いよいよ1か月後、第5回ワールドベースボールクラシック(WBC)が開幕する。各国代表メンバーが発表され、侍ジャパン日本代表は宮崎でキャンプイン、強化試合で開幕に備える。トレカファンとしては、なかなか、WBC関連のカードのリリース予定が明らかにならないことは気がかりだ。TOPPS JAPANの「Topps Now」はかなりのうれしいヒット作だった、と思うが、本大会の期間中もどんどん、作ってほしいものである。もちろん、カルビーの「侍ジャパンチップス」もお待ちしております。
さて、2006年に始まったWBCだが、過去のWBCカードでもこれは珍カードと言えるカードがある。というか、カード自体が珍カードである。「幻のトレカ」の連載で紹介しようと思ったくらいの珍カードである。
TOPPS社は2001年、オンライン上でのみ取引される特別な限定カード「eTopps」の販売を始めた。MLBに始まり、NFL、NBA、自動車レースのNASCAR、WWE、イングランドサッカー、野球のマイナーリーグなどのカードを数量限定で発売。抽選に当たれば、オンライン上の自分のアカウントに割り当てられる。そのカードが株のように、市場価格が日々、上下する。抽選に外れても、登録しているメンバー同士なら売買や交換ができた。「eBay」に出品された「eTopps」のカードを落札し、入金すれば、自分のページに落札したカードが入る。
直筆サイン入りカードもあったほか、日本の市場を意識したのか、日本人メジャーリーガーも数多く、カード化された。ボクがハマらないわけがない。まるで、「Topps Now」の元祖みたいな、登場が10年は早かったオンラインカードだった。
2009年、会社をさぼったボクは、学校をさぼった息子とドジャースタジアムでの準決勝、決勝を観戦しに行った。オフの間に先行発売された前売りチケットをネットで購入したのだが、準決勝2試合と決勝の3試合をドジャースタジアムの左中間の外野席の同じ席で観る通し券で確か、ひとり200ドルくらいだったと思う。価格はお得だったが、日本代表が準決勝に進出しなければ、そんなに興味のないチームの試合を3試合、観なければいけないかなりのギャンブルだった。
運よく、日本代表は準決勝に進み、米国代表を撃破。決勝では韓国代表と対戦し、ご存じのようにイチローの決勝打で劇的な連覇を成し遂げた。9回の大ピンチでもうサヨナラ負けを覚悟した直後の勝ち越し劇に、息子と10年ぶりくらいに抱き合って、喜んだ。
宿舎に帰って、ネットを観ていると、「eTopps」で侍ジャパンのメンバーが並んで連覇を喜んでいるカードの申し込みが始まっていた。19.99ドルだったろうか。発行枚数は限定505枚である。これはかなり、厳しい競争だが、日本代表のネバー・ギブ・アップの精神でポチッた。1週間後、帰国したボクは当選に、連覇に続き、2度目の大喜び。まあ、そんなに市場価格は上がらなかったが、大満足の1枚となった。
そんな「eTopps」だが、2011年を限りに新しいカードが発行されなくなった。上った梯子を外された気分だった。ただ、その頃には、送料を支払えば、日本にも実際のカードを発送するサービスもできた。数十枚もたまったカードを送ってもらうには、かなりの送料が必要だったので、限られたカードしか、申し込めなかった。
それでも、当時は画期的だったマグホに入ったカードは「Chrome」仕様でカッコよかった。はっきり言って、ボクとしてはかなりの損をした企画ではあったが、手元にある「eTopps」の輝きを見るたびに、ノスタルジーを感じるのである。
Cove(ライター)
元スポーツ紙ライター。国内外のコレクションアイテムを収集して30年あまり。バブルヘッドのコレクションが自慢で日本唯一のバブルヘッドライター(自称)。トレカはレギュラカードのコンプリと日本人メジャーが中心。