MLBで数年前からファンを楽しませている、本塁打を打ってベンチに戻った際のパフォーマンスは「ホームラン・セレブレーション」、「ダグアウト・セレブレーション」と呼ばれている。昨季はカウボーイハットを被っていたロサンゼルス・エンゼルスが新しい被り物を披露した。
エンゼルスは4月7日、エンゼルスタジアムでの本拠地開幕戦でトロント・ブルージェイズと対戦した。開幕からビジターでの試合では麦わら帽子を使っていたエンゼルスの「セレブレーション」。初回にマイク・トラウト外野手が先制2ランを放った。ベンチに戻ってきたトラウトに被せられたのは、なんと日本の兜。初体験の兜に「重くて前が見えなかったけど、クールだったね」とトラウトは笑った。
NHKの生中継では「大谷翔平投手のアイデアだそうです」とアナウンサーも興奮気味に伝えたが、それは出来過ぎな話。実際はクオリティ・コントロール・コーチのティム・バス氏を中心に球団が発案。大谷の承諾を得た上で水原一平通訳が、鹿児島にある甲冑などの販売を手がける小売店に発注し、この試合の3、4日前に米国へ向けて発送された。価格は33万円だそうだ。
こうなると、ボクだけでなく、期待するのは兜「セレブレーション」のトレーディングカードの登場である。まずは、大谷の兜カードが見たいと思ったが、まあ、トラウトならしょうがない、と思いつつ、TOPPS社のオンデマンドカード「Topps Now」の発売を待ったが、このトラウトの本塁打はカードにならなかった。
大谷のニックネームとしても定着した「SHOW TIME」にちなみ「将軍タイム」とも呼ばれるこのセレブレーション。戦国武将と将軍は若干、違うのに、と首をひねりながらも毎回、ボクは中継を楽しんで、翌日に発表されるトレカを楽しみに眠るのだが、いっこうに作られない。「MLB最強将軍」トラウトがエンゼルスタジアムでの本塁打記録を作っても、「暴れん坊将軍」レンヒーフォが兜の角を折っても、「二刀流将軍」大谷が夢のトラウタニ弾を打っても、作られないのだ。
これまでの「ホームラン・セレブレーション」で有名だったのは、サンディエゴ・パドレスの特大メダル(金色のチェーンについていてあのぐるぐる回るやつ)、ボストン・レッドソックスのランドリーカート(どう見てもどこかのスーパーマーケットで使っているショッピングカート)、トロント・ブルージェイズのジャケット(ゲレーロジュニアが来たらはち切れそうになる)などがあり、これらはカードになってきた。
では、「将軍タイム」はなぜ、「Topps Now」にならないのか。勝手に考えてみた。
1)あんまり、プレー以外のことで盛り上がるのは、野球に対する冒とくである。打たれた投手に対する侮辱である。メジャーの暗黙のルールってやつ。
2)ひとつの球団だけ「セレブレーション」を取り上げたらキリがない。ほかにカードにしなければならないことがある。
3)ピッチクロックなど試合時間の削減を目指しているMLBの方針に相反する。「セレブレーション」は時間がかかる。
4)兜は日本ならでは。WBCで日本代表侍ジャパンに決勝で敗れたことが悔しい。
確かに、ボルチモア・オリオールズが今季から始めた「セレブレーション」は、長いホースで飲み物を一気に飲み干すという、かなりエスカレートしたパフォーマンスである。その飲み物がビールである、というウワサもある。これはさすがにやり過ぎである。
ただただ、ボクらは大谷の「将軍タイム」と、そのカードが何度も見たいだけなのに…。
Cove(ライター)
元スポーツ紙ライター。国内外のコレクションアイテムを収集して30年あまり。バブルヘッドのコレクションが自慢で日本唯一のバブルヘッドライター(自称)。トレカはレギュラカードのコンプリと日本人メジャーが中心。