「TOPPS 2020 Project」の人気が高まっている。これは、TOPPS社が過去に発行した有名選手のルーキーカード(RC)を著名な現代画家、ストリートのアーチストらがリデザインし、同社のHPで週に2枚ずつ、48時間限定で販売。20人のデザイナーがテッド・ウィリアムス、ウィリー・メイズ、ジャッキー・ロビンソンからマーク・マグワイア、ケン・グリフィー・ジュニア、マリアノ・リベラら有名選手のカードがリデザインされ、現在までに80種類を超えた。記念すべき1号はイチローの2001年のRCをセレブ御用達の宝飾デザイナー(ジュエラー)でもあるベン・ベイラー氏がリデザインしたものだった。
このイチローの最初のカードは発売価格19.99ドルだったが、米国の大手ネットオークション「eBay」では300ドルを超える価格で落札されている。一番の人気はマイク・トラウト(エンゼルス)の2011年の「Update」をアムジイ(Ermsy)氏がリデザインしたもので「eBay」では500ドルを超える勢いだ。アムジイ氏はストリート系のデザイナーとして知られ、飛行機雲のようなモクモクとしたタッチが特徴的で、トラウトのカードにも「モクモク」としている。これまで販売されたカードは、「ヘビメタ」調や、絵本のようなイラスト、日本で言われる「ラクガオ」のようにデザイナーごとのタッチに合わせ多種多様だ。
新型コロナウィルスの影響で、MLBの開幕が遅れ、カードを製造する工場もストップした。すでに制作されていたブランドは何とか発売されたが、4月以降はすでに発表されていた発売予定日もすべて延期、しかも、発売日は未定になってしまった。トレーディングカード業界もコロナショックが直撃した感じだが、問題は「今後」だろう。日本のトレカにも言えることだが、「シリーズ2」「アップデート」などに使う写真がない。さすがに、キャンプや途中までは開催されたオープン戦の写真を使うわけにもいかず、レデプション用のサインも間に合わない。
米国カード情報誌「Beckett」の野球版では最新号の6月号で表紙にデレク・ジーターのイラストを使い、巻頭は「Artist Spotlight」と題したイラスト特集のページだった。これまでの流れを見る限り、イラストのカードも増え、人気を集めていく可能性は高い。
過去にもTOPPS社は「Inception」「Gypsy Queen」「Gallery」「Fire」などリアルなイラストのカードを発行してきた。「Transcendent」にはインサートも封入。PANINI社にも「Diamond Kings」があった。TOPPS「シリーズ2」がすべてイラストになることはないだろうが、今後は、これらのイラストカードの価値が見直され、さらに新しいバージョンが発売されるかもしれない。過去のMLBカードにもごくわずかながらあったが、TOPPS社の「Star Wars」シリーズに封入されているような1 of 1のスケッチカードも増えてくるのではないか?
日本でも古くはメンコに始まり、2003年にはプロ野球選手会が「プレーヤーズコレクション」というピンバッチとセットにした絵画調のイラストカードを作った。当時、裁判になるほど、もめた肖像権の問題に対抗する苦肉の策だったが、17年も経ち、イラストカードに脚光が浴びるとは思っていなかっただろう。日本のトレーディングカードにもイラストカードが再登場するのか、注目される。
cove【ライター】
国内外のベースボールカードやコレクションアイテムを収集し続けて30年。元スポーツ紙ライター。