NFL史上最高のRB(ランニングバック)のひとりであり、アメフトの枠を超え北米プロスポーツ史上最高のアスリートとも評されるジム(ジミー)・ブラウン氏が5月18日、カリフォルニア州ロサンゼルスの自宅で天国に旅立った。87歳だった。
ブラウン氏は57年にドラフト1巡目全体6位でクリーブランド・ブラウンズ入団すると、1年目から新人王とMVPを獲得。翌年にはラッシングで2番手の倍以上となる1527ヤードを走って再びMVPを受賞した。キャリア9年間を通して毎年プロボウル選出を受けて8度のラッシングリーダー、8度のオールプロと完璧な現役生活を送り29歳の若さで引退した。
セカンドキャリアとして映画俳優に転身し半世紀にわたって演技を続けた。公民権運動にも積極的にかかわりを持ち、1967年にはボクシングのムハマド・アリ氏が徴兵拒否によりライセンスをはく奪された事に対して抗議の声を挙げる「クリーブランド・サミット」を主催。昨年亡くなったNBAのビル・ラッセル氏ら多くのアフリカ系アメリカ人アスリートが参加して連帯を示した。
ブラウン氏の存在はカードコレクターの間でも伝説的で、米大手オークションハウス「Goldin Auctions」でも取引が頻繁に行われている。その落札結果は興味深い。
ルーキーカードの「1958 Topps #62」はNFLカードコレクションの歴代ベストカードを選ぶ企画では必ずトップ10に入るほどの至高の1枚。2021年10月にはSGC8.5のグレーディング評価を受けたものが46,800ドル(約650万円)で落札。最近のものでは4月27日終了のオークションにてBVG8.5が36,000ドル(約500万円)で落札された。
ルーキーカードではないが、2年目の「1959 Topps #10」も、世界に3枚しかないPSA10の評価を受けたものが2021年3月に出品され205,200ドル(約2,852万円)で落札されている。このカードが世相を反映しているのは、新型コロナが広がる前の2017年には同じPSA10のもう1枚が22,800ドル(約317万円)で売買されており、約8倍に落札額が跳ね上がったことである。
ブラウン氏は俳優としても長期間活躍してメディア出演も多かったため、直筆サインアイテムも多数、世に出ている。残念ながら「1958 Topps」にサインしたカードは、サインがSGCで9点の高い評価を得ていても、カードの状態が3点だったこともあり、5,100ドル(約71万円)で売買された。
サインアイテムでもボールやジャージー(ユニホーム)、「スポイラ」などの雑誌とは対照的に、トレカでは評価が異なる。パックから出現したサインカードと違い、プライベートサインに価格が付きにくいというのはトレカの世界では常識とはいえ、5,100ドルという結果はやはり、寂しい結果である。
それでも、選手やチームにこだわらず、広くNFLのアイテムを収集しているのであれば、ブラウンのカードはぜひ、コレクションに加えておきたいアイテムであることは間違いない。
※「Goldin Auctions」での落札額はバイヤーズプレミアム込み。
Norn(ライター)
米4大スポーツがメインのコレクター。各球団のポケットスケジュールを集めていたが近年のペーパーレス化で絶滅しかかっているのを悲しんでいる。マイナーの試合にも足を運ぶBowman愛好家。