「テンバガー(Ten-bagger)」とは株式投資の世界で「株価が10倍以上になりそうな、または10倍以上になった株式銘柄」のことを指す。「一発大当たりが期待できる投資先」をこう呼ぶこともある。野球用語で「バガー(Bagger)」は「塁打」を意味し、1試合で10塁打(テンバガー)を記録するくらいの勢いで株価が急騰することが語源らしい…。
白熱した試合が続くNBAプレーオフ2023。西カンファレンスでは5月22日に第1シードのナゲッツがレイカーズをシリーズ4連勝で下して球団史上初のNBAファイナル進出を決めた。シリーズMVPにも選ばれた主力のセンター、ニコラ・ヨキッチはこの第4戦でも30得点、14リバウンド、13アシストと活躍し逆転劇を演出した。
同シリーズで3度目のトリプルダブルは同時に今ポストシーズン8度目の達成となり、同一ポストシーズンでのトリプルダブル達成数で1967年のウィルト・チェンバレンを抜いて歴代単独トップのNBA新記録となった。センターとしては史上稀に見る視野の広さとパスセンスを持ちオールラウンドな能力に秀でたヨキッチならではの大記録と言えるだろう。
ヨキッチといえば昨シーズンまで2年連続でシーズンMVPを受賞した超一流プレーヤーだ。現在最も勝利貢献度の高い選手と賞賛され、ジョエル・エンビードにMVPを譲った今シーズンもPER(Player Efficiency Rating)やWin Shares、BPM(Box Plus/Minus)などの先進的な指標ではNBAトップを叩き出していた。
シーズン終盤の失速と、3年連続MVPは…という忖度もあって多くの1位票がエンビードに流れたものと考えられるが、そうした感情を排して投票すれば今シーズンもヨキッチがMVPだった可能性が高い。
そんな押しも押されぬスター選手のヨキッチだが、ドラフト当時の評価は非常に低かった。スカウティングレポートを読み返すとバスケIQの高さや技術、視野の広さを評価されながらも「最低レベルの身体能力が弱点。NBA選手なら備えている俊敏さが無く、これは守備では致命的でNBAのスピードにはついてこれない。リムを守ることも困難でリバウンドにも難がある。足が遅い事は攻撃面でも足を引っ張ることになる」と散々な言われようで、良くてロールプレーヤーという位置づけだった。
そのため2014年ドラフトでも2巡目、全体41位の下位指名だった。ところが2015-16シーズンからナゲッツに合流すると新人ながら中心選手として躍動。オールルーキー・ファーストチームに選出され、2018-19シーズンからはオールスターの常連となり前述したとおり2020-21、2021-22シーズンは連続MVPを受賞している。
このようなキャリアのスタートを切っているだけに、2015-16シーズンのNBAカードが発売された頃のヨキッチのルーキーカードはかなりリーズナブルな値段だった。
ヨキッチの代表的なルーキーカードのひとつ「2015-16 Panini Prizm #335 Nikola Jokic Rookie Card」のPSA10は米大手オークションハウス「Goldin Auctions」で今年1月5日に372ドル(約52,000円)で落札されているが、最近ではebayで同じPSA10のカードが5月25日終了のオークションで1,095ドル(約154,000円)で落札された。また、米スポーツカード情報サイト「Sports Card Investor」によれば、同カードはこの1カ月で53.87%の値上がりを見せているという。
ビッグマーケットのチームに所属しないと真のスーパースターにはなれないとの声も一部にはあるが、ナゲッツで証明できることが残っているとすれば、それはチームを初のNBAファイナル優勝に導くことことだろう。それを達成したならば、ヨキッチの選手としての位置づけもまた一段、上に上がるだろう。そして、もし2016年頃にこのカードを購入していたなら…それはあなたの手元で10倍どころではない価値となって輝いていた事だろう。
※「Goldin Auctions」での落札額はバイヤーズプレミアム込み。
Norn(ライター)
米4大スポーツがメインのコレクター。各球団のポケットスケジュールを集めていたが近年のペーパーレス化で絶滅しかかっているのを悲しんでいる。マイナーの試合にも足を運ぶBowman愛好家。