卓球のパリ五輪最終選考を兼ねた天皇杯・皇后杯2024全日本選手権大会の5日目が1月26日、東京体育館で行われ、シングルス6回戦で、伊藤美誠(スターツ)が木村香純(トップおとめピンポンズ名古屋)に3-4で敗れた。退した。パリ五輪代表選考レース3番手の伊藤はこの時点で、2番手の平野美宇(木下グループ)の選考ポイントを上回ることはなくなり、平野のシングルス初代表が確実になった。
パリ五輪のシングルス代表は2枠のみ。今回の全日本選手権までの約2年間に行われた国内選考会などで獲得できるポイントで争われた。女子は早田ひな(日本生命)が選考レースで首位を独走し、この大会前までに出場を確実にした。2番手・平野と3番手・伊藤のポイント差はを34.5点差。この大会の成績次第では大逆転の可能性も残されていた。
平野は2016年リオ五輪は補欠。2021年東京五輪選考レースでは終盤まで2番手につけていたが、最後に石川佳純に逆転され、シングルス代表権を逃した。団体要員の3枠目で代表入りし、団体の銀メダル獲得に貢献した。
2022年にスタートした選考レース序盤こそ苦戦したが、22年11月の全農カップ船橋大会では早田、伊藤に勝利し、五輪選考対象の大会を初めて制した。昨年5月の全農カップ平塚大会で5位を死守し、2番手に浮上。昨年に中国の世界ランク3位以内の選手を2度、倒し計25点のボーナスポイントを手にしたことも大きかった。
平野は伊藤の敗戦後に大藤沙月(ミキハウス)に4-0で勝利し準々決勝進出を決めた。試合後には「まだ実感は完全にはわいていないがすごくうれしい。周りの方の支えがなかったらここまで来られていないと思うので、たくさんの方に恵まれている、本当に感謝している。自分の中で大きいことを達成できたと思う。もう一回諦めずにやれば叶うんだなって思った。自分を褒めてあげたい」と笑顔を見せた。
「シングルスに出場するからには必ずメダルを取りたい。団体にも出場できるので、メダル、やっぱり金メダル。中国人選手にオリンピックの舞台で勝ちたい」と瞳を輝かせた。
同じ23歳の伊藤とは2014年3月に「みうみま」ペアで世界ツアー、ドイツオープン女子複優勝を果たした。明暗を分けてしまったライバルに「どんな結果であれ素晴らしい選手というのは変わりがないと思うので。すごい尊敬する選手ですし、すごい選手というのはみんなが思っているかなという風に思います」と思いを馳せた。
この決着をうけて早田も「私にとって2人は昔から雲の上の存在で、それは今もそう。2人がいてこそ、今の私の立場がある」とあらためて、リスペクトを明らかに。シングルスの2枠については「残酷だなと思うけど、伊藤選手の分もという覚悟を持った」と話した。
その伊藤は、団体銅メダルのリオ五輪、混合複金など3個のメダルを獲得した東京大会に続く3度目の五輪を目指したが、シングルス代表権は逃した。今大会後に強化本部推薦で決まる団体要員の3枠目入りの可能性はまだ残っている。それでも「団体戦に選出されても出るかどうかはまだはっきり決まってない。これで終われないって気持ちはすごくあるけど、終わりたい気持ちもある」と涙ながらに動揺を隠せない発言も。「でも良いところで終わりたいから、もうちょっと欲張って頑張ります」と現役引退を否定し、最後は顔を上げたが、人気選手の今後が気になるところだ。
卓球の女子選手のトレーディングカードはBBMのオールスポーツカードで毎年、作られてきたが、昨年からエポック社がオンデマンドカード「EPOCH-ONE」でTリーグの熱戦をカード化。早田をはじめ、平野も、伊藤もカードになり、卓球ファンやカードコレクターを楽しませている。今回のシングルス代表枠争いで、平野と伊藤のカードが、さらに注目を集めることになった。
Cove(ライター)
元スポーツ紙ライター。国内外のコレクションアイテムを収集して30年あまり。バブルヘッドのコレクションが自慢で日本唯一のボブルヘッドライター(自称)。トレカはレギュラカードのコンプリと日本人メジャーが中心。