ほんのちょっぴり、アイスホッケーにハマったことがある。レアなものなら何でも欲しがった時期がボクにもあった。「JO’s スポーツカード」で薦められるがままに、UPPER DECKのファーストイヤーのコンプリートセットを購入した。そして、もう1枚、薦められたのが、CLASSIC「1995 Draft Pick」のマノン・ロームのサインカードだった。
プレシーズンとはいえ、NHLで初めて試合に出場した女性選手。ポジションはゴーリーである。しかも、なかなかの美形。当時はまだ彼女は21歳だった。「フォッ、フォッ、フォッ、これは買っておかないと後で後悔しますよ」とJOJO広重店長にささやかれた。6300枚限定でシリアルは手書き(もちろん、メーカーの人が書いた)。微妙な限定枚数がさらに心をくすぐって、確か、1万円前後を財布から泣く泣く出した気がする。
コレクターあるある、でそのまま、ストレイジボックスにしまっていたが、2年後に今度は米国フロリダ州タンパでロームに再会することになる。
1998年2月。MLB担当記者としてフロリダ州でスプリングトレーニングを行っているチームを取材することになった。広いフロリダ州に散らばるキャンプ地をレンタカーで移動。メーンの取材対象はタンパのニューヨーク・ヤンキース、伊良部秀輝投手だった。練習はほとんど、午後の早い時間に終わってしまう。日本の本社にいるデスクとの原稿の打ち合わせは夜である。そうなると、レッツゴー!カードショップとなる。
前年までこの時期に駐在したベロビーチはフロリダ州のちょうど反対側にある田舎町だった。対して、タンパは同じ避寒地とはいえ、ストリップランキング全米ナンバーワン(公式発表)の、都会である。トレカショップもベロビーチよりは多く、1か月以上の滞在でも飽きることはなかった。
そのうちの1軒のショーケースにそれは飾られていた。そう、マノン・ノームのサインカードである。しかも、金ペンの1500枚限定版。まあ、メーカーはCLASSICでブランドは「1993 Classic Games」だったが…。久しぶりの再会で、感慨にふけっていると、けっしてきれいと言えない店の奥から初老の店主が現れた。すぐに、ロームのサインカードの話をしては、足元を見られると思い、雑談からスタートし、自分がなぜ、ここにいるのか、を話しタンパはいかに素晴らしいか、とお世辞。さらに、エドさんという店主に「漢字で書けば、江戸だね」と、エドさんが食べていたハンバーガーが入っていた袋から紙ナプキンを取り出し、ボクの直筆サインをプレゼント。その後、わざとらしく「おっ! マノン・ロームじゃないですか?」と驚いてみせた。
ロームがプレシーズンでプレーしたチームは「タンパベイ・ライトニングス」。まさに地元のヒロインだった。エドさんは微笑みながら言った。「フォッ、フォッ、フォッ、タンパに来たならこれは買っておかないと後で後悔するよ」笑い方まで、どこかで聞いたようなセリフにも負けて、今度は財布からドル札を出した。確か、200ドルを99ドルまでディスカウントしてくれて、おまけにロームのシングルカードやECHLノックスビル・チェロキーズのチームセットまでつけてくれた。
今でも「eBay」を見ると1000以上のアイテムが出品されているノーム。昨年はUPPER DECKの「Goodwin Championns」にサインカードやジャージーカードが封入された。あれから20年以上。ロームは今年で49歳になり、さらに美しくなったようだ。
またまた、コレクターあるあるだが、ボクが購入したサインカードは、もちろん、「eBay」では200ドルの価格はついていない。それでも、「JO’s スポーツカード」で、タンパのエドさんのショップで、ロームのカードに胸をときめかせた思い出はそれ以上の価値がある。
Cove(ライター)
国内外のコレクションアイテムを収集し続けて30年余り。自宅がゴミ屋敷になる寸前で断捨離をスタート。思い出のカードと再会するたびに、思い出に浸るため時間がかかってしまいなかなか進まない。