今年も新たに3人の日本人メジャーリーガーが誕生した。千賀滉大投手(ニューヨーク・メッツ)と吉田正尚外野手(ボストン・レッドソックス)、そして、藤浪晋太郎投手(オークランド・アスレチックス)である。日本人メジャーリーガーの米国製トレーディングカードを収集しているボクにとっては、この3人のファーストカードにどんな写真が使われるか、にかなり、関心がある。
1995年に野茂英雄さんがロサンゼルス・ドジャースに移籍した時、シーズン途中から渡米してドジャースに帯同したボクは野茂さんの米国製トレカに、今のようにワクワクしていた。野茂さんのファーストカードは、当時の4大メーカー、TOPPS、FLEER、DONRUSS、UPPER DECKではなく、ストライキで遅れた開幕前に、ベーカーズフィールド・ブレイズの一員として登板した対ランチョクカモンガ・クウェークス戦の写真を使ったマイナーチームセットに封入されたものだった。
それから、DONRUSS社の「Leaf」のシリーズ2に入ったルーキーカードが登場。躍動感あふれる投球フォームだった。その直前には、各地のトレカショップでFLEER社「Ultra」のシリーズ2を勧められ「ヒデオのルーキーカードが欲しいなら、この箱に入っている」と売りつけられそうになったりした。これは真っ赤なウソで、カードコレクターのボクをなめてもらっちゃ困ります、と心の中で言ったものである。口に出す勇気はなかったので…。
日本人メジャーリーガーのルーキーカード、とくに初登場のカードに興味がわくようになったのは、伊良部秀輝さん(ニューヨーク・ヤンキース)のファーストカードだった。「Flair Showcase」のインサートカードは、入団会見の後にヤンキースタジアムで投球フォームのポーズを取った写真だった。上半身はピンストライプのユニホーム、下はスーツのスラックスだった。その後、入団会見のカードも作られた。大判カードもあった。夢をかなえて、少年のような笑顔を見せる伊良部さんのこのカードが好きだった。
松井秀喜さん(ニューヨーク・ヤンキース)のルーキーカードも入団会見のカードが多かった。米国に上陸した「ゴジラ」は会見後、タイムズスクエアに移動。バットを振って、カードもなった。ついでに、リトルマツイこと、松井稼頭央さん(ニューヨーク・メッツ)も負けじとタイムズスクエアでバットを振った。
それから、日本人メジャーリーガーのファーストカードは入団会見の写真が主流になった。
ただし、木田優夫さん(デトロイト・タイガース)は入団会見に羽織袴で臨んだが、この写真はカードにならなかったのは残念だった。木田さんのファーストカードはキャンプでのフォトデーで撮影したポーズをとった笑顔のカードだった。
残念といえば、イチローさん(シアトル・マリナーズ)のファーストカードはUpper Deck社の「Vintage」だったが、顔写真の切りぬきだった。さらに、TOPPS社が作ったユニホーム姿でのキャッチボールをしているらしきルーキーカードが登場するのだが、この写真がオリックス時代にマリナーズのキャンプに参加した時のものではないか、とされ、論議を呼んだのは有名な話である。イチローさんがこのカードに怒り、TOPPS社としばらくの間、絶縁していた、というトレカの都市伝説もある。まるで、現代のホーナス・ワーグナー(タバコに自分のカードが封入されたことに怒り、回収騒ぎを起こした)である。
ボクにとって何よりも、衝撃だったのが、松井稼頭央さんと岩村明憲さん(タンパベイ・デビルレイズ)のファーストカードである。米国での自主トレでの写真が使われたカードは、トレーニングウェアだが、よく見ると松井さんはメッツのロゴマーク入りの毛糸の帽子、岩村さんはデビルレイズのチームカラーであるグリーンのウェアを着ていた。まるで、入団チームを当てるクイズである。
そう考えると、やっぱり、大谷翔平投手(ロサンゼルス・エンゼルス)はすごかった。「Topps Now」ではルーキーイヤーの前年、2017年にエンゼルスタジアム前での入団発表の写真が使ったカードが作られた。ルーキーカードのロゴマークの代わりにFAのロゴがある。さらに、2018年にはルーキーカードのロゴマークが入り、自主トレの写真を使ったカードも作られた。マウンドと打席でデビューを果たす前に、入団発表&自主トレのカードが作られる「二刀流」だったのである。
Cove(ライター)
元スポーツ紙ライター。国内外のコレクションアイテムを収集して30年あまり。バブルヘッドのコレクションが自慢で日本唯一のバブルヘッドライター(自称)。トレカはレギュラカードのコンプリと日本人メジャーが中心。