米大手オークションハウス「Goldin Auctions」の最新回で、F1ドライバーのルイス・ハミルトンのルーキーカードが312,000ドル(約3590万円)で落札されました。昨年のTOPPS「Chrome」などがヒット商品となったこともあり、ここ1年で急激にF1トレカ人気が高まっています。それでも、今回は2006年に発売された、どちらかと言えば、メジャーではないメーカーの、レギュラーカード(サブセット)だったことを考えると、いくらハミルトンのトレカとはいえ、とんでもない高額の落札といえます。
今回、落札されたカードは「2006 FUTERA GRAND PRIX UNIQUE」に封入されたサブセット「Next」のハミルトンです。 このアイテムは480ボックスの限定生産で、当時アジアや中東などの限定されたエリアで販売されましたが、ミントをはじめとしたショップでの取り扱いもあり、相当数が日本で販売された様です。1カートンが12ボックス入り、1ボックスが12パック入りで、1ボックス10万円前後、1パックが9,000円前後。前年度版は常識的な価格のアイテムでしたが、この年は当時としては超高額アイテムにグレードアップしました。
実はこの「GRAND PRIX」ですが、公式にF1の認可を取っていないトレカで、当時はまだ「グレーゾーン」のアイテムもまあ、許された時代でした。現在はTOPPS社がF1とカード制作・販売に関するライセンス契約を結んでいますから、「グレーゾーン」のアイテムはありえません。古き良き時代でした。
昨季こそ年間王者を逃しドライバーズポイントで2位に終わったハミルトンですが、これまで7度のワールドチャンピオンに輝き「絶対王者」と評されています。そのハミルトンは06年にGP2(現在のF2)で年間優勝、07年からF1に昇格し即活躍して注目を集めました。「Next」は次に注目されるドライバーを集めたサブセットで、ハミルトンも次代有望株のひとりとして収録。初々しい表情だけでなく、GP2マシンの写真も珍しいカードです。
ただし、あくまでレギュラーカードの1枚であり1ボックスでほぼコンプリートできたため、(当時としては超高額でしたが)ボックス購入者ならこのカードを1枚は持っていて、自宅のストレージボックスに他のカードと一緒に入っているのではないでしょうか。今回の落札結果を受け、慌ててご自身のコレクションを探した方も多いと思います。
レギュラーカードでも、TOPPS社の最近のF1カードを収集しているコレクターにはお目にかかったことがないレアなカードとして、関心を集めたのかもしれません。トレカが高騰してからのGOAT(Greatest Of All Time = そのジャンルの鉄板選手)ブームの影響も大きいでしょう。
このカードは多くても500枚弱の生産数で、その大半が日本に存在していたはずですが、このアイテムは全体的にカット状態の悪い物が多く、PSA7点を取るのも大変だと思います。今回落札されたカードはPSA9点で、現時点では1枚しか存在しないとされています。ちなみに現在、入札が行われている「Goldin」のオークションには同じカードのPSA8点が出品されています。
以前、このトレカジャーナルで今後のF1トレカの動向について予想させていただきましたが、その時に昔のF1トレカも人気が出るかもしれない、と書いてその通りになりました。ただしセナやシューマッハでは無くFUTERAのハミルトンだったというのは(FUTERAという一点において)意外でした。
今回の高額落札で、FUTERA社の知名度がアップしたのは間違いない事実です。F1のトレカ含め、これまで主流では無かったメーカーやジャンルのカードも今後「Goldin」に出品されて高い落札額がつくかもしれません。
次は、より古いF1トレカや他のモータースポーツのトレカに波及するのか? これまで脚光を浴びていない他のジャンルが来るのか? ポイントはやはり「World Wide」な「GOAT」でしょう!!
田村亮一(MINT LAB TOKYO 館長)
さまざまなスポーツ、国内外のトレーディングカードに造詣が深い。広島東洋カープのファン。トレカのみならず、収集するアイテムの幅も広い。
※「Goldin Auctions」の落札額はバイヤーズプレミアム込み。