全米野球記者協会は11月10日、MLBのポストシーズンに最も活躍した選手に贈る「ベーブ・ルース賞」にレイズのランディ・アロザレーナ外野手を選んだことを発表した。アロザレーナはポストシーズン20試合で打率.377、新記録の10本塁打、14打点をマーク。ワールドシリーズでレイズを破り、世界一に輝いたクレイトン・カーショウ投手、シリーズMVPのコーリー・シーガー内野手への投票数を上回る、全体の64.3パーセントの票を獲得した。
アロザレーナはキューバから亡命し16年にカージナルスに入団。今年1月にトレードでレイズに移籍した。新型コロナで陽性反応が出て、8月30日まで昇格できなかったが、メジャー2年目の今季の成績は23試合に出場し打率.281、7本塁打、11打点。ポストシーズンでは同僚の筒香嘉智外野手もかすむ大ブレークを見せた。キューバからボートに乗って命がけで亡命するなど、その波乱万丈の人生は来年の秋にも映画化される、という。
その劇的な活躍とともに、トレーディングカードの価格も高騰。トップス社の「TOPPS CHROME」まではカージナルスの背番号66ユニの写真が使われてきたが、同「BOWMAN CHROME」からはレイズでのプレーがカードになった。直筆サインカードも前記の2ブランドにくわえ「スタジアムクラブ」「ゴールドラベル」などに封入されているほか、パニーニ社の各ブランドに入った。米ネットークション「E-bay」では「TOPPS CHROME」の5枚限定「Red Wave Refractor Auto」が40万4856円で落札された。最新の「BEKETT」の「Sports Card Monthly」12月号では野球部門のホットリストで3位に「TOPPS CHROME」のサインカードが3位に入ったほか、20位までに3枚がランクインした。
ファンやコレクターが気になるのは、このアロザレーナの活躍が本物か、というところだろう。あくまで私見だが、キューバ出身選手は短く輝いて、あっという間にその輝きを失うことが多い気がする。
大統領選挙では、MLBとキューバ政府が締結した「亡命せずに米国でプレーできる」協定を撤回したドナルド・トランプ前大統領が敗れた。再び、協定が締結されるのか、はまだ、不透明だが、今季の開幕ロースターには登録された全1026選手のうち、22人がキューバ出身者だった。
確かに昨季の首位打者で今季もタイトル争いをしたティム・アンダーソン外野手(ホワイトソックス)ら安定した成績を残している選手がいるのも事実。今季のアメリカン・リーグのMVPに選出されたホセ・アブレイユ内野手(ホワイトソックス)のように復活した選手もいる。しかしながら、ヤシエル・プイグ外野手(ドジャース)のようにデビューが衝撃的すぎると、その後の尻すぼみが目立ってしまう。
昨季のアメリカン・リーグの新人王、ヨルダン・アルバレス外野手(アストロズ)はTOPPS社もPANINI社も各ブランドの顔としてボックスに写真を使われながら、右ひざの手術でほとんど出場できず、カード業界の期待を大きく裏切った。さらなる価格上昇を見込んで、アルバレスのカードを収集していたコレクターはガックリしただろう。何年か先にはまだ、アブレイユのようにカードの価値が見直される可能性はあるとはいえ、まるで、株の取引のようなものだ。
もちろん、運だけでは20試合で10本塁打は打てない。でも、それがキューバ選手の特徴でもある一瞬の輝きだったら…。コレクターとファンは来季のMLB開幕までヤキモキしそうだ。
cove【ライター】
国内外のベースボールカードやコレクションアイテムを収集し続けて30年。元スポーツ紙ライター。