米大手オークションハウス「Goldin Auctions」で2月16日、名作インサートカードのサンプルカード57枚が33,090ドル(約497万円)で落札された。
このインサートカードはDONRUSSの「Crusade」で、「DONRUSS」と「LEAF」ブランドを取り扱っていたPINNACLE社は1998年限りで倒産。最近、PANINI社がその権利を買い取り、「DONRUSS」ブランドを復活させた。「Crusade」は旧「DONRUSS」最後の名作インサートと言われている。
「CRUSADE」は日本語訳で「十字軍」、「改革運動」となり、トレーディングカード界に新たな改革をもたらす企画という意味があった、と見られる。スーパースターたちをノミネートし、当時はレアだった、奥行きのある加工で、TOPPS社の「REFRACTOR」を彷彿させる高級感あふれるデザインになっている。
全部で#1から#130までの通し番号が振られており、それぞれにグリーン(250枚限定)、パープル(100枚限定)、レッド(25枚限定)のシリアルナンバー入りのパラレルが存在した。レギュラー版の「CRUSADE」にくわえ、「Call to Arms」というインサートのインサートともいえるカードもあった。
さらに、コンプリートが難しかった理由は、4つのブランドをまたがる企画だったことで、わかりやすく言えば、BBMのクロスサインのようなものだった。1998年の「DONRUSS」「LEAF」「DONRUSS UPDATE」「LEAF ROOKIES & STARS」にそれぞれ、40種類、30種類、30種類、30種類の合計130種類が封入された。しかも、翌年には#131-#200の70種が企画されていたが、倒産により、カードは作られず、、幻の70種となった。ところが、このサンプルは倒産後、持ち出した従業員によって売買され、非公式ルートで流通してしまった、という逸話も残されている。
今回、出品・落札された57枚は#1-#130までの通常に販売された130種のうちの57枚だが、すべてがレッド版のシリアルナンバーなしというサンプルカードになっている。これらがどういう経緯で、出品されたかは明らかになっていない。
57枚のうち5枚はBGSのグレーディング鑑定されており、NFLとの二刀流選手だったディオン・サンダース外野手(レッズ)、野茂英雄と新人王を争ったチッパー・ジョーンズ内野手(ブレーブス)、MLBを代表する安打製造機トニー・グウィン外野手(パドレス)は9.5の高評価を受けている。「鉄人」カル・リプケン内野手(オリオールズ)も9、日本でも人気の高いケン・グリフィー・ジュニア外野手(マリナーズ)も8.5だった。グレーディング鑑定されていないものの中には懐かしい伊良部秀輝投手(ヤンキース)のカードもある。
たかがサンプルカードといえども、その出来栄え、トレカ史に残した足跡、57枚という枚数、そして、途中で打ち切りになった経緯も含め、ここまで価格を上げたのだろう。
どれだけの高い落札額がつくかも楽しみだが、今後もこのような幻のカードが「Goldin Auctions」に出品されるだけでも楽しいものである。
※「Goldin Auctions」での落札額はバイヤーズプレミアム込み。
Cove(ライター)
元スポーツ紙ライター。国内外のコレクションアイテムを収集して30年あまり。バブルヘッドのコレクションが自慢で日本唯一のバブルヘッドライター(自称)。トレカはレギュラカードのコンプリと日本人メジャーが中心。