羊は「ラム」である。MLBダイヤモンドバックスが2017年に球場配布したのは、自軍のジェイク・ラム外野手のバブルヘッド。その名前にちなんで、ラムの横にはラムが。あまりにおやじギャグすぎるオチに、人気は出なかった。ネットオークションでも落札額が低いため、やがて、姿を見なくなったある意味の「逸品」である。メジャーリーグでは羊ではなく、「山羊(やぎ)の呪い」の山羊のほうが有名で、バブルヘッドは多い。羊と山羊は同じウシ科ヤギ亜科に属するが、違う動物らしい。ラム外野手のバブルヘッドはほかにもあるが、羊との競演はこれだけである。17年には球宴にも出場したラム外野手だったが、昨季途中で戦力外に。アスレチックスに拾われたが、現在はフリーエージェントとなり所属先は決まっていない。
猿は人間に近いため、球団のマスコットになることが多い。その代表格が大谷翔平選手の所属するMLBエンゼルスのラリー・モンキーだ。メジャーリーグでよく使われる言葉に「ラリーキャップ」がある。「ラリー」とは反撃の意味で、負けているチームの選手がそろって帽子を逆にかぶって奇跡を起こす願いを込める。アナハイムにあるエンゼルスタジアムでも大型ビジョンにラリー・モンキーが映し出され、宙返りを繰り返す。これが、エンゼルスの反撃の合図になる。ラリー・モンキーのバブルは2002年に配布された。ヘッドではなく、背番号1/2のユニホームに「ラリー・タイム!」のボードを手にした胴体が揺れる。
「ラリー」つながりで、酉(とり)のバブルを選んだ。「ラリー・チキン」は2016年のバブルヘッド。2014年に連敗が続いていたMLBインディアンスの試合前の打撃練習。コディ・アレン、コーリー・グルーバー両投手がチキンの着ぐるみを着て登板。打撃陣に頑張ってもらおうというゲン担ぎだったが、この日、インディアンスは連敗をストップした、という。グルーバーといえば、サイ・ヤング賞を2回、獲得した名投手で、ヤンキースが契約したばかり。おかげで田中将大投手がヤンキースと契約が難しくなったとか。マー君にラリー・タイムの機会はあるだろうか。ちなみに、この「ラリー・チキン」は限定400体の希少品である。
あなたは犬派?それとも猫派?そう比較されるほどの2大ペットである犬と猫。意外にもバブルヘッドでは犬の圧勝なのである。猫のバブルヘッドはほとんどない。犬は球団のマスコットも多いだけではなく、マイナーの球場に多いバットを運ぶ犬や猿が乗ってロデオをする犬までバブルヘッドになっている。今回、登場するのはMLBパドレス傘下のAAA級エル・パソ・チワワズのマスコット「チコ」。チワワズはかつて、アルバカーキ・デュークスという球団名だった。よく、NPBにやってくる来日助っ人選手は「アルバカーキ」の所属が多かった気がする。さて、このチワワズはチワワの顔を大胆にあしらったユニホームをイベントで着用して試合をすることでも知られこの「チコ」バブルもそのユニホームを着ている。
亥はいのしし。バブルヘッドではないかと思いきや、発見した。マイナー・リーグのアドバンスドA級、ウィンストン・セーラム・ワースホッグスの「ワースホッグ」は「イボイノシシ」のこと。現在は「ダッシュ」と名前を変え、MLBホワイトソックスの傘下だが、1932年にNYジャイアンツ傘下のマイナー球団として発足した歴史のあるチームなのだ。ワースホッグス時代のマスコットはイボイノシシのウォーリー。2006年にバブルヘッドが配られたが、シックなユニホームといい、資料としてもかなり貴重なバブルといえる。猛攻で「イボイノシシ打線」とでも言われていたのだろうか?バブルは猪突猛進のイメージはなく、小さいまん丸の目が愛らしい
猫の有名な球団マスコットはいないのに、ネズミはいる。「ロスコ」はウィスコンシン・ラピッドズ・ラフターズのマスコット。かなりの人気キャラらしく、毎年のようにSGAとして配布され18年にはスライディング、19年はバッティング、15年には赤いスポーツカーに乗ってバブルヘッドになった。ラフターズはNCAAなどいくつかの大学野球リーグの新入生が参加するサマー・リーグのチーム。プロのウィンター・リーグのアマチュア版みたいなもののようだ。アマチュアなのに、バブルヘッドになり、毎年のように違うポーズで作られるのだから「ロスコ」恐るべし、なのだ。このいかだに乗った「ロスコ」はチームのロゴマークと同じ。チームが発足した2010年のもので、背番号も10だ。バットを櫓にして、荒波に挑む選手たちを象徴しているのだろう。昨年の干支だった子(ね)。また、11年後にいかだに乗って戻っておいで。
Cove【ライター】国内外のベースボールカードやコレクションアイテムを収集し続けて30年。元スポーツ紙ライター。