中日ドラゴンズの根尾昂外野手が5月21日、投手デビューを果たした。対広島東洋カープ戦(マツダスタジアム)で9点の大差がついた8回、マウンドに上がった。
打席の坂倉への初球は150キロ。「ピッチャー・根尾」の場内アナウンスに敵地ながら沸いたスタンドが今度はどよめいた。坂倉には右前安打を許したが、同学年でドラフト1位対決となった小園は右直、磯村を中飛、中村を二塁ゴロと後続を抑え、無失点に封じた。
まるで、大谷翔平だ。直後の9回には先頭打者として打席へ。一塁ゴロに倒れたが、ファンは根尾の投打に間違いなく夢を見た。
中日の野手登録選手の登板は1962年のニューク(ドン・ニューカム)以来60年ぶりだった。
2018年に春夏連覇した大阪桐蔭高の主力で、センバツ優勝投手にもなった根尾。プロ入りの際に野手に専念することを決めた。遊撃手から外野手に挑戦も、ここまで、結果を出すことはできなかった。
予感はあった。4月2日の同カード(バンテリンドームナゴヤ)で、ベンチ入りした9投手全員が登板した後の延長12回、ブルペンで投球練習して、有事に備えた。さらに、5月8日のウエスタン・リーグ、対阪神タイガース戦で遊撃手としてスタメン出場し、9回には「プロ初登板」を経験していた。打者5人に20球を投げ、2/3イニングで3安打1失点。この日も150キロを記録した。
もちろん、本格的な二刀流挑戦ではない。でも、将来的には否定はできない。まさに夢のある話である。
それでは、今回の投手デビューが根尾のトレーディングカードの市場価格に影響を与えることはあるのだろうか?
残念ながら、それはNOである。ルーキーイヤーにルーキーカードが高額で取引された根尾だが、その市場価格を守るには、野手として打ちまくるか、二刀流をやるにしても投手として結果を出さないといけない。
MINT LAB TOKYOの田村館長は言う。「今季は吉田輝星がセットアッパーで存在感を見せていますが、吉田はやはり、先発投手で活躍しないとルーキーカードの市場価格をアップさせることはできないと思います。清宮幸太郎なら、本塁打を量産しないとダメなのです」
甲子園の星だった選手たちは期待の高さでルーキーカードに高額な市場価格がついた。それをさらに上げるには、一軍で、投げたり、打ったりするだけでは物足りない。期待を超える活躍が必要になる。プロ野球そのものと同様に、トレカもシビアな世界である。
そう考えると、佐々木朗希はトレカでもやはり「怪物」と言えるかもしれない。
Cove(ライター)
元スポーツ紙ライター。国内外のコレクションアイテムを収集して30年あまり。バブルヘッドのコレクションが自慢で日本唯一のバブルヘッドライター(自称)。トレカはレギュラカードのコンプリと日本人メジャーが中心。