昨年まで13年間、マイナー暮らしだった33歳345日のオールドルーキーがメジャーデビューを飾った。ピッツバーグ・パイレーツのドリュー・マッジ内野手が4月26日、ホームでの対ロサンゼルス・ドジャース戦の8回、代打でMLB初出場を果たした。
アリゾナ州立大から10年ドラフト15巡目(全体447番目)でパイレーツに指名されたマッジ。同年から昨年までの13年間と今季を含め、1A、2A、3Aなどマイナーで計1154試合に出場。3846打数978安打の打率・254、46本塁打、355打点、222盗塁をマークしたが、メジャーでの出場はなし。2021年のミネソタ・ツインズ時代に初昇格したが、出場機会はなかった。
昇格が話題になったマッジが打席に入ると、本拠地のファンは大歓声。スタンドの両親も息子の雄姿を見届けた。結果は空振り三振だったが「人生でこんなにうれしい三振はない」とマッジは笑った。
「打席でどんな感じだったかは説明できない。みんなが応援してくれた。本当に特別だ。両親も来ている。本当に信じられない。みんなにありがとうと言いたい。父が泣いているのは初めて見た」チームが勝利したこともあり、ロッカールームで苦労人の興奮は収まらなかった。
「13年間は無駄じゃなかった。ボクは野球が好き。世界で最も優秀なプレーヤーと一緒にグラウンドに立って、ビッグリーグのユニホームを着た。そして僕の名前が歴史に残る」と感動の1日を締めくくった。
MLBのオールドルーキーといえば、ベストセラーから映画「オールド・ルーキー」にもなった、ジム・モリス投手(タンパベイ・デビルレイズ)がいる。ドラフト1巡目で入団したミルウォーキー・ブルワーズでは肩を痛め5年間で戦力外に。シカゴ・ホワイトソックスに拾われたが1か月で解雇された。やがて、生まれ故郷のテキサスで高校の野球部のコーチとなった35歳のモリスは、生徒たちを奮起させるために、リーグ優勝すれば、デビルレイズのトライアウトを受けると約束。野球部は優勝し、モリスもしぶしぶ受けたトライアウトで150キロを超える快速球を披露し合格。野球部の練習で打撃投手を務めたことがリハビリとなったのか、かつてのマイナーリーグ時代を超えるほど復調していたのだ。
モリスはデビルレイズに入団した1999年にビジターながら、故郷のテキサスでのメジャー初登板を含め5試合に登板。翌年は16試合にリリーフで登板した。トレカ業界もバブル時代だったこともあり、話題のサウスポーのトレーディングカードは各社から多く作られ、20年たった今でもネットオークションで出品されるほどだ。
マッジのカードは感動のデビュー戦の翌日、TOPPS社のオンデマンドカード「Topps Now」で登場した。さらに翌日、正三塁手のキブライアン・ヘイズがナイトゲーム翌日のデーゲームであることを考慮して休養したため、その代役としてマッジが「8番・三塁手」で初スタメン出場。センターへの大飛球を放ったものの3打数無安打に終わり、翌日にマイナーの2Aへ降格。2枚目のカードにはならなかった。
それでも、マッジのストーリーはまだまだ続いた。パイレーツの28日のワシントン・ナショナルズとの試合が雨によって順延され、29日がダブルヘッダーに変更。ダブルヘッダーの場合、通常の出場選手枠が1人増え、27人がベンチ入りできる。マッジは、ダブルヘッダーの2試合目に代打でメジャー初安打と初打点を記録すると、三塁手としてラインナップに残り、続く打席で左翼線へ二塁打。初安打はめでたく、「Topps Now」になった。
Cove(ライター)
元スポーツ紙ライター。国内外のコレクションアイテムを収集して30年あまり。バブルヘッドのコレクションが自慢で日本唯一のバブルヘッドライター(自称)。トレカはレギュラカードのコンプリと日本人メジャーが中心。