2020年も終わろうとしていた昨年12月30日(米国時間29日)、MLBのビッグニュースが飛び込んできた。
パドレスとカブスの両球団の間でダルビッシュ有投手を含む総勢7選手の大型トレード成立を発表した。周囲を驚かせたのは、昨季、最多賞のダルビッシュが移籍したこともだが、前日までに、レイズのサイ・ヤング賞左腕のブレイク・スネル投手をトレードで獲得していたパドレスがこれで左右のエースをそろえ、昨季のワールドシリーズを制したナ・リーグ西地区のライバル、ドジャースに本気で勝つ陣容を整えた。
ダルビッシュは昨季(厳密に言えば、2018年途中から)、復活し、8勝をあげタイトルを獲得。サイ・ヤング賞投票では2位にランクインした。2012年、レンジャーズでスタートしたメジャー生活は、17年途中でのドジャース移籍を経て、18年からカブスへ。15年に受けたトミー・ジョン手術の影響で苦しんだ加入当初や、その不振から復調したカブスでの3年間を思い返し、パドレス移籍会見では涙を流した。
パドレス移籍直後にはすぐにオンデマンドカードの「TOPPS NOW」がトレード決定カードを発売したが、パドレスのユニホーム姿のカード登場はこの「TOPPS NOW」の新カードを除けば、夏過ぎになるはず。さて、「パドレスのダルビッシュ」カードにはどれほどの注目が集まるだろうか。一般的に、全米的に注目度が高い球団へ移籍しない限り、移籍しただけではカードの価値は上がらない。
例えば、昨季、アストロズからヤンキースへ、投手最高契約額で移籍したゲリット・コール投手のカードは脚光を浴びた。TOPPS「シリーズ1」のコールのカードはヤンキースのユニホーム(おそらく合成)だったが、ショートプリント(SP)になりオークションでも高値がついた。それは、移籍先のヤンキースが「全国区」だったから。アストロズからの連勝記録を伸ばし、三振を次々に奪い、成績でもカードの価格を上げた。
パドレスは昨季、14年ぶりのポストシーズンを果たすなど、MLBでも屈指の勢いあるチーム。タティースJr、マチャド、ホズマー、マイヤーズらの攻撃陣はパワーだけでなく、リーグ首位の盗塁数を記録するなどスピードもある。ナ・リーグの、西海岸の雄かもしれない。それでも「全国区」の人気チームではない。
ダルビッシュのカードで人気が高いのは、何といっても12年のレンジャーズ時代のルーキーカード(RC)だ。パドレス移籍決定後も、ネットオークション「eBay」で高額落札されるのはRC。過去の落札結果を調べても上位は、トラウトらとのコラボオートを除けば、RCの直筆サインであるのは間違いない事実だ。
ただし、数こそ少ないが、完全復活を果たした今年のカードが数種類、ベスト30にちらほらとランクインしているのは、特筆すべき現象といえる。ダルビッシュにとっては、スター選手としての地位を確立した昨季は、カードにとっても特別な意味がある、ということを証明したのだ。今季、タイトルを獲得し、チームの世界一に貢献するだけでなく、サイ・ヤング賞にも輝いたら、今年のカードはどんな値がつくのか?トレカの常識を覆すかもしれない「パドレスのダルビッシュ」の投球に開幕前から、ファンもコレクターも胸を躍らせている。
トレカジャーナル編集部