球春とともにグラウンドにも、スタンドにも笑顔が戻ってきた。MLBが4月1日、開幕した。NPBと同様、有観客でプレーボール。今季は2年ぶりに162試合が行われる予定で球場配布のバブルヘッドをはじめとしたSGA(Stadium Give Away)の日程も発表。チームのワールドシリーズチャンピオンを目指す選手たちだが、タイトル争いも気になるところ。というわけで、今回はタイトルホルダーたちのバブルヘッドのお話です。
一番のタイムリーなバブルヘッドはマイク・トラウト外野手。ロサンゼルス・エンゼルスは4月2日の対シカゴ・ホワイトソックス戦で最新のボブルヘッドを配布した。3度目のMVP受賞を記念したものだが、実は昨年、配布されるはずだったもの。コロナ渦で無観客となり、お蔵入りしていたものだ。渡米できないので、「eBay」でゲットしたいのだが、まだ、落札額は高い。
トラウトは毎年のようにSGAでバブルヘッドが作られてきた。2014年と16年にはシーズンMVP、14年と15年にはオールスターゲームでもMVPを獲得。17年に「4回」のMVPを記念して配布されたものは、大谷の初ボブルでおなじみのエンゼルス得意の2体バージョン。バットを2本、楯を2つ、もっている。さらに、昨年、8度目のシルバースラッガー賞に輝いたが19年に前年の6度目の同賞を記念して6本の銀色のバットを手にバブルになった。
二塁ベースは重ねることができるから、バットより安定感があるかもしれない。カール・クロフォード外野手は通算480盗塁、4度の盗塁王に輝く韋駄天選手。タンパベイ・レイズ時代の2009年にはMLBタイとなる1試合6盗塁を記録した。その後、ボストン・レッドソックス、ロサンゼルス・ドジャースと渡り歩いたが、引退後の18年にその偉業を讃え、レイズがバブルを配布した。6個のベースに手をかけポーズをとっている。
ほかにも、二塁ベースのバブルヘッドでボクがどうしても欲しいがまだ、手に入れることができないものもある。セントルイス・カージナルス傘下のAAスプリングフィールド・カージナルスが配布した通算938盗塁のルー・ブロック外野手のバブルヘッドは8回の盗塁王を讃え、ベースが8個、積み上がっている。昨年9月、ブロック本人が亡くなってしまい、ボブルの人気も価格も高騰。オークションでも姿を見なくなってしまった。
それでは、グローブはいくつまで持つことができるのだろうか。フランク・ホワイト内野手は1990年までカンサスシティ・ロイヤルズひと筋で18年間、プレーし、背番号「20」は同チームの永久欠番に。二塁手としてゴールドグラブ賞を7度、受賞している守備の名手である。06年にロイヤルズが配布したバブルヘッドではホワイトが左手で7個のグラブを掲げている。これは二塁手のグラブが他の野手のものより小さいからだろうか。
オマー・ビスケル内野手はクリーブランド・インディアンスを中心に23年間、プレー。遊撃手として歴代最高の2709試合に出場した。昨年は同じベネズエラ出身のアレックス・ラミレス前監督に要請されて、NPB横浜DeNAベイスターズの春季キャンプで臨時コーチを務めた。13度のゴールドグラブ賞を獲得しているが、2013年にインディアンスが配布したバブルは華麗な守備を再現したためか、左手にはめているグラブ以外は台座に積まれている。しかも、9個と3個の2列に分かれている。
同じ遊撃手で、ビスケルを超える13度のゴールドグラブ賞を受賞したのがオジー・スミス内野手だ。サンディエゴ・パドレス、セントルイス・カージナルスで「オズの魔法使い」のニックネームで親しまれた。まさに魔法使いのような守備を見せたが、試合開始の際に、遊撃の守備位置に向かう際の宙返りも有名だった。その宙返りのバブルヘッドもあるのだが、今回は12個のグラブを置き、ひとつをはめている記録的なボブルをどうぞ。ビスケルと同じ2013年に配布されたのは、何か因縁めいている。
キャッチャーミットは重いのでそれほどは持てないはず、と思っていたら、ヤディアー・モリーナ捕手は7個の黄金のグラブと3個のシルバーの合計10個のミットを両手でアコーディオンのように持っている。2015年にカージナルスが配布したバブルヘッドだが、この年にゴールド&プラチナゴールデングラブ賞を追加し、さらに18年にもゴールドグラブ賞に。38歳になった今季もカージナルスでMLB18年目のシーズンを過ごしているだけに合計13個のミットのバブルヘッドは作られることを期待したい。
しかし、13個のミットを自慢するバブルヘッドが存在した。2014年にテキサス・レンジャーズが配布したイバン(アイバン)・ロドリゲス捕手のバブルヘッドは台座に置かれているとはいえ、13個のキャッチャーミットが高く積み上げられている。これはバブルヘッド史上最高のグラブ、ミット数の記録かもしれない。ロドリゲスは捕手として史上最高の2427試合に出場し、13度のゴールドグラブ賞もまた、史上最高の回数だ。21年間の現役生活でのべ7球団のユニホームに袖を通し、メジャー2年目の1992年から10年連続でゴールドグラブ賞を獲得。デトロイト・タイガースでも3度、受賞した。2017年に野球殿堂入りし、翌年にはレンジャーズがそれを讃え、背番号7を永久欠番にした。バブルヘッドで他球団でのゴールドグラブ賞もカウントするあたりに、ロドリゲスへのリスペクトぶりが感じられる。
バット、グラブ、ミット以外で自慢できるものは、記念の盾である。昨季、タンパベイ・レイズをワールドシリーズで下して1988年以来、32年ぶりの王者となったロサンゼルス・ドジャース。そのエースはクレイトン・カーショー。これまで3度のサイ・ヤング賞に輝いたサウスポーのバブルヘッドはここ最近では毎年、SGAとして配布されてきた。2015年のバブルヘッドは前年のシーズンMVPと、自身3度目のサイ・ヤング賞を記念してのもの。21勝3敗の無双な成績で同時受賞は史上11人目。形の違う盾を器用に積み上げてポーズを決めている。
コーリー・クルーバー投手は今季からニューヨーク・ヤンキースに移籍した。ちょうど、田中将大投手に代わり、先発ローテーションに入る。シンカー、チェンジアップなどの「ブレーキングボールの使い手」として知られインディアンス時代の2014年と17年にはサイ・ヤング賞を受賞しており、それぞれ、翌年にバブルヘッドが配布された。面白いのは、ほぼ同じポーズで盾の数が増えていること。持つのも片手から両手に増えた。3回目のサイ・ヤング賞を獲得してバブルヘッドが作られるとしたら、どんなデザインになるのか、かなり興味深い。
Cove(ライター)
国内外のコレクションアイテムを収集して30年以上。ボブルヘッドの数量と、どうでもいいネタについては日本でも屈指を自負する。元スポーツ紙ライター。