世界初かもしれない、野球場のウグイス嬢の引退トレーディングカードが登場した。エポック社のオンデマンドカード「EPOCH-ONE」では今季限りでZOZOマリンスタジアムでの場内アナウンスを勇退する、千葉ロッテマリーンズの球団職員、谷保恵美さんのカードの受付をスタートした。
谷保さんは1990年にマリーンズに入社。ファーム本拠地のロッテ浦和球場でのアナウンス業務を経て、94年から本格的に1軍本拠地の千葉マリンスタジアム(現ZOZOマリン)、宮城球場などのホームゲームで選手紹介などのアナウンスを始めた。2022年には公式戦通算2000試合アナウンス担当を達成した。
「サブロ~~~」「ふく~ら~(福浦)」など独特の言い回しで、人気だった谷保さんのアナウンスはマリーンズファンだけでなく、相手チームのファンにも愛された。
今年10月7日のホーム最終戦、対オリックス・バファローズ戦では同2100試合に到達し、試合後にはセレモニーも実施された。谷保さんの「エポワン」はこの時の様子をカードにしたもので、カードの表面はマリーンズナインとの集合写真、裏面には吉井理人監督から花束を贈られたシーンが採用された。
実は谷保さんのトレカは今回が初めてではない。ファーストカードは2019年7月30日の対オリックス・バファローズ戦での1軍公式戦担当1800試合を記念したものだった。2枚目は2022年のBBM「Fusion」がインサートカード「Great Record」で同2000試合を偉大な記録としてカードにした。これには50枚限定の箔サイン入りもあった。この2000試合達成は、球団オリジナルの電子トレーディングカード企画「MARINES COLLECTION」でカードにした。こちらには音声入りもあったようだ。
そもそも「ウグイス嬢」トレカも、谷保さんしかないのではないだろうか。
MLBでもそれぞれの本拠地球場に専属の場内アナウンサ―はいるが、女性の声は聞いたことがない。ファンの中から選ばれた女児は別にして…。そして、男性の場内アナウンサーはそのトレカも見たことがない。長い歴史を誇る野球場には、ロサンゼルス・ドジャースの故ビン・スカリーさんや、シカゴ・カブスの故ハリー・ケリーさんら、ラジオで実況中継をする名物アナウンサーがおり、そのカードはあるが、場内アナウンサーのカードはない。
選手はもちろん、監督、コーチ、トレーナー、マスコットまでカードになるマイナーのチームセットでも、場内アナウンサーのカードは見つからなかった。球場にいるペットの犬のカードはあったが…。
格闘技のリングアナウンサーにも有名人が多いが、場内アナウンサーとは多少、異なる。リングアナには「 Let’s get ready to rumble !(戦いの準備はいいか!)」のキャッチフレーズで知られるマイケル・バッファーさんがいる。バッファーさんのトレカは先日、LEAF社のオンラインストア限定で発売され、話題になった。このカードにはサインカードもあり、キャッチフレーズのインスクリプション入りもある。
マリーンズは10月16日のクライマックスシリーズ(CS)、ファーストシリーズで、福岡ソフトバンクホークスを劇的な逆転サヨナラで下した。本拠地最終戦ではCS進出は決まっておらず、CSでの谷保さんの場内アナウンスは「カーテンコール」と呼ばれた。「クライマックスシリーズファーストステージ、突破でございます!」というアナウンスに、球場の興奮は最高潮に達した。
1990年後半にまだ、東京ドームを本拠地にしていた日本ハムファイターズの担当記者だったボクは、ファイターズのウグイス嬢だったKさんとお話させていただく機会が多く、いろいろと貴重なお話をうかがった。その中でシーズンオフに「12球団のウグイス嬢でミーティングをやりたい」という発言を記事にしたことがある。実現はしなかったが、楽しい思い出である。
チームはオリックスとのファイナルステージを京セラドームで戦うため、谷保さんの再「カーテンコール」を聞くには、日本シリーズに進出しなければならない。
マリーンズに、プロ野球界に長い間、貢献してきた谷保さんは、最後にトレカ界にも大きな功績を残した。こうなれば、谷保さんの真のラストゲームのトレカも作ってほしい。それにはまるで、場内アナウンスが聞こえてきそうな「サブロ~~~」のインスクも入れてほしい。
Cove(ライター)
元スポーツ紙ライター。国内外のコレクションアイテムを収集して30年あまり。バブルヘッドのコレクションが自慢で日本唯一のバブルヘッドライター(自称)。トレカはレギュラカードのコンプリと日本人メジャーが中心。