TOPPS社が「2023 TOPPS NPB 206 ベースボールカード」の発売を発表した。
現在のトレーディングカードは、米国で1875年ごろからタバコの販売促進を目的にタバコの箱に封入された「Tabaco Card」「Cigarett Card」と呼ばれるカードがスタートだった。野球をはじめとしたスポーツや芸能人、文化の写真が使われたこのカードはコレクションアイテムとして歴史を彩ってきた。
日本でも1899年から「岩谷商会」、「村井兄弟商会」の2大タバコ会社が同社の商品にカードを封入。カード欲しさに子供がタバコに関心を持つことが社会問題になり、未成年者喫煙禁止法という法律まで作られたほどの人気を集めた。日本ではこの後、お菓子のおまけになる。
「Tabaco Card」のサイズは縦67ミリ×横36ミリが一般的で、現在のトレカの標準サイズに比べ、かなり小さい。
「206」はアメリカン・タバコ・カンパニー社が1909年から1911年にかけ販売したタバコのブランドで正式には「T206」=「Tabacco 206」がその名前である。ライバルのタバコ会社、組織を次々に買収し最大手に成長した同社が205社を吸収合併したことを記念した説や、206か所のタバコ工場で作った説などがある。
また、この「T206」には、トレカのモナ・リザと呼ばれ、かつて、トレカの最高額で取引されてきたホーナス・ワグナー遊撃手のカードが封入されていることでも知られている。ワグナーの「T206」は美術品を中心に扱うオークションで初めて1億円を超えて取引され、2021年には「ロバート・エドワード・オークション」で9億8500万円で売買された。
詳細記事:ワグナー「T206」が725万ドルで落札! スポーツトレカの最高額を更新!
TOPPS社は2002年から「Tabaco Card」サイズのカードを復刻。オリジナルブランドの「TOPPS 206」を制作した。こちらも「T206」と呼ばれる。人気ブランドの「ALLEN & GINTER」にもこのサイズのカードを封入。通販限定でも「T206」を発売してきた。ちなみに「ALLEN & GINTER」や、UPPER DECK社の「Goodwin」も当時のタバコ会社の社名という縁もある。
今回のTOPPS社の発表はトレカ業界やコレクターを驚かせた。NPBとトレカ制作・販売に関する契約を締結して、NPBの「Chrome」や「Bowman」など定番ブランドを日本に送り込んできた同社が「206」を選んだことは、日本でのさらなるトレカ文化の広がりを予感させる。
「2023 TOPPS NPB 206 ベースボールカード」には今季、NPBで活躍した12球団の主力選手だけでなく、これからのNPBをより盛り上げる若手選手、監督で構成され、ベースカードは各球団18名の216種になる。パラレルカードや枚数限定のシリアルカードもランダムに封入され、インサートカードには新デザインも採用された。
お楽しみのサインカードには大谷翔平投手(現ロサンゼルスエンゼルス)、イチロー(現シアトル・マリナーズ会長補佐兼インストラクター)、吉田正尚外野手(現ボストン・レッドソックス)、松井秀喜(元ニューヨーク・ヤンキース)、MLB日本人選手第1号の村上雅則投手(元サンフランシスコ・ジャイアンツ)を予定している、という。
36枚入りの1パック=1ボックスが購入しやすい3,080円という価格も魅力だろう。
トレカを収集する楽しさ、面白さをNPBの選手で再確認できる「206」。トレカの歴史を感じさせる「206」が日本のトレカの歴史にも名前を刻みそうだ。
Cove(ライター)
元スポーツ紙ライター。国内外のコレクションアイテムを収集して30年あまり。バブルヘッドのコレクションが自慢で日本唯一のバブルヘッドライター(自称)。トレカはレギュラカードのコンプリと日本人メジャーが中心。