久しぶりの「バット・フリップ(バット投げ)」カードに興奮してしまった。中田翔外野手(巨人)が4月29日の対広島東洋カープ戦で逆転サヨナラ2ラン。劇的な一発をエポック社のオンデマンドカード「EPOCH-ONE」がカードにした1枚は、見事にバットが宙に舞っていた。
「バット・フリップ」はスタンドも沸くパフォーマンスである。だが、MLBの「暗黙のルール」では、投手を侮辱する行為とみなされ、報復を受けることもある。実際に、新庄剛志外野手(ニューヨーク・メッツ)はルーキーイヤーに「バット・フリップ」で死球を受けた。新庄の場合、パフォーマンスではなく、滑り止めの松ヤニのせいでバットが手にくっつきすぎてしまいバットを投げるしかなかった、らしい。
今年1月にはMLBの公式サイトが「史上最高のバットフリップ」を特集。ランキングで1位に輝いたのが2015年にホセ・バティスタ外野手(トロント・ブルージェイズ)がテキサス・レンジャーズとの地区シリーズ第5戦で披露した「バット・フリップ」だった。同点の7回に勝ち越し3ランを放った際に豪快に、バットを一塁側へ投げつけた。
これがレンジャーズの反感を買った。翌2016年5月、二塁を守っていたルーグネット・オドーア内野手への危険なスライディングが守備妨害になってしまったことをきっかけに、両軍の乱闘騒動に発展した。バティスタと言えば、2010、11年に突然覚醒して54、43本塁打をマークして2年連続キングに輝いた。通算344アーチのスラッガーは、千葉ロッテマリーンズが獲得へ向けて調査をしていることが明らかになったことでも話題になった。
新庄も、バティスタも、その「バット・フリップ」はトレーディングカードになっている。カードなので安心して楽しめるが、その場にいて、この後、ふたりに何かが起こるのでは、と考えると不安で落ち着いてはいられなかっただろう。最近のMLBでは「バット・フリップ」は球場配布のボブル・ヘッドになるなど、好意的に受け取られている傾向があるように思える。カードになることが増えてきたことからもわかる。
MLBと違ってあからさまな「報復」というものがない日本では昔から「バット・フリップ」は好意的に観られてきた。例えば、原辰徳内野手(巨人)の神宮球場でのヤクルト戦での伝説のバット投げや、中村紀洋内野手(大阪近鉄バファローズ)のお決まりのパフォーマンスは、明らかに意識してバットを高く「ぶん投げ」ており、カードにはぴったりの決定的瞬間となった。原のカードはバットが写っていないほどの最長不倒距離である。
ちなみに、中村紀洋のカルビーの「バット・フリップ」カードを探していたら、阿部慎之助捕手(巨人)もバットを投げていた。こちらのシーンはまったく、記憶になかったが、きっと、ほかにも多くの選手の楽しい「バット・フリップ」カードが存在するはずだ。「バット・フリップ」カードだけを収集するコレクターもいるかもしれない。
今季もドキドキしながら、日米でバットが宙を飛ぶ、その瞬間をボクは今日も待っている。
Cove(ライター)
元スポーツ紙ライター。国内外のコレクションアイテムを収集して30年あまり。バブルヘッドのコレクションが自慢で日本唯一のバブルヘッドライター(自称)。トレカはレギュラカードのコンプリと日本人メジャーが中心。