダイエーでもプレーしたケビン・ミッチェルだ。ホークスでは西武との開幕戦で初打席初本塁打をグランドスラムで決めたが、トラブルが相次ぎ、シーズン途中で帰国してしまった。それでも、米国では1989年にナショナル・リーグのMVPに輝くなど、ジ軍のレジェンドのひとりでもある。ミッチェルを語る時、必ず紹介されるのが、1989年4月26日の対カージナルス戦で見せたスーパーキャッチ。左翼線のファウルフライを素手でつかんだのだ。07年に球場配布されたこのシーンを再現したバブルヘッドは、米国のネットオークションにも中々出品されないレアアイテムになっている。日本でもこんな守備が見たかった。
今年4月に訃報が飛び込んだ。「ミスター・タイガース」こと、アル・ケーラインさんが享年85歳で天国へ旅立った。80年に殿堂入りし、その年に背番号6は球団の永久欠番になった。通算3000安打を達成し、399本塁打もマークしたフランチャイズプレーヤーは外野守備もすごかった。右翼を守り「ゴールド・グラブ賞」を10度受賞し、タ軍の本拠地、コメリカ・パークにある銅像も守備での雄姿。2018年に球団50周年を記念し配布をされたバブルヘッドでは、外野フェンス越しの本塁打キャッチが再現された。ケーラインさんと言えば、翌19年にも白髪で始球式を行うシーンがバブルヘッドとなり、人気を集めている。
外野手の「ナイス・キャッチ」なバブルヘッドは多く、フェンス際のシーンが多い。次がダイビングキャッチだ。強打のクリスチャン・イエリッチもマリーンズ時代に守備がバブルヘッドになった。今季、NPBの読売ジャイアンツでプレーした勝負強い打撃が売りのジェラルド・パーラも、MLBではダイヤモンドバックス時代に2度の「ゴールド・グラブ賞」を獲得しており、守備のシーンがバブルヘッドになった。
守備の名手に贈られる「ゴールド・グラブ賞」を模して、金色のグローブで守るバブルヘッドもある。
なかなか、豪華な色使いだが、上には上がある。「ゴールド・グラブ賞」はナショナル、アメリカン両リーグでそれぞれ、各ポジションひとりずつが、各球団の監督とコーチの投票により選ばれる。2011年からは、その年の「ゴールド・グラブ賞」受賞者の中から、さらにひとりを「プラチナ・ゴールド・グラブ賞」として選出することになった。2015年のア・リーグの受賞者はケビン・キアマイアー。翌年には、どう見てもシルバーだが、プラチナ色のグラブでファインプレーするキアマイアーのバブルヘッドが受賞記念で作られ、配布された。「プラチナ」の守備バブルは15年のマニー・マチャド(オリオールズ)、17年のフランシスコ・リンドア(インディアンス)とふたりの内野手が作られているが、外野手では極めて珍しい。
我らが「スーパースター」マイク・トラウト(エンゼルス)のバブルヘッドはこれまで多く、作られてきたが、その代表作が実は2012年の新人王受賞を記念して翌13年に配布された守備のバブルだろう。攻守走すべてが絵になる男らしく、守備もダイナミック。フェンスに激突してのナイスキャッチも、他の選手のバブルヘッドより迫力があるように見えるのは気のせいか。トラウトがかつて、所属したエ軍傘下のマイナーチームでも守備のバブルヘッドを作っているのも面白い。
※写真のひとつは輸送中に左腕が折れてしまって到着してしまったため、自力で修理中。あとは色を塗るだけ。笑
スーパーキャッチは選手だけではない。米国独立リーグのイーストサイド・ダイヤモンド・ホッパーズの球団マスコット「リビー」はカエル。ダイビングキャッチでしかも、カエルが餌を捕まえるかのように長い舌でボールをキャッチしている。実在も架空もさまざまな生物が球団マスコットになっているマイナーリーグや独立リーグ。カエルがマスコットになっているチームも珍しいが、それが守備のシーンとなればさらに珍しい。さらに、このバブルは動くのが脚というバブルレッグという珍品。珍マスコットの珍ボブルについては、今後もこのコラムで紹介していきたいのでご期待ください!
ナイスキャッチが決まれば、サマになるが、失敗するととんでもなく、残念な結果になることもある。そんな事件をバブルヘッドにしてしまったのはいかにもアメリカン。ロドニー・マックレーは90年代はじめにホワイトソックス、メッツでプレーした。ホ軍傘下のAAAカナディアンズに所属していた91年5月27日、右中間への飛球を追ったマックレーはランニングキャッチしたものの、外野フェンスに激突。フェンスは破壊されそのまま、フェンスの奥に消えていってしまった。「ザ・クラッシュ」と呼ばれることになるこの事件は珍プレー集で何度も再生されたほか、映画「ナチュラル」でも再現されたほどのインパクトだった。カナディアンズが配布したバブルは、フェンスも実際に起こったように、動く仕掛けがあり、思わず、吹き出してしまうシュールさがある。
ボールとともにフェンスの向こうに消えたマックレーだが、本塁打とともに自身もオーバーフェンスしてしまった外野手もいる。2013年のア・リーグ優勝決定シリーズ第2戦、レッドソックスの本拠地・フェンウェイパークでディビッド・オルティスの右中間への大飛球を追いかけたタイガースのトリー・ハンター。フェンス間際でジャンプ一番も打球に届かず、そのまま、同点の満塁本塁打とともにブルペンへ真っ逆さまにオーバーフェンス。そのシーンをバブルヘッドにしたら、両足だけがまるで映画「犬神家の一族」のスケキヨのようになってしまった。レ軍傘下の1Aスピナーズが2018年に、当時、時の人となった、ハンターの隣で万歳している警察官、スティーブ・ホーガンさんをバブルヘッドにしたのだが…。ちなみに、「ゴールド・グラブ賞」9度の名手、ハンターはツインズ時代にナイスキャッチのシーンもバブルヘッドになっているのでご安心を。
cove【ライター】国内外のベースボールカードやコレクションアイテムを収集し続けて30年。元スポーツ紙ライター。