大相撲春場所の千秋楽が3月24日、エディオンアリーナ大阪で行われ、新入幕の前頭17枚目・尊富士(伊勢ヶ濱)が前頭6枚目・豪ノ山(武隈)を押し倒しで下し、13勝2敗とし、110年ぶりの新入幕Vを達成した。
尊富士は20222年秋場所の初土俵から所要10場所目での初優勝を果たし、優勝制度ができた1909年(明治42年)夏以降「史上最速」となる大記録も打ち立てた。
大一番に挑んだ尊富士は立ち合い、テーピングを巻いた右足首で、鋭い出足で踏み込むと、差して豪ノ山の動きを組み止め土俵際まで寄る。一度、後ろに下がったが、再度踏み込んで前へ力強く土俵の外へ押し倒した。
13日目を終え星の差「2」で優勝に王手をかけていたが、前日14日目は朝乃山(高砂)に敗れ2敗目を喫した。さらに右足を痛め、車いすで移動する事態となり、千秋楽は休場も予想される中で、出場を決断した。
今場所、尊富士は初土俵から史上最速タイ(幕下付け出し除く)の所要9場所で幕内デビュー。持ち味の鋭い出足を武器に初日から破竹の「11連勝」を飾り、新入幕力士としては1960年初場所の大鵬以来、64年ぶりの快挙を達成した。
新入幕場所での優勝は1914年(大正3年)5月場所の両国以来、110年ぶりの快挙。さらにその両国の所要11場所での初優勝、年6場所制となった1958年以降では貴花田(貴乃花)と朝青龍の所要24場所の記録を大きく塗り替え、10場所目での史上最速Vを達成した。
すでに敢闘賞と技能賞が決まっていた尊富士は「優勝した場合に」と条件がついていた殊勲賞も獲得しトリプル受賞。ひとりで三賞を独占するのは2000年九州場所の琴光喜以来、となった。
表彰式では少し右足を引きずりながら入場。土俵下の優勝インタビューでは「本当に千秋楽土俵に上がれてよかったなと安心しています。ここで負けたら皆さんが15日間大阪場所に来ていただいた意味がないなと思った。記録も大事ですけど、皆さんの記憶にひとつでも残りたくて必死でがんばりました」と話すと、会場からは大きな拍手が沸き起こった。
尊富士のトレーディングカードは昨年11月に発売された最新版のBBM「2024 大相撲カード」に新十両カードとして収録されている。まさに、ファーストカードが後々、脚光を浴びるまさに「BOWMAN」状態となった。今場所の快進撃で、この1枚は市場価格を上げ、初優勝を決めた後には5,000円を超えている。
Cove(ライター)
元スポーツ紙ライター。国内外のコレクションアイテムを収集して30年あまり。バブルヘッドのコレクションが自慢で日本唯一のバブルヘッドライター(自称)。トレカはレギュラカードのコンプリと日本人メジャーが中心。