ここまで11勝0敗でパーフェクトシーズンも予想されていたNFLスティーラーズが12月7日、ワシントン・フットボール・チームに17対23で敗れる「波乱」があった。
ワシントンはここまで4勝7敗、1991年以来、スティーラーズに勝利したことはなかった。しかも、この試合、14ポイントのビハインドをひっくり返しての劇的な逆転勝利。スティーラーズはこの試合に勝てば、2014年にパンサーズが記録して以来の開幕から12連勝でレギュラーシーズンを終えるところだった。
番狂わせの主役になったのが、ワシントンのQBアレックス・スミスだ。具体的な数字では表せないが、ベテランらしい頭脳的なプレーを随所に見せ、その存在を印象付けた。
2005年のNFLドラフト全体1位でユタ大からフォーティナイナーズに入団。だが、故障が続き、コーチが次々に交代するなど不運も重なる。コリン・キャパニックが入団しQBの座を争い、13年にはチーフスへ移籍。18年にCBのケンドール・フラーとドラフト3巡目指名権との1対2のトレードによりワシントンへ移った。ところが、試合中に右足の脛骨と腓骨を複雑骨折。この骨折だけでも重症なのに、手術中に「人食いバクテリア」に感染し、生命の危機に。17回の手術と努力のリハビリで今年8月にアクティブ登録。11月24日には対ベンガルズ戦で自身724日ぶりの先発勝利をあげたばかりだった。
NFL入りしてから「持っていない男」と言われ続けたスミスだが、復活してからは「不可能を可能にする男」と呼ばれている。そのスミスのカードだが、全体1位で入団した際はもちろん、人気だったが、徐々にその価値を下げてしまった。しかし、アクティブ登録された直後から動きが出始め、久しぶりの勝利では大きく動いた。さらに、この日の試合終了後には大手ネットオークションのE-Bayでも取引が増えるなど、一躍、注目の選手になった。
今季のカムバック賞は確実と言われる。そのドラマチックな人生は「小説化、映画化されてもおかしない」という関係者もいるほど。新型コロナの影響で、決して明るくはなかった米国のプロスポーツ界、そして、NFL.…。2020年シーズンの顔として、スミスのカードはゲットしておきたいところだろう。もし、自宅のストレージボックスにルーキーカードがあるかもしれないのなら、探しておいたほうがいい。
追記:アレックス・スミスは2月7日、スーパーボール開催前に今季のカムバック賞に選ばれたことが発表された。
トレカジャーナル編集部