このカードはエポック社のオンデマンドカード「Epoch One」史上最高の傑作といえるかもしれない。
グリーンに座り込んで見せているのは泣き顔だろうか、泣きながらの笑顔だろうか。11月20日の大王製紙エリエール・レディース最終日(エリエールGC松山)で、史上2番目のブランクとなる11年35日ぶりの優勝を決めた藤田さいき。このシーンをTVで見ていたボクだったが、この表情が泣き顔か、泣き笑いだったか、は忘れてしまった。それほど感動的なシーンだったのだ。
最終18番。ウイニングパットは微妙な下りの1.2メートル。「腹をくくって打ちました」。静寂の中にカップインの音が響き、藤田の逆転優勝が決まった。カップの横にしゃがみ込み、両手で顔を覆った。涙があふれた。「普通ではいられないと思った。私らしくていいかな」。その直後の写真がカードになった。
1打差の2位から出た藤田は4バーディー、ボギーなしの67で回り、通算21アンダー。72ホール(パー71)での「263」はツアー最少ストロークを4打更新する新記録となった。そして、2011年10月の富士通レディース以来となるツアー通算6勝目。88年のツアー制施行後では10月のツアーで11年189日ぶりの優勝を飾った金田久美子に次ぐ歴代2位のブランクとなった。
今季も2位が3回。9月下旬には1試合を休み、所属先のゴルフ場で調整。過去のミスを再現し「1.2メートル」も繰り返した。「あの距離は何度も練習したんです」また、涙で言葉を詰まらせた。イップスで短いパットを決められなくなった時もある。子宮頸がんで手術も受けた。試練を乗り越えて、11年ぶりに立った頂点だった。「11年はとっても長かった。一言で表せないです」。
「Epoch One」の販売サイトには「素晴らしきプロスポーツの世界から、試合ごとのヒーロー・ヒロインや名場面を、いち早く記念カードとしてお届けするメモリアルオンデマンドカード」とある。まさに、11年間の思いが詰まったこの名場面がカードになったのは、真骨頂といえるだろう。
藤田はまだ36歳。これからも見ている人に感動を与えるゴルフを見せてほしい。カードの裏面のような最高の笑顔も見せてほしい。そして「Epoch One」はこんな素敵なカードを作り続けてほしい。ゴルフカードなら、迫力あるスイングの写真もいい。パットを決めてのガッツポーズもいい。それでも、ボクはゴルフクラブも、ゴルフボールも写っていない藤田のカードにトロフィーをあげたい。
Cove(ライター)
元スポーツ紙ライター。国内外のコレクションアイテムを収集して30年あまり。バブルヘッドのコレクションが自慢で日本唯一のバブルヘッドライター(自称)。トレカはレギュラカードのコンプリと日本人メジャーが中心。