「全てが世界に1枚だけ!スケッチカードの豪華な魅力」
エンタメカードを語るこの企画も3回目を迎え、エンタメカードの魅力の軸となる部分についての話はほぼさせていただいた。続いては、スポーツカードにはあまり存在しないが、エンタメカードの魅力の中心的な存在といっても過言ではないスケッチカードについて紹介していこう。
スポーツカードではあまり馴染みのないスケッチカードは、全て1of1である。詳しく説明するとそもそもスケッチカードは全てイラストレーターの自筆により描かれているものであり、印刷ではないカードであるため、当然ながら同じものが2つ存在しない、そのことをより簡単に表すために全てのスケッチカードは1of1という表記になっているのだ。
スケッチカードの歴史は私の知る限りそこまで古い物ではない、初登場の時期は不明だがおおむね1990年代後半だと認識している。スポーツカードはその頃スター選手のサインカードを封入し始め売り上げを伸ばしていった、一方エンタメカード(主にアメコミのカード)は、実際にアメコミの作画を担当しているコミックスイラストレーターのサインカードや鉛筆やボールペンで描かれたラフスケッチのカードが封入された。ラフスケッチとはいえ当時のペンシラー(アメコミの線画を担当する人)が描いたものが多く存在するので、描かれているキャラクターはもちろん生き生きとしており、今にも動き出しそうな勢いである。
それでは、筆者が当時パックから実際に引いたカードを紹介しよう。
このカードは、1998年Skybox社から発売された「MARVEL CHREATOR’S COLLECTION」に封入されていたSketchagraphというカードで、鉛筆のみのスケッチでありながら今にも叫び声が聞こえそうなハルクが描かれている。しかもこのスケッチ、単に間違えたのかわざとなのかが不明だが、なぜか上下逆に描かれているのだ。ハルクが飛び回っているところを想像すると上下など関係ないのかもしれないが(笑)。
このSketchagraphカードの封入確率は当時の資料によると1:36なので大体1BOXに1枚は封入されていたと考えられるが、実際の生産数は公表されていないので、どの程度の枚数が封入されたかなどの詳細は不明である。しかしながら、Beckett社から発行されているノンスポーツカード情報誌「Non-Sports Update」によると、スケッチされているキャラクターや作画したクリエイター次第で価格の上下はあるものの掲載されている素晴らしいスパイダーマンのスケッチカード(同時期に発売された Marvel Silver Ageのもの)には、なんと1000$の価格が設定されていることでもこのカードの希少価値がわかるだろう。
黎明期のスケッチカードは、鉛筆で描かれたものや、通常あまり画材として使われないボールペンで描かれているものも多く存在している。多忙なコミッククリエイターが商業紙面のレベルで原稿用紙より小さいカードに直接描くということにも起因してはいることもあるが、一部のスケッチカードは描かれた枚数がとても多く、あるシリーズでは同一クリエイターが1000枚以上も描いているケースもあり、1枚1枚にそれほど時間をかけられなかった事も起因しているのではないかと考えられる。それでも、キャラクターの特徴をつかみきちんとキャラクターのスケッチとして成立しているのは、クリエイターの技量の賜物ではないかと感じさせられる。
そこで紹介するのが、この1枚。日本のアニメ「科学忍者隊ガッチャマン」が海外に輸出され、トレーディングカードも制作された。その中に封入されていたボールペンで描かれたスケッチカードがこれだ。
まず注目したいポイントは、描かれた枚数。右下に数が示されているのだが、なんと717/1000。このアーティストは同シリーズのスケッチを最低1000枚は描いているのだ。驚くべき数字である。しかも717枚目でありボールペンで描かれた作品ながら一目で「白鳥のジュン」であることがわかる描き分けの凄さ、どれをとっても一級品である。クリエイター名は不明だが、この1000枚のスケッチを作成するのにどの程度時間がかかったのか、またギャラはどのくらいだったのか聞いてみたいものである。
「近年のスケッチカード」
近年発売されたエンタメカード全体の傾向としてスケッチカードの封入率が低くなっている。これには様々な要因が考えられるが、有名コミッククリエイターの起用やスケッチカードのクオリティ向上に伴い封入数が減っていることと考えられる。さらには、Upper Deck社が2012年からほぼ隔年で発売しているMARVEL PremierやCRYPTZOIC社が発売している新ブランドCZXシリーズなど高級版トレカ(1BOX 30,000円から!)の発売によってスケッチカードの高品質、高価格化が促進されていと考えられる。
また、近年はクオリティが高いだけでなく、大判サイズ(トレカサイズの2倍~4倍サイズ)のスケッチカードが確実に封入されている商品(先に挙げたMARVEL Premier等)が発売されているので、アメコミ好きのコレクターはスペシャルなスケッチカードを手に入れるチャンスなので購入することをお勧めする。
ここでは、MARVELPremier2012に封入されていたスケッチを紹介しよう。
X-MENを知っている読者諸兄はもちろん、知らない方でもこのスケッチカードのクオリティには息をのむであろう。このカード、通常のカード3枚分の横幅に描かれたダイナミックな作品である。
X-MENといえば、主人公格のサイクロップス、ウルヴァリン、そしてヴィランのマグニートーが堂々と描かれている。また、裏面にはマグニートー VS ウルヴァリンが戦っている姿が今にも動きそうな躍動感で描かれているのである。この様な素晴らしいスケッチカードを入手できるチャンスがあるのも高級版トレカの醍醐味であると言えよう。
続いて紹介するのは、「Star Wars GALACTIC FILES 2012」に封入されていたこの1枚。
素晴らしい出来栄えのハン・ソロが描かれているスケッチカードなのだが、実はこのカード1枚では不完全なスケッチなのである。その秘密は手に入れた当時の筆者を愕然とさせ、ある意味で絶望させたと言っても過言ではない。秘密はカードの裏面に書かれていたのである。
イラストレーターのサインの下に「PUZZLE 2 of 2」という謎のメッセージがある。これはこのスケッチカードが2枚組の2枚目の絵であるということを表しており、右か左につながるスケッチカードが存在するという意味である。是非ともこのスケッチカードの「PUZZLE 1 of 2」を見つけてつながった完成形の絵を見てみたいと思っているのだが、現時点でもこのスケッチの相棒は見つかっていない。もし、このスケッチカードの相棒を見つけた場合には筆者に連絡してほしい。
このようにスケッチカードはある程度イラストレーターに描く内容について任されている部分があるため、このスケッチカードの様に遊びのある内容に仕上げられていることもある。実にコレクター泣かせの内容になっているのであるが、前向きに捉えるとこの1枚のスケッチカードに出会うことによって描いたイラストレーターのホームページ、Twitter、InstagramやFacebookを訪れることで、そのイラストレーターが描いた他の作品を知ることができるため、さらに素晴らしい作品に出会える可能性も秘めているのである。
さて、今回は、エンタメカードの特色であるスケッチカードについて紹介してみたが、いかがだっただろうか。
次回は、歴史トレカの集大成!Topps American Pieについて、紹介したいと思う。
Hatsune【ライター】
25年以上の収集歴を持つエンタメカード蒐集家。YOUTUBEにてエンタメカードやマジックザギャザリングの開封動画を中心とした「おぢちゃんねる」をプロデュース中。
「おぢちゃんねる」
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