東京五輪開幕まで1週間を切った。実際の五輪で活躍した選手のトレーディングカードは、肖像権などの問題もあり、実現することは難しい。しいて言えば、TOPPS社が米国の代表選手たちを集めたトレカを販売するくらいだろう。
そんな中、TOPPS社のオンデマンドカード「TOPPS Project 70」が7 月11日までの3日間で、受付を終了した1枚の「五輪カード」が注目を集めている。このカードはカードナンバー#354「1963 Ichiro Suzuki」で、前回(1964年)の東京五輪をモチーフにMLBシアトル・マリナーズで会長付特別補佐兼インストラクターを務めるイチローさんを有名デザイナーのSoleflyがデザイン。1959枚の申し込みがあった。
イチローさんが日の丸を背負って世界と戦ったのはWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)。2006、09年の2連覇に貢献した。とくに、09年のドジャースタジアムでの宿敵・韓国との決勝戦の延長10回の決勝中前適時打は忘れられない。筆者はドジャースタジアムの左翼スタンドでその瞬間を息子と目撃した。さすがに鳥肌が立った。これは野茂英雄さんのコロラドでのノーヒットノーランを実際に取材したことと並ぶ自慢話である。WBCのイチローさんのトレカは今でも高値で取引されている。
しかし、イチローさんは五輪には出場したことはない。2000年のシドニー大会からNPB選手が参加するようになって04年のアテネ大会、08年の北京大会と続いた3大会ともにメンバーに加わることはなかった。それなのに、今回は5つの輪をバックにイチローさんがあまりにもカッコよくデザインされている。
これから戦う侍ジャパンにも、稲葉篤紀監督にも失礼かもしれないが、公開競技だった1984年のロサンゼルス大会以来の金メダル獲得を信じている筆者だけにそこはお許しを。稲葉監督は北海道日本ハムファイターズの監督候補のひとりだけに、五輪後は勇退する。そうなると、次の指揮官として浮上するのがイチローさんなのだ。
残念ながら、2024年のパリ大会では野球は正式種目から外されている。2028年は五輪が再び、ロサンゼルスで開催される。野球というスポーツが絶大な人気を誇る米国だけに、野球とソフトボールが種目に戻る可能性もありそうだ。そのために、日本女子ソフトボール機構の島田利正チェアマンら多くの人々が尽力している。島田さんはファイターズで球団戦略室室長、チーム統括本部長、常務取締役を歴任。筆者も担当記者時代に、マット・ウィンタースら外国人選手の通訳だった「トシさん」にとてもお世話になった。「トシさん」、頑張ってください!とエールを送りたい。
大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)の再ブレークで、日本人メジャーリーガーの存在が再認識されている。「Project 70」でも、大谷だけでなく、松井秀喜さんも、そして今回紹介した以外でもイチローさんのカードが登場している。大谷は7月8日の対ボストン・レッドソックス戦で04年の松井さん(ニューヨーク・ヤンキース=当時)を抜き、シーズン日本人選手最多となる32号ソロ。この快挙は「TOPPS NOW」で松井さんとのコラボカードで実現した。さらに、翌9日の対シアトル・マリナーズ戦では33号でMLB通算80本目となる本塁打を達成。松井さんの175本、イチローさんの117本に続く記録となり、今季中にイチローさんに並ぶこともあるかもしれない。
イチローさんが監督として現場に帰ってくるのならば、背負う背番号はもちろん、「51」に違いない。背番号51がグラウンドに戻ってくる。その時、今回のイチローさんの「Project 70」をコレクターたちは必ず、思い出すだろう。
Cove(ライター)
トレカやバブルヘッドなど、国内外のコレクションアイテムを収集して30年以上。保護猫の姉妹を引き取り、在宅ワーク中。年1回の米国取材の復活を切に願っている。