北海道日本ハムファイターズの新庄剛志監督の登録名が「BIGBOSS」に変更された。2022年シーズンが開幕する前日の3月24日、日本野球機構(NPB)が発表した。
「BIGBOSS」の名称は新庄監督が就任会見で報道陣に「これからは『ビッグボス』と呼んでください」と依頼。NPBによると、登録名変更は球団から以前に申請されており「今までにちょっとない表記だったので確認して、珍しいことではあるが、ルールに抵触するものではないという確認をした」と24日に承認し、変更した。
BIG BOSS自身も現役時代に「SHINJO」の登録名となった経験があるが、NPBでは過去に珍しい登録名でプレーした選手は多い。ボクが印象に残っているのは、スティーブとテリー(ともに西武ライオンズ)である。ボクが高校生時代に来日したスティーブ・オンティベロスとテリー・ウイットフィールドは、当時は珍しいファーストネームでの登録だった。姓のほうがカッコいいのに、バリバリの現役大リーガーなのに失礼だろうと思ったが、球団の方針でファンに親しみやすい登録名にしたのだろう。
姓名に関する面白い登録ではリーとレオンの助っ人兄弟が知られる。兄のレロン・リーと弟のレオン・リー。レロンは登録名「リー」として来日2年目の1977年に本塁打と打点の二冠、80年には首位打者に輝いた。弟は兄に誘われて78年に来日し、登録名「レオン」としてロッテオリオンズで82年まで一緒にプレー。その後、大洋、ヤクルトでプレーし、2003年にはシーズン途中で打撃コーチからオリックスの監督に昇格した。ロッテ時代にはふたりでレコードデビューもしていた。
アレックス・オチョア(中日ドラゴンズ)は名字の「オチョア」が「おちょくる」に似て印象が悪いことから「アレックス」に。広島東洋カープでも、三拍子そろった攻守走を見せた。2016年の来日1年目に24本塁打したギャレット・アンダーソン(巨人)も登録名は「ギャレット」。球界にそれまで「ジョーンズ」が多かったため、インパクトのある「ギャレット」で登録された、という。ボクはカープで活躍した「ギャレット」(エイドリアン・ギャレット)にあやかったに違いないと信じている。「ギャレット」ともにカープの初優勝に貢献したリッチー・シェインブラムは姓が長いこと、人気の西部劇映画にちなみ「シェーン」で登録。「略されても問題ない。ただし、ボクは馬を連れて日本には行かない」の名言も。略されてしまった外国人選手では「ブレイザー」(ドン・ブラッシングゲーム)もいる。
外国人選手にはニックネームや愛称の登録名が多い。1983年に阪急ブレーブスに入団したグレゴリー・ウェルズは米マイナー時代に「ブーム」と呼ばれていたこともあり「日本でもブームを起こすように」と球団が提案し「ブーマー」として登録。84年には三冠王とMVPになった。登録名「アニマル」の本名はブラッド・レスリー。クローザーとして、最後に力士のように手刀を切るパフォーマンスで人気だった。引退後はタレント「亜仁丸レスリー」として「風雲!たけし城」に出演していた。
前身の阪急を含めオリックスにはイニシャルで登録され、来日1年目に2か月連続月間MVPに選出された「D・J」(ダグ・ジェニングス)、不振に陥った「D・J」に代わり来日した「C・D」(クリス・ドネルス」もいた。
日本人選手にも本名ではない登録名もあった。その代表は1994年にオリックスの指揮官に就任したアイデアマンの仰木彬監督は鈴木一朗を「イチロー」に。佐藤和弘を「パンチ佐藤」に。佐藤はパンチパーマが売り物だった。
「イチロー」が史上初の200安打を記録した94年のドラフト1位で千葉ロッテマリーンズに入団した大村三郎はイチローの快挙と、チームに大村巌が在籍していたこともあり「サブロー」に。シーズン途中で巨人に移籍した2011年には球団が「サブロー」を認めず、本名となった。翌年はマリーンズに復帰し登録名も戻したため「大村三郎」トレカはレアカードになった。今季はドラフト1位の翁田大勢が「大勢」で球団初の日本人選手で姓以外の登録となった。開幕戦で新人40年ぶりのセーブを挙げると、第2戦では史上初の開幕から2試合連続セーブの快挙を成し遂げた。
「SHINJO」が登録された2004年に西武ライオンズに入団した佐藤隆彦は「ジジィ」のニックネームから「G.G.佐藤」に。「SHINJO」とともにNPB初のアルファベット表記登録となっただけでなく、北京五輪にも招集。ユニークなキャラクターとパワフルな打撃で人気選手になった。西岡剛(千葉ロッテマリーンズ)は2007年の開幕前に重大発表をする、と予告して登録名を「TSUYOSHI」に。
対照的に、1979年に来日したフランク・オーテンジオ(南海ホークス)はオープン戦で本塁打を連発し、外国人選手ながら漢字表記の「王天上」の当て字(?)に。「王貞治さんを超えるアーチストに」という球団の提案を当初は固辞していたそうだが、了承し登録名を変更。1年目は23本塁打を放ったが、2年目のシーズン途中に戦力外となった。
Cove(ライター)
元スポーツ紙ライター。海外のコレクションアイテムを収集して30年余り。先日の地震で、自宅に飾ってあるボブルヘッド500体の首が揺れて恐怖を感じた。トレカはレギュラーカードのコンプリートと日本人メジャーが中心。