去就が注目されていたFA投手のトレバー・バウアーがMLBロサンゼルス・ドジャースと年俸総額1億2000万ドルの3年契約を結んだ。昨年のワールドチャンピオン球団でパワーピッチングが今から楽しみだ。そこで、今回は剛腕のバブルヘッドを並べてみた。1月20日に亡くなったばかりのサンディー・コーファックスさんをはじめ、昔はすごい投手が多かったが、近年も負けていない。バブルヘッドも負けていない。ということで、今回は「割と最近」の剛腕を選んだ。
今回のコラムの開幕投手はバウアーを指名したい。ツイッターなどで周囲に遠慮なしの毒舌ぶりを発揮する右腕はグラウンドでも確固たる野球哲学をもつ。トレーニング方法にもこだわりがあり、ショルダーチューブという器具を使って練習している姿もバブルになったほどだ。2016年には趣味のドローンで右手を負傷。当時所属していたクリーブランド・インディアンスのマイナーではドローンを手にしたバブルや、バウアーの顔が書かれたドローンのバブルまである。そこらへんが「鬼才」と呼ばれる所以だが、今回はシンシナティ・レッズが昨年の春季キャンプで配布したオーソドックスな投球フォームのものを紹介する。ほとんどの試合が無観客になり、SGAもお蔵入りになってしまった昨季のMLBだけに、極めて価値のあるものになった。ドジャースはバブルヘッド配布に積極的な球団だけに本人が「鬼才」ぶりを発揮して「NO」と言わない限り、ドジャーブルーのバブルが作られるだろう。
バウアーと昨年、サイ・ヤング賞を争ったのが、我らがダルビッシュ有である。年末にサンディエゴ・パドレスへ電撃トレードで移籍。ドジャースと同じナ・リーグ西地区だけに直接対決もありそうだ。キサス・レンジャーズ時代に3度、バブルヘッドが配布されたダルビッシュ。昨年まで所属したシカゴ・カブスではSGAはなかったが、傘下1Aのサウス・ベンド・カブスでは19年にバブルを作成し配布した。グラブに隠されているが握りは必殺のツーシーム、スポンサーは世界のTOYOTAである。
最優秀投手賞ともいえるサイ・ヤング賞を18、19年と受賞したのがジェイコブ・デグロム(ニューヨーク・メッツ)だ。19年まで3年連続230以上の奪三振を記録し、シーズン短縮となった昨季も104三振を奪い2年連続最多奪三振のタイトルに輝いた。デビュー当時はノア・シンダーガードとともにかなりのロン毛だったが、短髪になっても平均球速159キロの投球の凄みは変わらず。MLB公式サイトが2月7日に発表した「ベスト・オブ・ベスト」の先発投手に選ばれた。サイ・ヤング賞受賞記念のバブルもあるが、2018年にシティ・フィールドで配布されたSGAからはなぜか、その凄みが伝わってくるのは何故だろう。
デグロムとシンダーガードのコンビ以上に記憶に残るのは2019年にワールドチャンピオンになったヒューストン・アストロズのジャスティン・バーランダーとゲリット・コールだ。バーランダーは21勝で最多勝、コールは最優秀防御率と最多奪三振、と投手三部門のタイトルを分けあった。ア・リーグのサイ・ヤング賞はバーランダーだ。バブルヘッド配布が多いアストロズはこの年、ふたりのバブルを制作。コールはニックネームの「コール・トレイン」そのまま、線路の上で投球をしている様子がバブルになっているのだが、2020年にニューヨーク・ヤンキースにFA移籍。このシーズン限りでコンビ解消になったのは残念だった。
ステファン(スティーブン)・ストラスバーグ(ワシントン・ナショナルズ)はドラフト史上最高の投手と呼ばれ、09年の全体1位でプロ入り。ナショナルズではMAX161キロだが、大学時代は166キロも計時した。故障続きで「ガラスのエース」とも言われてきたが、19年には18勝で最多勝のタイトルに輝き、ワールドシリーズ制覇の立役者としてシリーズMVPにも選ばれた。全米1位指名を記念した「ドラフトデーバブル」でも商品が作られ販売されたほか、15年にはデビュー戦でのカーテンコールの様子もバブルになった。3Aポトマック・ナシナルズでは火の出るような直球を投げることを表現して火炎放射器を手にするバブルも配布された。その中でも、やはり、一番人気はファーストSGAとして2012年に配布された豪快な投球フォームのバブルヘッドだ。
豪快な投球フォームといえば、忘れられない投手がティム・リンスカム(サンフランシスコ・ジャイアンツ)だろう。3度の最多奪三振、2度のサイ・ヤング賞を獲得。13年と14年には2年連続ノーヒットノーランも達成した。大きなスライドをいかし体全体を使った投球フォームはまさにダイナミック。2011年に配布されたバブルはリリース後の右足が後ろに跳ね上がった様子を忠実に再現している。高校時代も含め3度のドラフト指名を拒否し、2006年にジャイアンツから1位(全体10位)の指名を受けプロ入りした。
リリーフの剛腕といえば、クレイグ・キンブレル(シカゴ・カブス)だろうか。アトランタ・ブレーブス時代の2011年から4年連続の最多セーブ賞に輝いた右腕は、ボスト・レッドソックス時代の2018年には通算300セーブをMLB史上最年少となる29歳11か月で達成。捕手とサイン交換をする際にマウンドから打者を威嚇するような構えを取る個性派だが、その「キンブレル・ポーズ」と呼ばれる構えをブレーブスもレッドソックスもバブルヘッドにしたのだから面白い。19年からカブスに所属してダルビッシュと一緒にプレーした。若干、投球の勢いが衰えているのが気がかりだが、まだ32歳。ぜひ、カブスでも、たとえ他球団に移籍したとしても「キンブレル・ポーズ」のバブルが配布されるように復活してほしい。
2016年と17年にはふたりの若き剛腕が天国に旅立った。16年には24歳のホゼ・フェルナンデス(フロリダ・マーリンズ)がボートで、翌年には25歳のヨーダノ・ベンチュラ(カンサスシティ・ロイヤルズ)が交通事故で死去。フェルナンデスは12勝を挙げて新人王になった2013年から4年間で38勝17敗。本拠地で29勝2敗、防御率1.49の数字を残し「マイアミの至宝」と呼ばれた。2年目には早くもバブルが配布された。ベンチュラは実質3年でマークした通算38勝の成績よりもプレーオフ、ワールドシリーズでの160キロ連投が記憶に残る剛腕だった。ベンチュラのボブルは亡くなる前年の2016年にロイヤルズ傘下のアドバンスA級のウィリミントン・ブルーロックスが配布。「火の玉ストレート」を投げ込むフォームはすでに右腕が燃え上がっている。
「火の玉ストレート」を投げる投手がいれば、こんなものを投げる投手もいる?独立リーグのサマセット・ペイトリオッツが2019年に配布したジョン・ハントンのバブルヘッドが手にしているのはボールではなくホットドッグ。提供スポンサーが天然&無添加の食肉メーカーだったことが理由のようだ。ハントンはMLB経験がなく、マイナーリーグで通算20勝をマークしたほか、独立リーグ、メキシコなど海外リーグで14年間プレーした息の長い投手だった。でも、食べ物を投げてはいけません。
Cove【ライター】
国内外のベースボールカードやコレクションアイテムを収集し続けて30年。保護猫の姉妹を引き取り在宅ワーク中。元スポーツ紙ライター。