まもなく開幕するMLBの2022年シーズン。「二刀流」大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)と並んで、注目を集めているのが、鈴木誠也(シカゴ・カブス)だろう。4月2日のエンゼルスとのオープン戦では、2号2ラン。オープン戦での打率は1割台だが、記録した2安打がいずれも本塁打となった。そんな誠也だが、MLB公式サイトではナ・リーグ新人王候補の筆頭に選出。「間違いなく才能と機会が出会った。この男は打てる」と早くも絶賛されている。
誠也が選んだカブスという球団。現在のMLB30球団でアトランタ・ブレーブスと並び、最も古い1876年に創設された。地区優勝8度、リーグ優勝17度、ワールドシリーズ優勝3度。16年には名将マドン監督(現エンゼルス監督)に率いられ、歴代最長ブランクを経て108年ぶりの世界一に輝いた。
本拠地のリグリーフィールドは、ツタで覆われた外野フェンスが有名で、1914年に完成した。現存するナ・リーグ最古の球場で、球団もホームグラウンドも歴史と伝統がある。ボクもロサンゼルス・ドジャースの担当記者だった90年代後半に何回か、取材で足を運んだが、リグレーフィールドに一歩、足を踏み入れただけで、その歴史が感じられるムードが好きだった。ロッテ・オリオンズの担当だった時は川崎球場が好きだった。
初めてリグレーフィールドを訪れたのは96年4月。とにかく寒かった印象が残っている。カブスの打撃練習を見ていると、後ろから、いきなり抱きつかれた。カブスのユニホームで、目だけを出した毛糸の帽子を頭からすっぽり被っている選手は「オレが誰だか、わかるかい」と言ってきた。後に、マーク・マグワイアと本塁打記録を争うサミー・ソーサだった。当時28歳ながらすでに通算100本塁打を達成していたが、日本での知名度はそれほどでもなかった。ただ、91年のUPPER DECKのルーキーカード、ホワイトソックス時代のソーサの笑顔が印象に残っているボクが、その話をすると、陽気なドミニカンはまた、抱きついてきた。でも、なんでわかったかって?。だって、背番号21は隠せないから…。
そんなカブスに在籍した日本人選手は誠也が9人目。記念すべき第1号は2008年から4年間、所属した福留孝介である。NPB中日ドラゴンズからFA宣言して移籍したカブスで日本時代と同じ背番号1を着けた。「5番・右翼手」で先発出場した開幕戦の初打席で二塁打を放つと、9回には同点3ランと衝撃のデビューを飾った。MLBでのルーキーイヤーは150試合に出場し、打率.257、10本塁打、58打点。盗塁も12を記録した。レギュラーシーズンは調子を徐々に落としたが球宴にもファン投票で選出されるほどの人気だった。
そのコウスケ・フクドメのトレカだが、もちろん、たくさん、作られた。もちろん、収集した。カードだけでなく、フクドメが表紙になった「スポイラ」も米国から取り寄せた。ところが、とんでもないエラーカードが登場した。しかも、連発だ。
TOPPS「Bowman Chrome」の1枚。「オートグラフ」のロゴが印刷されているのに、サインがない。サインがあるべき余白があるのにサインがない。
さらにはTOPPS「Update」のレギュラーカード。こちらはプリントされたサインはあるが、天地が逆になっているバージョンがある。今なら、「ジプシークイーン」でありそうなデザインだが、これはどうみてもおかしい。
価値のあるエラーカードもあるが、コウスケ・フクドメのエラーカードは残念な珍カードである。この後、田口壮、藤川球児、高橋尚成、和田毅、川崎宗則、上原浩治、ダルビッシュ有、そして、誠也と8人の日本人選手がカブスのブルーのユニホームに袖を通したが、一番似合っていたのはコウスケ・フクドメだったと思うだけに、残念である。
当時に比べ、エラーカードは減ったと思うが、誠也のエラーカードだけは勘弁してほしい。サインカードやパラレルカードを引き当てた時に「Say Yaaaaaaa!」と現地の実況中継なみに叫びたいのだ。
Cove(ライター)
元スポーツ紙ライター。国内外のコレクションアイテムを収集して30年あまり。バブルヘッドの収集は日本屈指で、自称=日本唯一のバブルヘッドライター。トレカはレギュラーカードのコンプリと日本人メジャーが中心。