「2020年プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」が10月26日、東京都内のホテルで開催され、支配下で74選手、育成では49選手が指名された。
各球団のファンにとっては来季のペナントレースの行方にも影響を与える新戦力として注目するほか、トレーディングカードのコレクターにとっては、ルーキーカード(RC)の市場相場が気になるところ。今年の佐々木朗希投手(千葉ロッテ)、奥川恭伸投手(東京ヤクルト)、石川昂弥内野手(中日)らのようにとんでもない価格で取引されることもある。トレカ業界では「ルーキーエディション」や「ルーキー&スターズ」、チームリミテッドの売上にも大きな影響を与える、と言われている。
今年は新型コロナのため、高校野球の甲子園大会が中止になったこともあり、報道が少なく、指名候補選手の情報が例年に比べ、少なく、ドラフト会議ギリギリまで入ってこなかった。その中で、来年のRCが高騰しそうな5人を独断でピックアップした。
【阪神1位】佐藤輝明外野手(近大)
巨人がいち早く、1位指名を公言したことで知名度が高かった佐藤は阪神、福岡ソフトバンク、オリックスが競合。矢野燿大監督が当たりくじを引き当て「矢野ガッツ」を見せた。外野だけでなく、三塁を守り、今秋の関西学生リーグでは二岡智宏(元巨人)の持つ通算本塁打記録を更新する14発。大学通算で.288、69打点の左のスラッガーだ。右の大山悠輔内野手とのアーチ競演で「OSコンビ」と呼ばれる可能性も。退団が決まった福留の背番号「8」が決まるなど、球団も売り出しにバックアップ。「(甲子園の)浜風に負けないような強い打球を打ちたい。40、50本塁打は当たり前に打てる選手になりたい」というコメントも頼もしい。
【東北楽天1位】早川隆久投手(早大)
佐藤と並ぶ今ドラフトのビッグ2の一角がこのサウスポー。ドラフト会議では千葉ロッテ、埼玉西武、東京ヤクルトとの抽選を石井一久GM(当時)が黄金の左で引いた。ドラフト会議までに、東京六大学リーグには1年秋から出場し通算12勝、防御率2.59。木更津総合高では2年春、3年春夏に甲子園に出場し3年時には2季連続でベスト8に勝ち進んだ。MAX155キロの直球にくわえ、カットボール、ツーシーム、チェンジアップと変化球も多彩。「勝てる投手とは田中将大投手(ヤンキース)のような投手のこと。自分も追いつける選手になりたい」とゴールデンイーグルスの先輩の名前を挙げる。早大ではエースで、主将も務めた。大学のゼミでは投球動作を研究した、という理論派。石井新監督なら、サウスポーの気持ちもわかる。いきなりの2ケタ勝利もいけるかもしれない。
【中日1位】髙橋宏斗投手(中京大中京)
今ドラフトでは高校生ナンバーワン右腕の評価を受けていた。ドラフト会議前に慶大の進学をあきらめ、プロ調査票を提出。地元・ドラゴンズが一本釣りに成功した。直球はMAX154キロ。昨秋に新チームのエースになると愛知県大会から19連勝で、明治神宮大会に初優勝。出場が決まっていたセンバツは新型コロナの影響で中止になったが、1試合限定で行われた甲子園での交流試合でも勝ち、28連勝無敗で高校野球生活を締めくくった。「プロでやっていける体を作り、早く試合に出たい。夢を与えられるプロ野球選手になっていきたい」と焦りはない。来年の1軍デビューは難しいかもしれないが、高卒ルーキーのRCには夢がある。打の根尾昂、石川昂、投の髙橋のヤングトリオが次代のドラゴンズの柱になるのは間違いない。髙橋のRCは抑えておきたいところだ。
【西武1位】渡部健人内野手(桐蔭横浜大)
神奈川県大学リーグでは今秋に10試合でシーズン最多タイの8本塁、新記録の23打点をあげた右の長距離砲。その実力もさることながら、キャラクターが人気を集めそうだ。しかも、いいチームに入団した。「おかわり君」中村、「どすこい」山川に続く、身長176センチ、体重112キロというぽっちゃり体型。ドラフト前から好きな選手としてふたりの名前を口にして「自分の持ち味はフルスイングです。山川さんの、全打席で本塁打を狙う姿勢を参考にしています」と公言。三塁守備も巧みで、中村を彷彿させる。シシオドシ打線の強打者の系譜を受け継ぐにふさわしい金の卵だろう。夢のアーチ連発が今から楽しみだ
【福岡ソフトバンク1位】井上朋也内野手(花咲徳栄高)
ホークスでは2位指名の笹川吉康外野手(横浜商)も個人的には注目だが、やはり、パ・リーグ覇者に1位指名された高校通算50本塁打の主砲候補の成長は楽しみ。目標の選手は、残念ながらホークス退団が確実な内川聖一で「打率も本塁打も残せて毎年、コンスタントに打率3割、本塁打30本を打てること。そして、息の長い選手になること」を目指す。選手層の厚いホークスだが、内野陣に関しては年齢が上がり、次代を担うレギュラー候補が少ないのも事実。井上には、その無限大の可能性から、松田宣浩の後継者としての期待が寄せられるほどだ。中学時代に南大阪大会の準決勝で2本塁打、ダブルヘッダーで行われた決勝で3本塁打と1日に5発。高1春からベンチ入りして夏には甲子園デビュー。2年夏には甲子園で4番を打った。いきなりの一軍登場はないだろうが、来年の高卒ルーキー野手では一番早いデビューを飾るかもしれない。
この5選手がトレカになるのは、エポック社の「EPOCH ONE」がまず、最初だろうか?今回は1位指名の5人を紹介したが、彼ら以外の1位指名選手、2位以下の選手、育成ドラフト指名選手の中から、この記事の予想を覆す選手がひとりでも多く、一軍で活躍することを筆者も、トレカ業界も待っている。
cove【ライター】
国内外のベースボールカードやコレクションアイテムを収集し続けて30年。元スポーツ紙ライター。