NPB千葉ロッテマリーンズが6月9日、ロベルト・オスーナ投手の獲得を発表した。メキシカン・リーグのレッドデビルズに所属するオスーナはMLB通算155セーブをマークし、2019年にはヒューストン・アストロズで38セーブで最優秀救援投手に輝いている。
MLBのセーブ王経験者がNPBのマウンドに上がるのは、オスーナが3人目になる、という。75年にボストン・レッドソックスで、78、80年にニューヨーク・ヤンキースで最多セーブを獲得したリッチ・ゴセージは90年に福岡ダイエーホークスに入団した。90年にシカゴホワイトソックスで57セーブをあげタイトルを獲得したボビー・シグペンは94年のシーズン途中に来日し、95年までプレーした。
93年オフに日本ハムファイターズの担当記者だったボクはチームが獲得を目指す新外国人選手の特ダネを書こうと、ある球団フロントに食い下がっていた。スポーツ紙に載る新外国人のニュースのソースは米国側から漏れてくるものと、球団関係者のリークがある。リークといっても、ズバリ、交渉中の新外国人選手の名前を教えてくれるわけではない。こちらから、昨年の所属はア・リーグか、ナ・リーグか、から始まり、身長は高いか、名前の頭文字のアルファベットは?、などと細かく、質問をぶつけていき、候補者を絞って、最後に●●投手でしょう?、と核心をつくのである。
そんなやりとりが面倒くさくて、当時、ボクが考えた取材方法がトレーディングカードを使ったものだった。フリーエージェントの中から、チーム事情に合致しそうな選手を選んで、9ポケットシートに並べ、バインダーに閉じて、球団関係者に見せる。ボクがマークしていたそのフロントはかつて、ヤンキースに留学したほどのアメリカナイズされた人だった。ニヤニヤしながらシートをめくり、2ページ目の上の段にいる、と教えてくれたのが、こんな大物が来たら大変だ、と思いながら選んだシグペンだったのである。
翌日の3面にデカデカと載ったスクープは「日本ハムが超守護神を獲得へ」という見出しの記事である。冷静になって読んでみると、超守護神って、すごいのか、すごくないのか、よくわからない。結局、交渉はまとまらず、「超守護神」の入団は実現しなかった。それから、数か月後、驚いた。福岡ダイエーがシグペンの獲得を発表したのである。
西武ライオンズの担当になっていたボクだったが、シグペンがチームに合流したのは奇しくも西武ドームでの対西武戦。シグペンにウケようと思い、マイコレクションのKenner社のフィギュア「Starting Lineup」を持って挨拶にいった。まったく似ていないことで有名なフィギュアを持ってベンチ前に現れた日本人のオタクにシグペンは大喜びだった。
「くれぐれもブリスターの上からサインしてください」とお願いする間もなく、ブリスターをバリバリ。嘘だと言ってよ、ボビー。MLB通算201セーブの名クローザーが、ブリスターの中からカードを取り出して、ペンを走らせてくれた。「サンキュー」とひきつった顔でお礼を言うボクに、超守護神は「ノープロブレム(問題ないよ)」とさわやかに笑い、ブルペンへ走っていった。
「Starting Lineup」が今年、復活するらしいが、サインをもらうアイテムには向いていないことだけは変わりない。
Cove(ライター)
元スポーツ紙ライター。国内外のコレクションアイテムを収集して30年あまり。バブルヘッドのコレクションが自慢で日本唯一のバブルヘッドライター(自称)。トレカはレギュラカードのコンプリと日本人メジャーが中心。