MLB30球団は2月17日、スプリング・トレーニング(春季キャンプ)に入った。今季の日本人メジャーリーガーは新加入した有原航平(テキサス・レンジャーズ)、澤村拓一(ボストン・レッドソックス)のふたりを含め、8人。サンフランシスコ・ジャイアンツとマイナー契約を結んだ山口俊もいる。
その中でトレーディングカード的に最も注目されるのはやはり、ダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)だろうか。19年終盤からMLBを代表するエースとして復調。昨季は最多勝に輝き、トレバー・バウアー(現ロサンゼルス・ドジャース)とサイヤング賞を争った。今季はフェルナンデス・タティースJr、マニー・マチャド、ウィル・マイヤーズら破壊力抜群の強力打線をバックに白星をどれだけ積み重ねるか、本当に楽しみだ。サイヤング賞獲得となれば、ルーキーカード(RC)の価値もさらに上がる。パラレルも写真違いのバリエーションの希少価値も上がる。
それでも、ボクが個人的に気になるのは大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)なのだ。MLB4年目の今季もこれまで通り、投打の二刀流でキャンプイン。問題は投手として復活できるか、だがブルペンでは順調な調整ぶりを見せている。キャンプ前の自主トレではすでに球速95マイル(153キロ)を計測していた、という。
18年10月に受けたトミー・ジョン手術で19年は登板なし、昨季は開幕直後に右ひじの筋肉を痛め2試合の登板に終わった。投手としての通算成績は12試合で4勝3敗、防御率4.39。エンゼルス1年目の投球を見れば、「投手・大谷」のポテンシャルに期待する米国のファンは多いはず。NPBでの圧巻の投球を知っている人なら、なおのこと。昨季は新型コロナの影響でキャンプを含め調整が難しかったこともあるだろう。
それでも、トレカ市場は正直だ。期待だけではトレカの価値は上がらない。米大手オークションサイト「ebay」では、大谷の米国製ルーキーカードの直筆サインカードはグレーディング鑑定を受けたものが20,000ドル(約210万円)で落札されているが、3年前に比べれば暴落している、と言っても過言ではない。
日本でも、大谷の米国製トレカの暴落ぶりは顕著だ。オークション結果検索サイトの「オークファン」によると2018年の2月からの3年間で大谷のルーキーカードの平均落札額は295,586円。最高落札額は「ヤフオク!」での100,000円だった。しかし、ここ1か月間の平均落札額は26,593円。何と10分の1に下がってしまったのだ。
繰り返して書くが、トレカ市場は正直だ。大谷が復活すれば、再び、ルーキーカードの価値が上がる。昨季、就任した「知将」ジョー・マドン監督なら大谷の二刀流を最大限に生かすことができるだろう。日本で見せた「リアル」二刀流もあるかもしれない。そうなると、市場価格の下がっている今こそ、大谷のルーキーカードは「買い」なのではないだろうか。
今季の「二刀流」復活を予感するボクだが、万が一、いや、千が一、億が一、投手として調子が上がらなくても、野手としてはこれまでの3年間が準備期間となり、今季はものすごい成績を残すのではないか、と思ってしまう。実はNPBでも4年目の2016年に自身初の打率3割となる.322、初の20本塁打となる22アーチ、67打点とそれまでのキャリアハイの数字を残している、というデータもある。
「DH・大谷」は2019年にはサイクル安打も達成している。この年は9月にエンゼルスでマイク・トラウトの、ドジャースでアレックス・パデューコのバブルヘッドをもらいに渡米した。たまたま、打撃練習をグラウンドで見ることができるパスもいただき、これはトレカジャーナルの読者のためにトレカとバブルヘッドについてのアポなし直撃インタビューを試みようと意気込んでエンゼルスタジアムに乗り込んだら、その日、大谷が左ひざの手術を受けて球場に姿を見せなかった、というオチがある。
大谷が一発を放つたびに「オオタニサーン、ビッグフライ!」と実況していた名物アナウンサーのビクター・ロハスさんは、レンジャーズ傘下2Aフリスコの球団社長兼GMに転身してしまった。でも、今季はボクが叫ぼう。「オオタニサーンー、トレカもビッグフライ!」。特大弾連発の活躍でトレカの市場価格も高々と舞い上がれ!。まだ、メジャー式(?)に慣れず、丁寧なサインが書かれていた初々しい初期のルーキーカードを開幕前に狙ってみようかな…。
Cove【ライター】
国内外のベースボールカードやバブルヘッドなどコレクションアイテムを収集し続けて30年。保護猫の姉妹を引き取り在宅ワーク中。元スポーツ紙ライター。