米国の各メディアは5月21日、MLBエンゼルスのマイク・トラウト外野手のトレーディングカードが92万5000ドル(約1億円)で売却された、と報じた。このカードは2009年のTOPPS社「ボウマン」シリーズの「ドラフト&プロスぺクツ」に封入されていた「クローム」。そのパラレルで直筆サイン入りの5枚限定「レッドリフラクター」だ。大手オークションで、75万ドルで落札され、諸経費を含めた取引額の合計が92万2500ドルになった。
このニュースのすごいところは、トレカに関するメディアだけでなく、大手スポーツメディアや一般メディアで報道されたこと。各メディアとも「現役MLB選手のトレカでは史上最高の取引額」と報じた。2018年5月にこのカードの「スーパーフラクター」が40万ドルで売却されていた。世界に1枚しか存在しないこの「スーフラ」だが、今回は5枚限定ながら、その額をはるかに上回った。グレーディングで10点満点の評価を得ていたこともその落札額に大きな影響を与えた。
出品者は自身のインスタグラムで1年前に18万ドル(約2000万円)で購入したことを公表。トレカ1枚を1年間、「寝かした」だけで57万ドル(約7000万円)の利益を得たことになる。
トラウトは09年にミルビル高からドラフト1巡目(全体25位)でエンゼルスに入団。11年に19歳でメジャーデビューし、昨季も含め3度のMVPに選出された。その存在は入団時から注目はされていたが、どちらかといえば、そのルーキーカードをはじめ、トレカの価値、価格が跳ね上がったのはデビュー以降。現在ではトレカの世界でもスーパースター的な存在である。
トレカの取引相場が上がるには2つのパターンがある。ひとつはデビュー前から注目される「話題先行型」。実例を挙げると、発売されたばかりの2020「ボウマン」のハスソン・ドミンゲス外野手(ヤンキース)、日本なら佐々木朗希投手(千葉ロッテ)がそれにあたる。もうひとつがトラウトや、日本なら鈴木誠也外野手(広島東洋)のように活躍して脚光を浴び、一気に初期のトレカの価値を見直される「再評価型」だ。
それにしても、今回の1億円は高すぎる。その背景には新型コロナの影響もあるようで「Stay Home」で、自宅でマイコレクションを整理したり、ネットオークションも含め通販でトレカを購入するコレクターが急増。トレカの取引の全体の相場が急騰している。ストレイジボックスの中から購入時はその存在にも気が付かず、保管していたことさえ忘れてしまったカードを発見することも多い。
NPBは6月19日の開幕が迫り、MLBも開幕へ向け、機構と選手会の折衝が続いている。グラウンドに球音が戻れば、トレカの人気もさらに高まる。それまでに、まだ、時間はある。それまでに、もう一度、自身のコレクションをチェックすることをオススメしたい。
cove【ライター】
国内外のベースボールカードやコレクションアイテムを収集し続けて30年。元スポーツ紙ライター。