「第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」の準決勝が3月20日、米フロリダ州のローンデポ・パークで行われ、日本代表侍ジャパンが6‐5の逆転サヨナラでメキシコ代表を下した。村上宗隆内野手(東京ヤクルト)が9回一、二塁で左中間へサヨナラ打を放った。
先発した佐々木朗希投手(千葉ロッテ)は好投しながらも、4回にルイス・ウリアス内野手(ブルワーズ)に先制3ランを被弾。打線もメキシコ代表の先発、パトリック・サンドバル投手(エンゼルス)らの気迫あふれる投球の前に6回まで無得点に抑えられた。
5回には岡本和真内野手(巨人)が放ったホームラン性の当たりの一打は左翼のランディ・アロザレーナにジャンピングキャッチ。キューバから亡命したがメキシカン・リーグでプレーしたことがきっかけでメキシコの市民権を得たアロザレーナは左翼で再三、日本の得点を阻止する好守を見せた。
起死回生の一発が飛び出したのは7回。吉田正尚外野手(レッドソックス)が打ち上げた打球は右翼ポール際に上がり、そのまま、スタンドに飛び込んだ。ここ一番のチャンスで存在感を見せてきたポイントゲッターがチェンジアップを掬い上げ、最後は右手一本で押し込んだ。「重苦しい雰囲気はあったけど、最後は自分を信じて、強い気持ちで打席に臨んだことは覚えている」。
アレックス・ヴェルドゥーゴ外野手(レッドソックス)の適時打などで8回に山本由伸投手(オリックス)らがすぐに2点を勝ち越されたが、その裏、代打・山川穂高内野手(埼玉西武)が左犠飛を放ち、1点差に詰め寄った。
そして、9回、先頭の大谷翔平投手(エンゼルス)が右中間へ二塁打。「四球でもいいと思って、甘いコースだけ打ちに行った。必ず塁に出ると決めていたが、セカンドまで行けたのが大きかった」二塁ベース上で三塁側ベンチに向かって、大きなゼスチャーで「カモン!」と3度、絶叫してナインを鼓舞した。
吉田が四球で歩き無死一、二塁。栗山英樹監督が吉田に代わり、走塁のスペシャリストである周東佑京外野手(福岡ソフトバンク)を代走に送り出す。逆転サヨナラを狙う切り札だ。その直後、村上が初球を右中間フェンス直撃の一打を放つ。大谷に続き、周東も一気に本塁へ還り、逆転サヨナラ勝ちした。「何度も三振して 何度も悔しい思いをした。チームメートが点を取ってくれて回してくれて、最後に僕が決めたけど、チーム一丸になった勝ちだと思う。期待に応えられて良かった」とNPB史上最年少の三冠王は声を弾ませた。
「簡単に勝てないのはわかっていたけど、まさかこんな形になるとは思っていなかった。最高の形で明日を迎えられる。何回も折れかけたけど、最後まで諦めない気持ちだけでつないで、ああいう形になった。みんな素晴らしかった」と大谷も興奮気味。「なかなか突破口ができないで苦しんでいる中、勝ち負けは別として、『野球すげーな』とやっているほうが感動した。必ず最後にチャンスがあると信じて、いろんな展開になった時をイメージしていた。村上には最後にお前で勝つと言ってきた」と栗山監督は涙を浮かべた。
メキシコ代表は、MLB選手がスタメンに名前を連ね、そのトレーディングカードはMINTモールにも多く出品されているほどの強豪。サンドバルは大谷のチームメートとして日本でもおなじみだし、ヴェルドゥーゴは元ドジャースのプロスペクトで、ボクはボブルヘッドの配布日にドジャースタジアムまで行った思い出がある。今年は吉田のチームメートとして日本でも知られることになるだろう。
劇的な勝利に、TOPPS社のオンデマンドカード「Topps Now」では村上、大谷のベースカードの他に、勝利の瞬間のカードを発売。村上のカードは各種パラレルも作成、販売されたが、こちらはすぐに完売となった。
Cove(ライター)
元スポーツ紙ライター。国内外のコレクションアイテムを収集して30年あまり。バブルヘッドのコレクションが自慢で日本唯一のバブルヘッドライター(自称)。トレカはレギュラカードのコンプリと日本人メジャーが中心。