オークション「Fanatics Collect」で3月20日、ポール・スキーンズ投手(ピッツバーグ・パイレーツ)のデビュー・パッチ・サインカードが1,110,000ドル(約1億6000万円)で落札された。
14日間の出品期間中に、64件の入札があった。残り5分で入札があった場合、締め切り時間が延長されるシステムにより800,000ドルから最後の最後に入札が相次いだ。
出品者はロサンゼルス在住の11歳の少年とその家族で、昨年のクリスマスにロス郊外のカードショップでTOPPS「Chrome Update」から、このお宝カードを引き当てた。少年は1,040,625ドルを受け取り、少年の家族は、落札額を大学進学の資金にする、という。「Fanatics Collect」は手数料などを含め、69,375ドルの収益があるが、すべて、歴史的な被害を受けた山火事の基金「LA Fire Relief Funds」に寄付することを発表している。
スキーンズは2023年のMLBドラフトで全米1巡目指名を受け、パイレーツに入団。昨年5月にメジャー初昇格を果たし、11勝3敗、防御率1.96の成績を残した。オールスターゲームでは、野茂英雄(ロサンゼルス・ドジャース)以来となる新人の先発登板も果たした。ナ・リーグの新人王にも選ばれた。
このカードが話題になったのは、パイレーツ球団がこのカードを引き当てたファンに対して、カードと交換に
・来季から30年間のバックネット裏のシーズンチケット2枚
・スキーンズとの対面
・直筆サイン入りジャージー(ユニホーム)2枚
・本拠地PNCパークでの球団OBによるソフトボールゲームに出場
・春季キャンプ施設のパイレーツシティへのプライベートツアー招待
などを手にすることができる、という「懸賞」をかけたことも、争奪戦に輪をかけた。
引き当てられたレデンプション(交換券)は、FANATICS社とTOPPS社によって、PSAに持ち込みグレーディングで「10点満点」の最高評価を受けた後に、少年の元に届けられた。
この少年とその家族は、パイレーツ球団と、スキーンズの恋人で体操選手、インフルエンサーでもあるリヴィ・ダンさんからの「懸賞」も辞退。オークションに出品し、その価値を落札額で問うことになった。
MLBとTOPPS社が提携して2年前にスタートした「デビュー・パッチ」プログラムだが、スキーンズの落札額は、取引額の最高額となった。これまでの最高額はアンソニー・ボルピー内野手(ニューヨーク・ヤンキース)の150,000ドル(約2200万円)で、ある小売業者が懸賞金をかけて、名乗り出たコレクターにカードと交換で渡された。
なお、今回のロットでは2022年の全米ドラフト1位で昨季、メジャーデビューした、ジャクソン・ホリデイ内野手(ボルチモア・オリオールズ)のデビュー・パッチ・サインカードも出品され198,000ドル(約2900万円)で落札された。これが2番目に高い取引額となった。
これまでの、251のパッチのうち200以上が公開されている。まだ、引き当てられたことが彰になっていない「行方不明」のデビュー・パッチ・カードには、ジャクソン・メリル外野手(サンディエゴ・パドレス)、エヴァン・カーター外野手(テキサス・レンジャーズ)、そして、山本由伸投手(ロサンゼルス・ドジャース)らのカードがある。
今年も「デビュー・パッチ」プログラムは実施されており、昨季後半にデビューしたジェームズ・ウッド外野手(ワシントン・ナショナルズ)ら、今季の注目ルーキー、ディラン・クルーズ外野手(ナショナルズ)らが対象になる。MLB日本開幕シリーズ、19日のカブス戦でメジャー初登板を果たした佐々木朗希投手(ドジャース)の右袖にも「デビュー・パッチ」が縫い付けられており、今後の活躍次第では、佐々木のデビュー・パッチ・オートカードは、スキーンズのカード以上の注目を集めそうだ。
昨年7月に立ちあげられた「Fanatics Collect」だが、これまでの最高落札額は昨年11月に落札された「1933 Goudey」のベーブ・ルースのカード(PSA 8.5)の1,600,000ドル(約2億4000万円)という。
Cove(ライター)
元スポーツ紙ライター。国内外のコレクションアイテムを収集して30年あまり。バブルヘッドのコレクションが自慢で日本唯一のボブルヘッドライター(自称)。トレカはレギュラカードのコンプリと日本人メジャーが中心。