仕事の帰り道にあるMINT池袋店にお邪魔した。トレカの最新情報をゲットすることが目的だが、実は安野弘道店長とWWE談義をすることが実に楽しい。
ABEMAでの無料放送が始まってから、本格的にWWEファンになったボクにとって、安野店長は師匠のような存在である。過去のことから、裏情報まで何でも知っている。ABEMAの解説者をやってほしいほどの知識量だ。
話は尽きなのだが、ご迷惑になると思い、野球カードを取り扱う2階へ移動した。MINT池袋店は2フロアの店舗で1階が野球以外のスポーツとノンスポーツ、2階が野球専門という構成である。
2階で見つけたのがTOPPS社の「SERIES 2」。月末にはTOPPS社の「UPDATE」が発売されることもあり、ちょっと、落ち着いた感のある「SERIES 2」だが、さすがに野球に強い池袋店にはHOBBYもJUMBOも若干、並んでいた。
JUMBOしか購入していなかったこともあり、HOBBYを買わせていただいた。自宅で開封すると、何と、ウワサのSSP(ショートプリント)が出現した。
今季、メジャーデビューした2022年のドラフトで全米1位指名されたジャクソン・ホリデイ内野手(ボルチモア・オリオールズ)のSSPは、トレカ史上で名前を残すエラーカードを再現したもの。
1989年の「FLEER」に封入されたビリー・リプケン内野手のカードだが、右肩に乗せ構えるバットのノブに「F●●K FACE」と書かれていた。
「鉄人」カル・リプケン・ジュニア内野手の実弟で、遊撃を守る兄と二遊間コンビを組んだこともある。だが、兄の足元にも及ばない成績に終わったビリーはそのカードだけで、トレカ界では有名人として知られている。
このエラーカードは6種類のバージョンがある、と言われている。教育上、好ましくないと、そのグリップエンドをぼかしたり、白や、黒で塗りつぶしたものなど、数多くの修正版も登場した。
当時は、多くを語らなかったリプケンだが、20年後、「あれは、打撃練習用のバットとして試合用と区別するために書いたものだった」とインタビューで語り、そのレア度が再注目された。さらに、その後、「FLEER社の担当者がそんなエラーを見逃すはずがない。自分が書いたより濃く写っているし、これは仕組まれたものだ」と告発したそうだ。
オリオールズで背番号7を継承した大先輩をかばうつもりがあったのか、父もオリオールズの監督も務めたリプケン一家へのリスペクトがあったのか、ホリディはそのポーズを真似して、バットのノブには「FUN FACE」と書いた。ホリディの父親マット・ホリデイもまた、スラッガーとして知られた存在だった。「FUN FACE」とは「楽しい顔」という意味で、その通り、満面の笑みでポーズを取っている。
米国大手オークションハウス「Goldin Auctions」にも出品され、305ドル(約45,000円)で落札された。ネットオークション「eBay」では600ドル前後(約75,000円)で売買されている。さすがに、直筆サイン入りのルーキーカードの市場価格には遠く及ばないものの、その希少性は、リプケンのエラーカードがコレクターに愛されたように、また、愛される1枚になった。
こんなカードもあるから、カード収集はやめられないのである。
Cove(ライター)
元スポーツ紙ライター。国内外のコレクションアイテムを収集して30年あまり。バブルヘッドのコレクションが自慢で日本唯一のバブルヘッドライター(自称)。トレカはレギュラカードのコンプリと日本人メジャーが中心。