NBAの2021-22 年シーズンが開幕し、早くも3ヶ月余りが経過した。ブルズ、サンズの快進撃、若手選手の台頭、意外に苦戦しているベテランチーム等、NBAは今シーズンも話題に事欠かないようだ。
そんな中、NBAカードも2021-22年シーズンの商品がいくつかリリースされており、その中でも先陣を切って発売されたのが今回紹介する『PANINI 2021-22 NBA STICKER & CARD COLLECTION』だ。
「ステッカー?カードじゃなければ特に興味ないなあ…」という人もいるだろう。事実、私自身もそんな風に思っていたうちの1人である。
しかし、今回このブランドを開封してそのイメージが一変した。今回のコラムは堅苦しい評論形式ではなく、私が実際にNBA好きの知人と開封を楽しんだ様子をレポート形式で書いていきたい。
【元々はステッカー販売会社のPANINI】
その前に今回のブランドとPANINIというメーカーの成り立ちに関して少し説明をしておきたい。
90年代以前からのオールドファン、あるいは海外のサッカーファンにとって「PANINIと言えばステッカーの会社」というイメージが強いのではないだろうか。1960年代にイタリアのパニーニ兄弟がサッカーステッカーの販売を開始し大成功を収めて以来、ヨーロッパにおいてPANINIのステッカーを買うことはサッカーファンの子供にとっての毎年の恒例行事となった。
PANINIはステッカーを販売すると同時に、それらを貼り付けるためのアルバムも発行。「アルバムが全部埋まるとその年の選手名鑑が完成する」という合理的なシステムを確立した。
ちなみにPANINIがトレーディングカードメーカーとして本格的に認知されだしたのは、2009-10年シーズン以降のNBAカードの発行権を手に入れてからになる。
当初は「ステッカーの会社にNBAカードが作れるのか?」といった声も多かったが、アメリカで主にMLBカードを発行していた「ドンラス」社を買収し、そのカード製造機能を自社のトレーディングカード事業に組み込んだことで大規模なカードの生産にも対応可能となった。
話が随分と横道に逸れてしまったが、要はPANINIとステッカー(の販売)は切っても切れない縁で繋がっているということだ。
【やはり開封は楽しい】
開封当日、知人と地元の飲食店で待ち合わせて入店。この店はテーブル席がゆったりしていて、何より店主もNBA好きときている。NBAパックの開封にはもってこいの場所だ。
今回開封する『STICKER & CARD COLLECTION』は、1ボックスに50パックとかなり多くのパックが入っている。こういうブランドであれば1人で黙々と開封するよりも、NBA好きの知人と一緒にワイワイ開ける方が正しい楽しみ方だと言えるだろう。
1パック目の開封でまず驚いた(というのは少々大げさだが)のは、ステッカーだけだと思っていたこのブランドにカードが入っていたこと。1パックにつきステッカー5枚とノーマルサイズのカード1枚がこのブランドの基本構成。おそらくステッカーが折り曲がるのを防止するための補強材として入っているのだろうが、カードコレクターとしてはこの仕様は嬉しいところだ。
どんどんと開封していくと、ステッカーには色んな種類があることに気がつく。カードと同じように選手紹介をメインとしたレギュラーステッカー、そして個人賞やタイトルを獲得した選手はまた別の種類のステッカーがあり、カテゴリーによってはプリズム仕様のモノまである。また昨年度のNBAファイナルを特集したステッカーなどは2枚一組の仕様になっており、「なんとかしてもう1枚揃えないと」というコレクター心を刺激する。
ステッカーの種類は500種類あり、各チームのベンチ選手も網羅しているので目当てのステッカーはなかなか出てこない。それだけにスター選手や2枚一組の片方のステッカーが出てくるとワッと場が盛り上がる。またよく知らない選手が出てきた時も「これどこのチームの選手?こんな選手いたっけ?」と、それはそれで楽しいNBAの話へと繋がる。
これは近年忘れていた感覚だった。近年のNBAカードはパック数やカードの封入数が少なくなる代わりに、カードの加工や直筆サインカードを豪華にする方向で進化してきたので、開封する側も「どれだけ良いカードが引けるか」という価値観に知らず知らずのうちに囚われてきたように思う。
出てきたカードとステッカーを通してNBAが好きな気持ちを共有する。このブランドにはNBAカードを開封するうえで一番大切な楽しさが詰まっていた。
【カードにはパラレル版も存在】
しばらくするとまた知人の方から驚きの声が漏れた。今までと違うカードが出てきたというのだ。見ると銀色のルカ・ドンチッチ(マブス)のカードが知人の手元にあった。
更に開封していくと今度は私のパックからアンソニー・デイビス(レイカーズ)の299枚限定のカードが出現。水色のボーダーが美しく光るオーソドックではあるが美しいカードだ。カードの方にパラレル版が存在するとなると、俄然開封の楽しさも違ってくる。パックを開けるとまずカードでドキドキ、続いてステッカーでワクワク。「一粒で二度美味しい」とはまさにこのことである。
その後、デマー・デローザン(現ブルズ)の149枚限定カードも出るなど、ステッカーもカードも盛り沢山の内容で開封は終了。テーブル上の乱雑っぷりを見てもらうと、開封している最中、我々がどれだけ楽しかったかを感じてもらうことが出来るのではないだろうか。
ステッカーのダブりはほぼ無かったが、全500種類もあるだけに1箱でコンプリートは出来なかった。2枚一組や6枚一組になっているところは揃わなかった箇所も多く、そうなると「これだけ楽しいならコツコツと買っていってコンプリートを狙うのもアリか」という気持ちにもなってくる。
気になる収録選手に関しても、今季のトップルーキー達がステッカーとカード双方にキッチリとラインナップされているので、ルーキー狙いの人にもお勧めだ。
近年のパック・ボックス価格の高騰で開封から離れているNBAカードコレクターは、一度初心に戻ったつもりでこのブランドにチャレンジしてみて欲しい。数万円もする貴重なカードは出てこないかも知れないが、それよりももっと価値のある時間を手に入れることが出来るだろう。
soma(ライター/イラストレーター)
長年カード関連の企画・出版物に記事を寄稿しているライターであると共に自身も90年代初頭から四半世紀に渡りカード収集を続けているカードコレクター