どんな世界にもいたずら好きがいる。時として、トレーディングカードの場合、そんないたずらがエラーカードとしてレアカードになることがある。
ニューヨーク・ヤンキースの指揮官として知られるビリー・マーチンは、41歳で就任したミネソタ・ツインズを皮切りにデトロイト・タイガース、テキサス・レンジャーズ、そして、ヤンキース、さらにオークランド・アスレチックス、もう一度、ヤンキースと16年間の監督生活で1253勝1013敗の成績を残した。何よりもその気性の荒さで何度も退場させられ、ヤンキースのジョージ・スタインブレナーオーナーとも対立。5回、クビになり、5回、復帰した。
そのマーチンがタイガースの監督を務めた1972年の「TOPPS」はマーチンが打撃ケージの裏でバットを手にポーズを取っている。だが、バットをもつ左手をよく見ると中指を立てて「F●●K YOU」をやっている。
「F●●K」カードとしてさらに有名なのが、ボルチモア・オリオールズのビル・リプケン二塁手の1989年の「FLEER」である。バットを右肩に乗せ構えるリプケンは、あの「鉄人」カル・リプケン遊撃手の弟。そのバットのグリップエンドに「F●●K FACE」と黒いマジックで書かれている。これは教育上、よくないと、そのグリップエンドをぼかしたり、白や、黒で塗りつぶしたものなど、数多くの修正版も登場した。当時は、多くを語らなかったリプケンだが、20年後、「あれは、打撃練習用のバットとして試合用と区別するために書いたものだった」とインタビューで語り、そのレア度が再注目された。
さて、日本人メジャーリーガーのカードにもいたずらカードがある。いたずら好きとして知られる、西岡剛内野手がいたずらをされてしまったカードである。ミネソタ・ツインズに移籍して2年目、2012年の「TOPPS」は、ベンチでチームメートと並んで微笑む西岡が。ところが、そのチームメートが西岡の頭上でピース。まるで、うさぎの耳のようにみえることから、当時、「ラビットカード」と呼ばれた。ちなみに、イメージバリエーション(写真違い)のショートプリント(SP)である。
ツインズ・西岡のカードとしては、とても、残念なものもある。ルーキーイヤーの2011年の「TOPPS CHROME」をボックスで購入したところ、見事に、サインカードのレデンプションを引き当てた。故障もあり、68試合の出場で打率.226、19打点、0本塁打。自慢の機動力も2盗塁に終わったことでカードとしてはそれほど市場価格は高くなかったが、ボクとしては「会心の一撃」だった。
さっそく、レデンプションの裏面のスクラッチを10円玉で削って、TOPPS社のHPで番号を打ち込んで、首を長くして、いつ、郵便が届くのか、楽しみにしていたが、いつまで待っても、何の音沙汰もない。そう、みなさん、お気づきになりましたね。西岡の直筆サインカードはなく、ようやく、自宅のポストに届いたオレンジ色のエアメールの中に入っていたのは…まったく知らない、知られることのなく消えていったルーキーのサインカードだった。これは、カードの神様の「いたずら」だったのかもしれない。「F●●K!」大変、失礼いたしました。
Cove(ライター)
元スポーツ紙ライター。国内外のコレクションアイテムを収集して30年あまり。バブルヘッドのコレクションが自慢で日本唯一のバブルヘッドライター(自称)。トレカはレギュラカードのコンプリと日本人メジャーが中心。