2019年9月20日から11月2日までの44日間に渡り日本で開催されていた、ラグビーワールドカップ。一見すると小難しいルールが並ぶラグビーというスポーツに対し取っ付きにくい印象が強かったものの、いざ大会が始まってみると老若男女を問わず各国代表グッズを身に纏い、テレビ中継に釘付けになり、「ONE TEAM」や「ジャッカル」「笑わない男」といった言葉が流行るなど、史上空前のラグビーブームに日本中が沸き立ちました。私も勿論、その内の一人。
数多くの熱戦の中で印象的だったのは日本対アイルランドの試合。ワールドカップ開催直前の世界ランキングで1位のアイルランドは優勝候補のひとつとして見られていた強豪国。過去の対戦成績は日本の9戦全敗。そんな相手に対してどう立ち向かうのか。苦戦を強いられるのは事前に予想していましたが、実際に試合が始まってみると前半は2トライを許しただけ。日本代表は田村優選手のペナルティゴールで食らい付き3点ビハインドで折り返します。この状況を見て、これはもしかしたら…という空気がスタジアムを覆い始め、そして迎えた後半9分、福岡堅樹選手が大会初出場を果たします。
福岡選手はこの大会を最後のワールドカップと位置付け試合に臨んでいました。ただ、ワールドカップ直前に行われた南アフリカとのテストマッチで肉離れを起こし、開幕戦のロシア戦はメンバー外。グループリーグ最終戦となるスコットランド戦に照準を合わせて調整を進めていたものの、アイルランド戦に出場予定だった選手が欠場する事態となり、急遽ベンチ入り。復帰の予定を前倒しての出場は一つの賭けでした。万全の状態で走れるのか。怪我が再発しないのか。そんな不安は後半18分に消え去りました。中央から出されたボールは左サイド大外で構えていた福岡選手の手に渡ると、自慢の快足を飛ばして瞬く間にインゴールへとダイブ。見事な逆転トライを決めてみせたのです。日本代表はその後もリードを保ち、アイルランドを相手に大金星を収める事となりました。
「静岡の衝撃」として語り継がれているこの試合をキッカケに、福岡選手の人気と知名度は爆発的に上がり、BBM社から発行されてきた歴代の直筆サインカードのプライスはどれも急上昇。とりわけその上昇度合が顕著に見て取れたのが、ワールドカップ直前に発売された『2019 BBM 日本ラグビーカード BRAVE BLOSSOMS』から出現する直筆サインカード。 このシリーズには福岡選手の直筆サインカードが横版45枚、縦版30枚、スペシャル版15枚の3種90枚収録されていましたが、その中でも人気が高かったのがスペシャル版でした。
このスペシャル版直筆サインカードは、BRAVE BLOSSOMSという文字を挟み込むように異なる写真を配置したデザインの格好良さ、15枚限定というレアリティ、そしてワールドカップ期間中の空前の盛り上がりと、様々な要素が上手く重なり合った結果、10万円近い高額で販売されるケースも見受けられました。
福岡選手はワールドカップ後、東京五輪の7人制代表入りを目指す予定でした。ただ、世界中に蔓延する新型コロナウィルスの影響により東京五輪は1年延期に。そこで福岡選手は2020年6月に大きな決断を下す事となります。東京五輪での7人制代表を諦め、学生時代からの夢であった医師を目指すという決断をしたのです。それからというもの、ラグビーの練習と並行しながら週3回ほど医学部専門の予備校に通い1日6時間の勉強を続け、その努力は実を結ぶ事となりました。2021年2月20日、トップリーグの開幕戦となるリコー戦で1トライを決める活躍を見せチームの勝利に貢献したその日の夕方、自身のTwitterで順天堂大学医学部に合格した事を発表したのです。
トップアスリートでありながら医師の道を志す福岡選手にとっては、今季がトップリーグで戦うラストシーズン。現役最後の雄姿が詰め込まれた『2021 BBM ラグビートップリーグカード』の発売まで、あと僅か。ラグビーファンの皆様、どうぞ楽しみにお待ち下さい。
高橋高弥【MINT立川店 店長】
ミントチェーンの店長の中でもジャンルの幅広さとカードへの情熱は突出している。新潟出身、アイドリング!!!ファン。