米大手オークションハウスの「ゴールディン・オークションズ」(GA)で前回、NBAアレン・アイバーソンのインサートカードが7,800ドル(約86万円)で落札された。このカードはFLEER/SKYBOX「1997-98 Metal Universe」に封入されていた「Platinum Portrait」でPSAグレーディング鑑定は10点満点だった。
この落札額だけなら、高額落札が続くGAにおいては目立つことはないが、周囲は驚いた。米国のトレカ専門誌「BECKETT」のプライスガイドではこのカードには400ドル(約4万4000円)の評価しかついていなかったのである。
そもそも、「BECKETT」のプライスガイドは過去のカードのプライスはよほどのことがない限り、大きく動くことはない。これほどオークションでトレカが高騰することは想定できなかったのか、細かいオークション結果をすべて、プライスガイドに反映していくことは至難の業と言える。今回の「Platinum Portrait」は全15種類で288パックに1枚の出現率(オッズ)。他のレアなインサートの中では入手困難とまでは言えないこともプライスガイドの評価につながったようだ。
それでも、ドットを使ったダイカットの凝ったデザインは今ではなかなか、お目にかかることができない秀逸さである。保存も難しいデザインで、PSAで10点満点を獲得することも難しい。これまで、様々なオークションにPSA9点のものは出品されてきたがPSA10は今回が初出品だった。
もちろん、時代の流れも、7,800ドルの背景にはある。2010年にNBAトレカの高騰が始まった、と言われている。前年の09年を限りにカード化の権利の問題で、NBAトレカの雄だったUPPER DECK社がNBAカード市場から撤退。PANINI社の新商品は、有力なドラフト指名ルーキーがいなかった不運もあり、コレクターはUD社やFLEER/SKYBOX社の旧年ボックスに再注目し争奪戦に。他のスポーツ同様にサインカードが全盛だったNBAトレカもレアなインサートが陽の目を見ることになった。
アジア圏の富裕層がこぞって買い集めたのがケース1枚以上のレアなインサートで「Platinum Portrait」もその代表的なものだった。「ここで00年代まで数十ドルだったこのインサートの値段がひとケタ、上がったのです」と証言する人もいる。
そして、今回の新型コロナの影響で、旧年トレカへの再評価、状態のいいもの=グレーディング鑑定の評価点の高いものへの価値観の変化が発生。さらに、GA創設者のケン・ゴールディン氏が言うところの「インフレに強い資産としての価値」が認められ、投機対象としても、ここ数年でもうひとケタ、価格を上げた。つまり、数十ドルのカードが数百ドルになり、今では数千ドルになったわけである。
「Platinum Portrait」はNBAトレカのコレクターの中でも、こだわりのインサートカードとして知られる。あなたの「推しトレカ」が今後もひとケタ、もうひとケタと市場価格を上げるかもしれない。
トレカジャーナル編集部